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アッチもコッチも

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「なんかいい感じじゃないの」

 ルーナはポツリと呟いた。
隣にいたカイルには聞こえなかったようで、首を傾げられる。

「お嬢様、何かおっしゃられましたか?」

「ううん、ひとり言。それよりカイル。いい加減お嬢様はやめて」

「ですが、ルーナお嬢様はお仕えしているフィオレンサ公爵家のお嬢様ですから」

「学園にいる間だけでもいいわ」

 ルーナとしては本当は、もっと普通に話して欲しい。
でも、馴れ馴れしく話していてカイルが叱られたりしたら困る。

 特にルーナの侍女のユリシーナなどはルーナ至上主義なので、現在も少し離れた位置から「ルーナお嬢様のお言葉に反論するなんて!」という圧が発せられている。

「わ、わかりました。ルーナ様。それで、先ほどは何と?」

「いい感じじゃないかと思って」

 ルーナの視線が、ライアンとアナに向けられる。

 二人は少し離れた場所で、魔石にライアンの火魔法を込める練習をしていた。

 火魔法は扱いが難しい。
大きな魔法を込めると、使う平民が怪我をしたり火事を起こしたりする。

 だから、家事に最適な魔法を長く使えるように、試行錯誤しているのだ。

 最初はライアンの立場に気後れして、発言を控えていたアナだが、ライアン自身があれこれとアナに質問するものだから、今では自分から提案しているようだ。

「ああ、アナ嬢と殿下のことでしたか。俺はまたランスロット様とリリアナ殿下のことかと」

「そうね、アッチもいい感じよね」

 ランスロットとリリアナは、魔石を融合させる作業中だ。

 ルーナが、闇魔法を込めた札を作り、それを使って二人に融合作業をさせている。

 ルーナは、魔法札を二種類の魔力を込めないと発動しないように調整していた。

 融合後の魔石は、いずれ平民が買えるように販売していく予定だが、魔法札を売るつもりはないからだ。

 札に魔法を込める技術も、国に特許申請してある。

 ルーナは、月子だった時に技術の盗用などがあったことをニュースで知っていたので、自分以外の人間ができる可能性があることに関しては用心をしていた。

 強い魔法を込めた札を弱い魔力で発動させ、人に害を及ぼすことが可能だからだ。

 なら、魔法札など使わずルーナが闇魔法を使えばいいと言われそうだが、それだと課題の提出時に闇魔法の使用を知られてしまう。

 だからこそ、フィオレンサ公爵家の商会で扱っている魔法札を使って融合しているという逃げ道が必要なのだ。

 その札も、使用分ずつしか渡していない。

 リリアナのことは信用しているが、念には念を入れるのがルーナ流であった。

 

 


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