転生ガチャで悪役令嬢になりました

その頃の第２王子１《ラクトウェル視点》

　僕の名前は、ラクトウェル・グラディウス。このグラディウス王国の第２王子だ。

　今年12歳になった僕には、７歳年上の兄上がいる。

　男の僕から見ても、兄上の容姿はとても麗しい。

　父上も母上もそれから僕も、容姿端麗な方だと思う。
　だけど、兄上のその容姿は規格外だ。
神とか悪魔とか言われても納得できる。

　その見た目のせいか、兄上はモテるけどモテないという不思議な現象を引き起こしていた。

　どうやら女の子たちは、自分よりも見目麗しい兄上は、観賞用と思っているらしい。

　それでも、この国の王太子である兄上には、侯爵家のご令嬢の婚約者がいた。

　特別、美人でも、可愛いわけでもない、言うなれば普通のご令嬢。
　多分、王太子妃になるから、見た目じゃなく優秀さで婚約者になったんだと思う。

　だって、兄上たちは別に、仲睦まじいという様子じゃなかった。仲悪くもなかったけど。

　僕は、同じ王子だけど、王太子である兄上と違って、政略結婚にこだわる必要はないと思う。

　他国の王族と、結婚しなきゃならないほど、うちの国は困窮しているわけでもない。

　僕が結婚する頃には、兄上たちにも子供ができてるだろうし、僕は好きになった相手と一緒になりたいと思っていた。

　そんな日々が一転する事件が起きた。
兄上の婚約解消である。

　まさしく事件だ。
王太子である兄上の婚約者は、兄上の側近と恋仲になってたっていうんだから。

　でも、僕はほんの少しだけど、胸がスッとした。

　あの完璧な見た目で、頭も良くて、剣技も凄くて、非のつけところのない兄上が、婚約者を盗られた？

　年が離れてるから、そんなに大っぴらには言われないけど、兄上と比較されてた僕は、ほんの少し、ほんの少しだけ兄上がふられたことを嬉しく思ったんだ。

　兄上の新しい婚約者探しは、難航していた。
　僕は知らなかったけど、兄上には好きな令嬢がいるらしく、その令嬢への気持ちを理解してくれる婚約者っていうのは中々いないらしい。

　そりゃそうだ。
どこに他の女の子を好きでも良いって言ってくれる婚約者がいるんだって話だ。

　そんな中、僕の婚約者候補との顔合わせが決まった。

　宰相の娘で、どうやらずっと前から、僕の婚約者候補と決まっていたらしい。

　うちの国は、12歳になるまで、婚約者を決めない風習があるから、決定はしていないけど。

　父上にも母上にも、ほぼそのご令嬢で確定だって言われた。

　宰相、コンフェルト公爵家はこの国でも王家に次ぐ力のある貴族で、他の貴族と婚約されると、パワーバランスが狂うとかなんとか言われたんだ。