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悪役令嬢?の断罪

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 ピリカ令嬢の言ったことに、イザベラ様の目がキラリと光った。

「ピリカ・ランスロー伯爵令嬢様」

「は、はいっ」

「わたくしがフィラデルフィア公爵家の娘で、シルヴァン第1王子殿下の婚約者であることは理解されていますか?」

「もちろんです!フィラデルフィア様」

 ピリカ令嬢は随分とハキハキとイザベラ様に答えているけど、学園に入学してからというもの、ずっと一緒にいた私には分かる。

 その人、怒ってるよ。しかも、相当な感じで。

 イザベラ様が自分の立場を強調する時は、怒っている時。

 しかも、他の婚約者のご令嬢たちも、あとの伯爵令嬢に子爵令嬢と男爵令嬢と向かい合っている。

「そう。ご理解されているのね。なら、わたくしに虚偽の発言をすること、それがどういうことかは、ご理解されてますの?」

 イザベラ様は笑みを絶やさない。
だから気づかない人も多いけど、その人の笑みは完璧な淑女教育の賜物だから。
 怒ってるから。素直に謝って、逃げた方がいいから。

「はい!公爵家のご令嬢であるフィラデルフィア様に虚偽の発言をするということは、公爵家に対して虚偽の発言をしていることになります」

 いや、ハキハキと答えている場合じゃないから。
 貴女、さっき私が、第1王子や他の攻略対象に馴れ馴れしく近づいているって、したよね?

 イザベラ様が言ってる、公爵令嬢の自分に虚偽の発言をすることの意味。

 公爵令嬢であるイザベラ様に嘘偽りを告げることは、フィラデルフィア公爵家に嘘偽りを告げていると見做される。

 公爵家より上の、つまりは王家や、他の公爵家、せめて侯爵家くらいなら問題にならないが、伯爵家以下の場合、公爵家に対する不敬だと見做されるのだ。

 それも仕方のないことである。
下の者が、勝手に声をかけることすら許されないのが貴族の世界である。

 現代を生きてきた私からすれば、めんどくさい世界だけど、一応乙女ゲームでの知識があったから、なんとか順応できた。

 元々、貴族として生まれ育ってきたピリカ令嬢たちなら、そのあたりのことは私よりよく知ってるはずである。

 はず、なんだけど・・・

「そう。ご理解されているのね。なら、もう一度お聞きしますわ。アリア様がどうされていたとおっしゃるの?」

「はい。このローズレット伯爵令嬢は、シルヴァン第1王子殿下をはじめ、セドリック公爵令息やギルベイン侯爵令息、ロメオ侯爵令息に馴れ馴れしく近づいていたのです」

「そうなの。ねぇ。他の皆様も同じご意見なのかしら?」

「「「はい!その通りです」」」

 私、どうなっても知らないよ。
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