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番外編:この手を取ったら《チェリー視点》
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ルミナス様の婚礼衣装を纏った姿、いつも以上にお美しかった。
何度思い出しても、うっとりとしてしまう。
そんな私を、ラクトウェル殿下は微笑ましそうに、そして優しく見つめてくれている。
私の名前は、チェリー。
私は平民だから、家名はない。
平民の中でもあまり裕福な方ではなかったけど、将来のことを考えて、お父さんたちが無理をして学園に通わせてくれた。
その学園では、以前に街で出会った『ラクトくん』や高位貴族のご子息たちとも親しくしてもらってた。
それが間違いだったと知ったのは、ルミナス・コンフェルト様という公爵令嬢様と知り合うことが出来たから。
美しくて気高くて、それでいて少しも驕ったところのない、王太子殿下の婚約者様。
ルミナス様は、次男とはいえ高位貴族のご子息と交流するということが引き起こす弊害について、私に教えて下さった。
お父さんたちが無理をしてまで、将来のために通わせてくれているのに、私の行動はその将来を駄目にしてしまう行為だったの。
だから、ルミナス様の手に縋ったの。
侍女見習いとして働くことで、私にはコンフェルト公爵家の加護があるって皆さんに知ってもらえるからって。
学園と侍女見習いの仕事は大変だったけど、ルミナス様はお給金まで出して下さり、私はお父さんやお母さんを助けることも出来た。
レイラさんは厳しかったけど、自分の分のお菓子をお土産にって分けてくれたり、本当にコンフェルト公爵家の人々は優しかった。
『ラクトくん』が、第2王子殿下だけど、私のことを好きだと言ってくれて・・・
でも、平民の私がその手を取ることは出来ないって、今の私は知っていて。
そしたらルミナス様が、貴族になる覚悟が持てるのなら、コンフェルト公爵家に連なる男爵家の養女にしてあげるって。
ラクトくん・・・ラクトウェル殿下は、王太子殿下がルミナス様と結婚されて、お子が授かったら、本当なら侯爵位を賜るはずだったって聞いた。
だけど、私と結婚したいからって、伯爵位を賜ることにしたって。
それに、私が貴族になれないのなら、自分が平民になるからって。そのために文官の仕事も勉強してて、贅沢は出来ないけど、平民として暮らしてはいけるからって。
どうしてそこまで、って聞いた私に、照れたような笑顔で、私のことが好きだからって殿下は言ってくれたの。
嬉しかった。
好きだから、どうしても無理なら断ってくれて構わないと言いながら、前向きに考えてくれると嬉しいって言われて、正直な気持ち、嬉しかった。
私も彼のことが好きだから。
まだ、ラクトウェル殿下のお気持ちには応えていない。
ルミナス様は王太子妃殿下になられたけど、お子を授かるまではラクトウェル殿下は第2王子殿下のままだから。
侍女見習いから、侍女になった頃から、貴族としての振る舞いなどを教わることが増えた。
その知識は、私が貴族にならなくても、この先宝となると思う。
ラクトウェル殿下の手を取るか、まだ決断はついていない。
好きなだけじゃ駄目なことも、今の私には分かってるから。
「ふふっ。好きな人と一緒なら、頑張れるものよ」
迷ってる私に、そう言って下さったルミナス様の笑顔が、今も私の胸の中にある。
何度思い出しても、うっとりとしてしまう。
そんな私を、ラクトウェル殿下は微笑ましそうに、そして優しく見つめてくれている。
私の名前は、チェリー。
私は平民だから、家名はない。
平民の中でもあまり裕福な方ではなかったけど、将来のことを考えて、お父さんたちが無理をして学園に通わせてくれた。
その学園では、以前に街で出会った『ラクトくん』や高位貴族のご子息たちとも親しくしてもらってた。
それが間違いだったと知ったのは、ルミナス・コンフェルト様という公爵令嬢様と知り合うことが出来たから。
美しくて気高くて、それでいて少しも驕ったところのない、王太子殿下の婚約者様。
ルミナス様は、次男とはいえ高位貴族のご子息と交流するということが引き起こす弊害について、私に教えて下さった。
お父さんたちが無理をしてまで、将来のために通わせてくれているのに、私の行動はその将来を駄目にしてしまう行為だったの。
だから、ルミナス様の手に縋ったの。
侍女見習いとして働くことで、私にはコンフェルト公爵家の加護があるって皆さんに知ってもらえるからって。
学園と侍女見習いの仕事は大変だったけど、ルミナス様はお給金まで出して下さり、私はお父さんやお母さんを助けることも出来た。
レイラさんは厳しかったけど、自分の分のお菓子をお土産にって分けてくれたり、本当にコンフェルト公爵家の人々は優しかった。
『ラクトくん』が、第2王子殿下だけど、私のことを好きだと言ってくれて・・・
でも、平民の私がその手を取ることは出来ないって、今の私は知っていて。
そしたらルミナス様が、貴族になる覚悟が持てるのなら、コンフェルト公爵家に連なる男爵家の養女にしてあげるって。
ラクトくん・・・ラクトウェル殿下は、王太子殿下がルミナス様と結婚されて、お子が授かったら、本当なら侯爵位を賜るはずだったって聞いた。
だけど、私と結婚したいからって、伯爵位を賜ることにしたって。
それに、私が貴族になれないのなら、自分が平民になるからって。そのために文官の仕事も勉強してて、贅沢は出来ないけど、平民として暮らしてはいけるからって。
どうしてそこまで、って聞いた私に、照れたような笑顔で、私のことが好きだからって殿下は言ってくれたの。
嬉しかった。
好きだから、どうしても無理なら断ってくれて構わないと言いながら、前向きに考えてくれると嬉しいって言われて、正直な気持ち、嬉しかった。
私も彼のことが好きだから。
まだ、ラクトウェル殿下のお気持ちには応えていない。
ルミナス様は王太子妃殿下になられたけど、お子を授かるまではラクトウェル殿下は第2王子殿下のままだから。
侍女見習いから、侍女になった頃から、貴族としての振る舞いなどを教わることが増えた。
その知識は、私が貴族にならなくても、この先宝となると思う。
ラクトウェル殿下の手を取るか、まだ決断はついていない。
好きなだけじゃ駄目なことも、今の私には分かってるから。
「ふふっ。好きな人と一緒なら、頑張れるものよ」
迷ってる私に、そう言って下さったルミナス様の笑顔が、今も私の胸の中にある。
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