上 下
22 / 128
悪役令嬢回避編

ヒロイン登場

しおりを挟む
「あなた、平民よね?本当図々しいわ。突然、魔力が生まれたなんてあり得ないわよ。何かやったんじゃないの?」

 そんな声が聞こえて、足を止めた。
ちょっと、お花摘みに行った帰りに、聞こえてきた声。

 ふと、声がした方を見ると、数人のご令嬢が誰かを取り巻いている。

 平民?平民って、ヒロイン?
え?ちょっと待って。これって、王太子ルートの出会いイベント?

 マズい。マズい。マズい。
こんなところにアニエスがいたら、マリウス殿下にアニエスがイジメをしていたって認識される。

 せっかく、友達としてそれなりの関係を築いているのに、やってもいないイジメの首謀者にされてはたまらない。

 さっさと会場に戻らなきゃ。
そう思って踵を返そうとした私は、バシッという音に振り返った。

「何をなさっているのですか?」

 気が付いたら、ヒロインと数人のご令嬢の間に立ち塞がっていた。
 いや。私が何をやってるの、だわ。
でも、手をあげたのを知らんぷりなんて出来なかった。

 ヒロインの、愛らしい頬が赤くなっていて、あきらかに頬を張られたのだとわかる。

 肩のあたりで揺れるストロベリーブロンドの髪に、ピンク色の瞳。
 間違いない。ヒロインだ。
清楚な白のワンピース姿で、乙女ゲームで見た愛らしさそのままの姿。

 ああ。魔法学園は、私服である。
だから、平民のヒロインは、自分の持っている中で1番上等なワンピースを着ているし、私も青色のワンピース姿である。

 さすがに、学園にドレスを着て来るようなことはしない。
 もちろん、丈は足首近くまであるけど。
貴族令嬢にとって、足を見せることは恥ずかしいことらしい。

 それはともかく、仮にも筆頭公爵家のご令嬢であり、王太子殿下の婚約者である私の顔は、知れ渡っているようだ。

「あ、アニエス様・・・」

「わたくしの名前を呼ぶ権利を、貴女に与えましたかしら?」

「も、申し訳ございませんっ」

 魔法学園は、今年は特別枠で平民のヒロインが入学するけど、基本は貴族しかいない。
 つまりは身分制度がある学園なのだ。
筆頭公爵家令嬢である私より上の身分なのは、王太子殿下であるマリウス殿下のみ。

 身分が下の者が、上の者の名前を許可なく呼ぶことなど許されない。
 基本は家名に様付けだ。
マリウス殿下相手なら、王太子殿下と呼ぶことになる。

 大体、親しい者でも、公の場では家名で呼ぶし、プライベートでなければ名前呼びなどしない。

 学園内なら名前呼びでもいいだろうが、それは上の者が許可した場合だ。
 当然のことながら、私は目の前のご令嬢方に許可した覚えなどない。

「さて、お話が聞こえましたけど、何をどうやれば魔力が生まれたりしますの?ぜひ、お聞かせ願いたいわ。この方は教皇様が聖女と認められた方ですのよ?教皇様の決定にご不満がありまして?」

 私の言葉に、目の前のご令嬢方は、顔を青くしている。
 全く、そんな顔をするくらいなら、イジメなんかするんじゃないわよ。

「面白い話をしてるね。僕も混ぜてくれない?」
しおりを挟む
感想 324

あなたにおすすめの小説

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

【完結済】監視される悪役令嬢、自滅するヒロイン

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 タイトル通り

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね

さこの
恋愛
恋がしたい。 ウィルフレッド殿下が言った… それではどうぞ、美しい恋をしてください。 婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました! 話の視点が回毎に変わることがあります。 緩い設定です。二十話程です。 本編+番外編の別視点

【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

処理中です...