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悪役令嬢の戸惑い

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 シャーリーに、私がシャーミアであることをお話しました。

 シャーリーは、お兄様と同じように、心から私に起きたことを怒ってくれて、私がそのことを嬉しく思って微笑んでしまうと「笑い事ではありません!」と私まで怒られてしまいました。

 だって、心配されることがこんなに心地いいなんて知らなかったんですもの。

 私は、完璧で当たり前でした。失敗すれば、出来損ないのように蔑まれた目で見られて、ずっと子供の頃から私のことを親身に考えてくれる人なんていなかった・・・

 私を生んで育ててくれた親よりも、私と血の繋がっている妹よりも、幼い頃から婚約していた婚約者よりも、誰よりも魔族である彼らの方が優しい。

 その事実に、胸が締め付けられるのです。微笑っていないと、泣いてしまいそうなのです。

「ですが、ラーミア様が色々と完璧な理由がわかりました。すでに、人間の王太子妃教育まで終えられているのですね?」

 私が、レイ様に全てをお話しようと思ったのも、それが理由です。

 5歳の時から眠り続けていたラーミア様が、淑女として完璧に振る舞えば怪しまれる、そんなことは当たり前のことです。

 ですが、シャーミアとしての私に染み付いた淑女としての振る舞いをなかったことにするのも、難しかったのです。

 どちらにせよ、お兄様にはお話しているのですから、お兄様が信用されている方にお話しても構わない。私はそう判断したのです。

 そして、レイ様の反応は分かりませんが、シャーリーに話せたことは間違いでなかったと、私は思っています。

 だって、こんなにシャーミアに起きていたことを怒ってくれるんですもの。
 私はお兄様やシャーリーと一緒にいたら、自分が意味のない人間なんかじゃないと思うことができるのです。

「魔族としての淑女教育も、人間のと変わらないのね」

「そうですね。私たちも人間と全く関わらずに生きているわけではありませんから、そのことを考慮して、人間の中に紛れてもおかしくない振る舞いを身につけます。人間が我が国に来ることはなくても、私たちが人間の国に行くことはあるんですよ」

 シャーリーの言葉に、戸惑ってしまいます。
人間の国に、魔族が?

 そういえば、私のいただいた食事やお茶も、それからドレスも、人間の国の物と変わりありません。

「食材とかを買うの?」

「この国で作っているものもありますけど、買い付けるものもありますよ。紅茶なんかは、魔国産のいいものがあります。飲まれますか?」

「ええ。飲みたいわ。紅茶は好きなの」

 そうして、シャーリーが淹れてくれた魔国産の紅茶は、私の知っているどの茶葉よりも香り高くフルーティーで、私の大好きなお茶になりました。

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