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悪役令嬢の兄

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「私の名は、ジルベルト・フォン・ティターニアだ。ラーミアはジル兄様やお兄様と呼んでいた」

「話し方は今のままでも?」

「ああ。ラーミアも妙に丁寧な話し方をしていた。どうやら母が、いつか人間の世界に戻らなければならなくなった時を思って、そうさせていたらしい」

 ラーミア様がお倒れになったのが5歳と伺いましたから、随分幼い頃から淑女教育をされていましたのね。

 もっとも、高位貴族ほど幼いうちに婚約が決まったりしますから、淑女教育も早いですけれど。
 公爵令嬢であり、16年生きてきた私と変わりないとは、素晴らしいことですわ。

「では、お兄様と呼ばせていただきますわ。ふふっ」

「どうした?」

「私には兄弟はおりませんでしたから、なんだか面映いのですわ」

「・・・そうか。ところで、体の具合はどうだ?どこか痛いとか怠いとかは?」

 ジルベルト様・・・いえ、お兄様に言われて自分の、ラーミア様のお体の様子を見てみます。

 別に痛いところも見当たりませんし、怠くもありませんわ。

「大丈夫そうですわ。少し立ってみますわ。手を離してくださいませ」

 目覚めてからずっと、背中を抱かれています。
 本当に血の繋がった兄妹だとしても、これはいけませんわ。同じ寝台に眠り、抱きしめられるなど。お嫁に行けなくなります。

 お兄様が渋々という感じで、手を離してくださいましたので、そっとベッドから降りてみます。

 うん。大丈夫そうですわ。
めまいもしませんし。10年も病に臥せっていたせいか、筋肉の衰えはあるようで、少しふらつきますけど、そこは徐々に回復するしかないと思います。

「大丈夫みたいですわ。あまり動かれていなかったせいで、衰えは見えますけど、そこは徐々に回復していけば大丈夫だと思います」

「そうか。だが、少しでも異変を感じたら言え。元々、何の病かさえ分からなかったのだ」

「お兄様のおっしゃる通りにいたしますわ。ところで、そろそろ夜着から着替えたいのですが?」

 身内とはいえ、男の方の前で夜着のままでいるものではありませんわ。

「すぐに侍女を呼ぶ。だが、今日は部屋でゆっくりしていろ」

「わかりましたわ」

「ああ、そういえば聞いてなかったな。シャーミア、お前の体は倒れているのではないか?確認した方がいいだろう。オベウス王国と言ったな?」

 ああ。そういえば、伝えていませんでしたわ。

「そのご心配は必要ありませんわ。私は、おそらく死んでおります」

「・・・は?」

「死んだ後のことはわかりませんから、おそらくとしか言えませんけど。首を刎ねられて生きている人間は見たことがありませんから、死んだのだと思いますわ」

 ジルベルトお兄様の目が見開かれました。



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