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兄としては許せないが男としては同情する〜ライアン視点〜

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「申し訳ありませんでした」

 父上と僕の前で、深々と頭を下げるジークハルトに、父上と顔を見合わせた。

 可愛い妹、アリスティアと王命を出して婚約したものの、速攻で王命の撤回をする羽目になったのだとか。

 僕も父上も、ジークハルトがアリスティアに幼い頃から片想いしていることを知っている。

 だから、気持ちはわからないでもない。

 アリスティアは公爵令嬢で、ローゼンタール王国国王の姪だ。

 身分だけでも十分なのに、本人が妖精のように美しく、しかも聡明。

 セオドア王国の王子の目が腐っていたおかげで、生まれた時からの婚約は白紙撤回され、アリスティアは自由の身になった。

 だから、新たな婚約者ができる前に婚約したかった。

 その気持ちはわからないでもない。

 だが、せめて一ヶ月なりアリスティアが返答する時間を置くべきだった。

 伯母上と母上が相当にお怒りだったらしい。

 伯父上とお祖父様はジークハルトの気持ちを知っているから、王命を出したらしいが、それがまた伯母上の怒りを買ってしまった。

 王命での婚約は撤回され、ジークハルトは現在アリスティアの近くに寄らないようにしているらしい。

 そこまでしなくても、多分アリスティアは気にしていないと思うが。

 何かアリスティアのためになることがしたいらしく、今回は僕たちを迎えに来たという。

 馬で三週間近くの強行軍だ。
確かに迎えに来てくれたのはありがたい。

「ジークハルトくん、顔を上げなさい。妻は少々キツいことを言ったかもしれないが、それもアリスティアが幼い頃から王命での婚約で自由がなかったことを悲しんでのことだ。別にジークハルトくんと婚約することが不満なわけではない。ただ、私もだが・・・今度はアリスティアが好いた相手と婚約させてやりたい。その親心は分かって欲しい」

「はい」

 父上は、真摯に謝罪するジークハルトに、キツい言葉をかけるでもなく、背中を叩いていた。

 キャスリーンの兄上たちが一番先に王宮へと転移して行った。

 次に父上と侯爵が転移し、最後に僕とジークハルトだけになる。

 転移には魔力を相当使うから、ジークハルトの顔は青白くなっていた。

「ジークハルト。僕は別に馬で良いし、何なら明日か明後日でも良い。少し休め」

「・・・なぁ、ライアン。ライアンはあの侯爵令嬢と結婚するんだよな」

「え?あ、ああ。キャスリーン嬢のことか。そうだな、そのつもりだよ」

 青白い顔のまま、僕の隣に立ったジークハルトは、少し躊躇した後僕の手を取った。

「ライアン。後で大事な話がある」

「あ、ああ」

 妙に思い詰めた様子なのが気になったが、ジークハルトは転移後に結局倒れてしまい、僕はその話とやらをまだ聞けていない。

 アイツ、変に思い詰めてなければ良いが。
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