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手に入れたい至宝2《クリストフ視点》
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ルミナス嬢への気持ちは、ずっと消えなかった。
だけど王太子として、僕は婚約者とそれなりにうまくやれているつもりだった。
父上から、ラクトウェルの婚約者候補にルミナス嬢をあげると言われた時も、僕は何も言わなかった。
いや。言えなかった。
僕ではダメなのに、ラクトウェルならいいのかと、ずっと言葉にできない気持ちがあった。
だけど、ラクトウェルがルミナス嬢を大切にして、彼女を幸せにできるなら、我慢出来る。そう思った。
第2王子妃なら、王太子妃よりは教育も厳しくない。
いや。コンフェルト公爵家は、彼女しか子供がいないから、ラクトウェルが婿入りするのかもしれない。
そうしたら、彼女はずっと生まれ育ったコンフェルト家で暮らしていける。
王家に嫁ぐより、きっと彼女にとって幸せだろう。
だから、僕は何も言わなかった。
このまま、婚約者と時が来れば結婚するのだと思っていた。
だけど。
婚約者のご令嬢が、ある日を境に日に日に元気がなくなりだした。
原因は、すぐに分かった。
僕の側近であった侯爵家次男が、僕の婚約者と想いあっていると告白してきたのだ。
本来なら、許されないことだ。
主人である王太子の婚約者と想いを交わすなど。
でも、僕は彼らの恋を認めた。
確かに彼女は王太子妃になれる能力があった。
恋ではないけれど、僕も彼女とならやっていけると思っていた。
でも、ずっと他の女性を想っている男の妻になって、彼女は幸せなわけがない。
好きな相手がいるのなら、結ばれるべきだ。
何故なら、僕は彼女でなければならないわけじゃないのだから。
父上も母上も、僕の決断に渋い顔はされたけど、僕の気持ちを知っているからか、彼らの恋を認めて下さった。
こうして、僕は婚約者に逃げられた王太子となったのだ。
新たな婚約者を、決めなくてはならなかった。でも、彼女のように、僕がルミナス嬢を想ったままなことを理解してくれる女性はそう簡単には見つからない。
そうしているうちに、ルミナス嬢とラクトウェルの顔合わせの日が近づいて来た。
こっそり、一目だけでもいいから、成長した彼女を見たくて、お茶会が行われる庭園へと足を向けた。
ルミナス嬢は、12歳になり、とても美しく成長していた。
言葉を交わしてみたくて、近づいた。
だけど、彼女はその藍色の瞳に僕を映した途端、気を失ってしまった。
その後は、大変だった。
母上には叱られるし、コンフェルト夫人には睨まれるし。
それでも、彼女を見れたことを喜んでいた僕は、ラクトウェルが現れないことをすっかり忘れていた。
母上からラクトウェルが、最近、市域に下りているのだと聞いた。
まだ、12歳のラクトウェルだ。
たまには息抜きだってしたいだろう。
そう思っていた。
だから、母上にもたまには良いんじゃないかと言ったんだ。
だけど王太子として、僕は婚約者とそれなりにうまくやれているつもりだった。
父上から、ラクトウェルの婚約者候補にルミナス嬢をあげると言われた時も、僕は何も言わなかった。
いや。言えなかった。
僕ではダメなのに、ラクトウェルならいいのかと、ずっと言葉にできない気持ちがあった。
だけど、ラクトウェルがルミナス嬢を大切にして、彼女を幸せにできるなら、我慢出来る。そう思った。
第2王子妃なら、王太子妃よりは教育も厳しくない。
いや。コンフェルト公爵家は、彼女しか子供がいないから、ラクトウェルが婿入りするのかもしれない。
そうしたら、彼女はずっと生まれ育ったコンフェルト家で暮らしていける。
王家に嫁ぐより、きっと彼女にとって幸せだろう。
だから、僕は何も言わなかった。
このまま、婚約者と時が来れば結婚するのだと思っていた。
だけど。
婚約者のご令嬢が、ある日を境に日に日に元気がなくなりだした。
原因は、すぐに分かった。
僕の側近であった侯爵家次男が、僕の婚約者と想いあっていると告白してきたのだ。
本来なら、許されないことだ。
主人である王太子の婚約者と想いを交わすなど。
でも、僕は彼らの恋を認めた。
確かに彼女は王太子妃になれる能力があった。
恋ではないけれど、僕も彼女とならやっていけると思っていた。
でも、ずっと他の女性を想っている男の妻になって、彼女は幸せなわけがない。
好きな相手がいるのなら、結ばれるべきだ。
何故なら、僕は彼女でなければならないわけじゃないのだから。
父上も母上も、僕の決断に渋い顔はされたけど、僕の気持ちを知っているからか、彼らの恋を認めて下さった。
こうして、僕は婚約者に逃げられた王太子となったのだ。
新たな婚約者を、決めなくてはならなかった。でも、彼女のように、僕がルミナス嬢を想ったままなことを理解してくれる女性はそう簡単には見つからない。
そうしているうちに、ルミナス嬢とラクトウェルの顔合わせの日が近づいて来た。
こっそり、一目だけでもいいから、成長した彼女を見たくて、お茶会が行われる庭園へと足を向けた。
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言葉を交わしてみたくて、近づいた。
だけど、彼女はその藍色の瞳に僕を映した途端、気を失ってしまった。
その後は、大変だった。
母上には叱られるし、コンフェルト夫人には睨まれるし。
それでも、彼女を見れたことを喜んでいた僕は、ラクトウェルが現れないことをすっかり忘れていた。
母上からラクトウェルが、最近、市域に下りているのだと聞いた。
まだ、12歳のラクトウェルだ。
たまには息抜きだってしたいだろう。
そう思っていた。
だから、母上にもたまには良いんじゃないかと言ったんだ。
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