２度目の人生は好きにやらせていただきます

始まるわね〜ラグノア公爵令嬢シャルロット視点〜

　カール様にエスコートしていただき、会場に入りました。

　私はラグノア公爵家の娘ですから、呼ばれるのは後半になります。

　このあと、来賓の国外の王族や高位貴族の方々が入場されます。

「始まりますのね」

　このパーティーは、ジークハルト殿下とアリスティア様の婚約を披露するためのパーティーです。

　それをセオドア王国にだけはアリスティア様のお兄様の結婚披露だと知らせたのは、罠にかけるため、です。

　アリスティア様のお母様、イングリス公爵夫人は、

「あの国の人間は揃いも揃って愚かだから、絶対にやらかすわ」

とおっしゃいました。

　確かに、セオドア王国の王太子殿下はアリスティア様という婚約者がいながら、ヒロインのユリア様に傾倒したそうです。

　それで婚約を白紙撤回してローゼンタール王国に来られたとお聞きしました。

　婚約者がいる王太子という立場でありながらの浮気。

　それが許されるのは、物語の中だけなのに。

　もしかしてユリアも、転生者なのかしら？
　コストナー男爵家のエリサ・コストナー様は間違いなく転生者だと思いますが、ヒロインが二人とも転生者？

　それとも身分というものを全く理解していない、愚か者？

　まぁ、どちらでも良いですわ。
イングリス公爵家も、王家も、ラグノア公爵家も、ブラシール侯爵家も、全員がアリスティア様をお守りしますわ。

　彼女たちが転生者であろうとなかろうと、この世界は彼女たちの思うラノベの世界じゃありませんもの。

　公爵令嬢で、ローゼンタール王国の王姪であるアリスティア様に害を成そうとするのなら、排除されるのは当然のこと。

　セオドア王国の王妃様も、どんな教育をされたのかしら。

　確かにラノベの中のアリスティア様も私も、ヒロインをいじめていました。

　少々、行き過ぎているところもあったと思います。

　ですが婚約者がいながら、他のご令嬢に心を許すことが正しいと？

　しかも王太子殿下です。
その人の隣に立つ人間は、王太子妃としての資質を持っていなければならないのです。

　それなのに。

　ヒロインがここをラノベだと思い込んで、王太子殿下を攻略しようとするのは、仕方ないことなのかもしれません。

　そして、ヒロインに惹かれることも、ある程度は強制力なのかもしれません。

　でも、ジークハルト殿下は、コストナー様には見向きもしませんでしたわ。

　まぁあの方は、初恋をずいぶんと拗らせていらっしゃいましたし。

「僕の愛しいシャルロットの誕生日パーティーを台無しにしたあの害虫は、必ず駆除するからね」

　甘い笑顔でそうおっしゃる婚約者様に、私も微笑み返しました。

「カール様を信じておりますわ。私の大切な友人であるアリスティア様もお守りくださいね」

　エリサ様。ユリア様。セオドア王国王太子様。

　ここはヒロインやヒーローが、害虫呼ばわりされる世界ですのよ。