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悪役令嬢の叱責

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 シャーリーと庭を散策した後、部屋に戻ると・・・

 部屋中がビオラの花で埋まっていました。
 ええと?これは一体・・・

 足の踏み入れ場もなく・・・だって床一面に花があるのですもの。
 立ち尽くす私を、後ろから誰かが抱きしめてきます。

 誰か・・・お兄様ですわよね。
ここ1週間、嗅ぎ慣れた香木の香りがします。

「お兄様」

「ミアはビオラの花が好きなのだな」

 確かに、私はビオラの花が好きです。ですが、いくら好きだといっても、この部屋中に花を敷き詰めるというのは違うと思います。

 それに、お兄様。何故、私とシャーリーの会話を知っていますの?

「陛下。盗み聞きはいかがなものかと」

「大切なミアのことを知りたくて何が悪い」

 シャーリーが嗜めると、お兄様は不満そうな顔で言い返しています。

 何が悪いって・・・盗み聞きは駄目ですわ。

「盗み聞きは駄目ですわ、お兄様」

「何故だ?」

 え?そこ、疑問ですの?
魔族にしたら普通のこと・・・ではありませんわよね?シャーリーが嗜めていましたもの。

「何故・・・そうですわね。もし、お兄様が私に何か内緒で何かをしようとしていて、それを私に盗み聞きされて知られてしまったら、どう思われますか?」

「私は、ミアに内緒事などしない」

 いえ、ですからそうではなくてですね。困りましたわ。なんて言えば理解していただけるのかしら。

「では、陛下はラーミア様に喜んでいただくために、こっそりプレゼントを準備することも叶いませんね。内緒事などなさらないのですから」

 突然、後ろからかけられた声に、ビクッとして振り返ります。

 そこには、銀色に近い白髪と瞳をされた、青年が立っていらっしゃいました。

「レイ・シャンドルと申します。魔国の宰相をしております。ラーミア様」

「はじめまして、シャンドル様」

 お兄様と同じ年齢くらいかしら。でも、シャーリーがお兄様より5歳も上だし、見た目では年齢がわからないわ。

「何故、サプライズでプレゼントをすることが叶わないんだ、レイ」

「内緒事などなさらないのでしょう?こっそりプレゼントを準備することも内緒事ですからね」

「それとこれとは・・・」

「同じです。大体、妹姫で未来の魔王妃殿下とはいえ、ご令嬢の話を盗み聞きするとは品位に欠けます。ラーミア様に嫌われても構わないんですか?」

 まぁ!シャンドル様は、お兄様にはっきりとものを申される方ですのね。

 でも、私も盗み聞きは嫌ですわ。
その・・・女性としての秘密のお話とかできないですもの。

 シャンドル様にそう言われて、お兄様は眉を下げられます。

「ミア。私のことが嫌いになるか?」

「もう盗み聞きをなさらないとお約束して下さるなら、なりませんわ」

「わかった!しない」

「ありがとうございます、お兄様。でも、お花がこんなにあると、足が踏み入れられませんわ。嬉しいですけど、もうおやめくださいね」

 ちゃんと伝えておきます。嬉しいですけど、これでは花の匂いだけで気持ち悪くなりそうですし、切られた花は枯れてしまいますもの、かわいそうですわ。


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