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アドバイス

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「え?ジークハルト様と、二人で・・・ですか?」

 お兄様からジークハルト様と二人で、ローゼンタール王国の東にある街、アルディスにお買い物に行って来て欲しいと頼まれました。

 アルディスには有名な織物工房があり、お兄様はそこの織物でキャスリーン様の婚礼衣装を作りたいのだとか。

 もちろん、大切なお兄様とキャスリーン様のためなら喜んでお手伝いいたしますけど、呼び寄せるのでは駄目なのでしょうか?

「キャスリーンには内緒で準備したいんだ。それに、そこの工房主はとにかく忙しいらしくてね。僕が出向けばいいんだろうけど、アリスティアのほうがセンスが良いからお願いしたいんだ」

「それは・・・もちろんわたくしはかまいませんけど、どうしてジークハルト様と?ジークハルト様は王太子殿下。公務もお忙しいのにご迷惑になりますわ」

「あー、それがジークハルトも、その工房の様子を直に見てみたいと言ってて。それなら、ジークハルトが一緒なら護衛の件も含めて安心だと思ってね」

 ジークハルト様のご都合がつくのなら、わたくしはご一緒することに何の文句もありませんわ。

 お兄様は、納得した様子のわたくしに、少し考えた様子の後、口を開かれました。

「アリスティア。自分の気持ちにもっと素直になっていいんだよ?」

「え?」

「欲しいものは欲しい。したいことはしたい。嫌なものは嫌だと言っていいんだ。アリスティアはずっと我慢ばかりしてきたから、いきなり好きにしろと言われても難しいかもしれないけど、僕もキャスリーンも、父上も母上も、それからジークハルトや伯父上伯母上たちもみんな、アリスティアが自分の望むままに生きてくれることを願ってるよ」

 お兄様の優しいお言葉に、わたくしはそっとお兄様に抱きつきました。

 兄妹とはいえ、王太子殿下の婚約者が、と言われていたので、こんなふうにお兄様に甘えたことはほとんどありませんでした。

 王太子殿下の婚約者として相応しい行動を。見本となる言動を。

 ずっとそう言われ続けて。

 婚約を解消してからは、お父様やお母様、お兄様に甘やかされて来ましたが、自分から甘えることはあまりしたことがありません。

「ありがとうございます、お兄様。大好きですわ」

「僕もアリスティアのことが大好きだよ。そんなふうにね、自分の気持ちを口にして良いんだ。ジークハルトに対しても、ね」

「お兄様」

「ジークハルトは王命での婚約のことで、一歩が踏み出せなくなってる。確かにあれは失策だったと僕も思うけど、アイツはね、本当にアリスティアのことが好きなんだよ」
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