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小さな変化

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「あら?そうなのですね」

 リリアナの話した内容を噛み締めるように、ルーナは頷いた。

 魔法学の課題は、フィオレンサ公爵家で再開され、まもなく予定の課題は終了するという日、ルーナはリリアナから聞かされたのだ。

 王妃ヘスティアが、フィオレンサ公爵家に通うライアンに、ルーナとの婚約を進めようと盛り上がったこと。

 そしてそれに気づいたライアンが、ハッキリと、もしルーナとの婚約をルーナの意思を無視して進めたなら、自分は王籍から抜けると発言したそうだ。

 王妃ヘスティアはライアンのことを溺愛しているようで、まさか可愛い息子からそんなことを言われるとは思わなかったらしく、ショックのあまり寝込んでいるらしい。

 無理はないとルーナは心の中で苦笑する。

 女親は息子を溺愛するらしいというのを、前世の月子の時に痛感した。

 ブラック企業の社長の奥様も、チャランポランで、全く仕事も出来ない息子を超溺愛してて、もう嫌っていうほど見せつけられた。

 全くもって興味のカケラもないのに、むしろ息子の失敗の後始末とかで迷惑被ってるのに、色目使ってるとか何とか言われて、目の敵にされてた。

 その息子ラブな奥様が、息子が新入社員の女の子と駆け落ちしたことで倒れたのを覚えている。

 ま、月子的にはざまあーだったけど。

 あの新入社員も、親が風俗経営してて中々の強者だったのよね。

 高校時代の後輩だったから、見た目通りの可愛い娘じゃないことを月子は知っていた。

 まぁ、それはともかく。
息子ラブな母親としては、息子が王位に就いたときにベストな嫁を選ぼうとしたら、息子に反抗されたわけで、そりゃショックよね、と妙に納得してしまう。

「お兄様は、ルーナ様を敵に回す怖さをご理解されたのですわ」

「いや、人を魔王みたいに言わないでください」

「魔王なんか瞬殺でしょう?ルーナ様なら」

「・・・」

 魔王に会ったことはない。というか、魔王という存在は漫画の中には出てこなかったから、居るのかもわからない。

 それに瞬殺出来るとは言い切れない。
もし魔王がいるのなら、相当強いはずだし。

「冗談はともかく、お兄様はリゾーラ様の魅了からは完全に抜け出せたようです。最近はアナ様の優秀さに興味を持たれているみたいですわ」

「そう・・・ですか」

 攻略対象であるライアンが、ヒロインのアナに惹かれるのは当然だ。

 しかもアナは聖女。
身分こそ平民あがりの男爵令嬢だが、王太子妃に相応しい存在だ。

 アナがライアンのことを好ましく思うのなら、応援したいところだが。

 自分の立ち位置をよく理解しているアナが、王太子妃という立場を望むとは思えない。

 ここは、ライアンが頑張ってアタックするしかないと思うルーナであった。


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