67 / 120
やっぱり来ると思ったわ
しおりを挟む
「ちょっと!私のライアン様に馴れ馴れしくしないで!」
それぞれ黙々と担当作業を行っていると、甲高い声が響いた。
ルーナはチラリとそれに視線を向けた後、そこにいたのが予想通りの人物だったことにため息を吐いた。
「なんていうか、予想通りすぎてつまんないわ」
「・・・ルーナ様、それは言っちゃ駄目なやつですわ」
そう言うリリアナも、なんとも呆れたような目で、そちらを見ていた。
魔力を込める作業途中で、制御をミスり火傷を負ったライアンを癒していたアナは、今にも自分につかみかかって来そうなシシリーに首を傾げる。
「私は怪我を癒しているだけです」
「はぁ?どうしてライアン様が怪我するのよ?大体、こんなとこで一体なにを・・・」
「シシリー!急に走って行くなよ。っと、ライアン殿下?」
淡々とした様子のアナに、食ってかかるシシリー。
その後方から、一人の令息が駆け寄って来た。
赤茶色の髪をした令息の登場に、ルーナの隣にいたカイルの表情が強張った。
令息は周囲を見渡すと、カイルに気付く。
「ん?なんだ、伯爵になり損ねた平民じゃないか。ここは貴族が通う学園だぞ。平民が何をしてるのさ」
馬鹿にしたような様子でカイルに話しかけて来た。
その時点で、ルーナはこの相手を排除する決意を固める。
ルーナにとって大切なのはカイルだ。
そのカイルを傷つける存在など、ルーナにとって存在することすら許せない。
この馬鹿は、カサブランカ伯爵家に養子に入った愛人の息子だった。
ルーナにとって、飛んで火に入る夏の虫、というやつである。
「ライアン殿下。そこの馬鹿がどこの誰かご存知ですか?」
「・・・カサブランカ伯爵家の令息だ」
「ちょ、ちょっと待て!お前、今俺のことを馬鹿と言ったか?」
いや、馬鹿だろう。
そこにいたシシリーと当人以外の全員が心の中でそう思った。
たかが伯爵家の令息が、筆頭公爵家のご令嬢に「お前」呼ばわり。
大体、学園に入学して大分たつのに高位貴族の顔を覚えていないのはいかがなものかと思う。
「カサブランカ伯爵家令息、ヘリオ。ご令嬢をお前などと呼ぶなどマナー教育が足りないようだな。先生に知らせておこう」
「ちょっ、ライアン様?どうしてヘリオを叱るの?あの人がヘリオを馬鹿って言ったのに。悪いのはあっちじゃない」
確かに馬鹿呼ばわりするのは、令嬢として正しくはない。
だが、ここ数日一緒にいることで、ライアンはルーナがカイルに好意を寄せていることに気付いていた。
そのカイルを平民呼ばわりである。
ルーナの中では完全に敵認定されていることだろう。
それぞれ黙々と担当作業を行っていると、甲高い声が響いた。
ルーナはチラリとそれに視線を向けた後、そこにいたのが予想通りの人物だったことにため息を吐いた。
「なんていうか、予想通りすぎてつまんないわ」
「・・・ルーナ様、それは言っちゃ駄目なやつですわ」
そう言うリリアナも、なんとも呆れたような目で、そちらを見ていた。
魔力を込める作業途中で、制御をミスり火傷を負ったライアンを癒していたアナは、今にも自分につかみかかって来そうなシシリーに首を傾げる。
「私は怪我を癒しているだけです」
「はぁ?どうしてライアン様が怪我するのよ?大体、こんなとこで一体なにを・・・」
「シシリー!急に走って行くなよ。っと、ライアン殿下?」
淡々とした様子のアナに、食ってかかるシシリー。
その後方から、一人の令息が駆け寄って来た。
赤茶色の髪をした令息の登場に、ルーナの隣にいたカイルの表情が強張った。
令息は周囲を見渡すと、カイルに気付く。
「ん?なんだ、伯爵になり損ねた平民じゃないか。ここは貴族が通う学園だぞ。平民が何をしてるのさ」
馬鹿にしたような様子でカイルに話しかけて来た。
その時点で、ルーナはこの相手を排除する決意を固める。
ルーナにとって大切なのはカイルだ。
そのカイルを傷つける存在など、ルーナにとって存在することすら許せない。
この馬鹿は、カサブランカ伯爵家に養子に入った愛人の息子だった。
ルーナにとって、飛んで火に入る夏の虫、というやつである。
「ライアン殿下。そこの馬鹿がどこの誰かご存知ですか?」
「・・・カサブランカ伯爵家の令息だ」
「ちょ、ちょっと待て!お前、今俺のことを馬鹿と言ったか?」
いや、馬鹿だろう。
そこにいたシシリーと当人以外の全員が心の中でそう思った。
たかが伯爵家の令息が、筆頭公爵家のご令嬢に「お前」呼ばわり。
大体、学園に入学して大分たつのに高位貴族の顔を覚えていないのはいかがなものかと思う。
「カサブランカ伯爵家令息、ヘリオ。ご令嬢をお前などと呼ぶなどマナー教育が足りないようだな。先生に知らせておこう」
「ちょっ、ライアン様?どうしてヘリオを叱るの?あの人がヘリオを馬鹿って言ったのに。悪いのはあっちじゃない」
確かに馬鹿呼ばわりするのは、令嬢として正しくはない。
だが、ここ数日一緒にいることで、ライアンはルーナがカイルに好意を寄せていることに気付いていた。
そのカイルを平民呼ばわりである。
ルーナの中では完全に敵認定されていることだろう。
62
お気に入りに追加
623
あなたにおすすめの小説
ゲームの序盤に殺されるモブに転生してしまった
白雲八鈴
恋愛
「お前の様な奴が俺に近づくな!身の程を知れ!」
な····なんて、推しが尊いのでしょう。ぐふっ。わが人生に悔いなし!
ここは乙女ゲームの世界。学園の七不思議を興味をもった主人公が7人の男子生徒と共に学園の七不思議を調べていたところに学園内で次々と事件が起こっていくのです。
ある女生徒が何者かに襲われることで、本格的に話が始まるゲーム【ラビリンスは人の夢を喰らう】の世界なのです。
その事件の開始の合図かのように襲われる一番目の犠牲者というのが、なんとこの私なのです。
内容的にはホラーゲームなのですが、それよりも私の推しがいる世界で推しを陰ながら愛でることを堪能したいと思います!
*ホラーゲームとありますが、全くホラー要素はありません。
*モブ主人のよくあるお話です。さらりと読んでいただけたらと思っております。
*作者の目は節穴のため、誤字脱字は存在します。
*小説家になろう様にも投稿しております。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい
tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。
本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。
人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆
本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編
第三章のイライアス編には、
『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』
のキャラクター、リュシアンも出てきます☆
長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?
氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!
気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、
「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。
しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。
なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。
そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります!
✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる