ヒロインだと言われましたが、人違いです！

ヒロインの評価

　イヴァンさんからの贈り物だというワンピースに袖を通す。

　高価な品なのか、肌触りがすごくいい。これ普通、使用人が買うレベルじゃない気がするんだけど。

「イヴァンさん、絶対喜びますよ～。せっかくだから、ハーフアップにしてリボンも紫にしましょうか」

　シャリーさんが楽しそうに、私の髪をセットしていく。

　出来上がりました、と姿見の前に立たされると、鏡の中には清楚系の美少女が映っていた。

　初めて見る、清楚系のアリア。
うわー。ゲームの中で見たヒロインより全然可愛いんだけど！

　えー。なんで制作さんヒロインのドレス、フリルやリボン盛りだくさんにしたの？
　普通に清楚系着せたら、めちゃくちゃ可愛いのに。

「ふふっ。やっぱりアリアお嬢様は清楚な感じも似合いますね。イヴァンさんのことだから、歩き回らせたりしないとは思いますけど、一応靴はヒールを低めにしておきましょうね」

　ローヒールの編み上げの靴は白で、シャリーさんは歩きやすさを考えてくれたみたいだった。

　お出かけって、イヴァンさんとするの？え？２人きりとかなの？

「お嬢。準備は・・・」

　ノックの後。またすぐに開いたドアから、イヴァンさんが入ってくる。

　いや、だから、開けるの早すぎるんだって。ノックしたんだから、返事を待ってから開けようよ。
　着替え中だったら、悲鳴あげるよ？
というか、使用人としても男としても駄目でしょ。お嬢様だよ？お坊ちゃんじゃないんだよ？

　私がジト目で見ると、イヴァンさんは固まっていた。

　え？なんで？
もしかして、どこかおかしいの？シャリーさんが着付けてくれたんだから、おかしなところないと思うんだけど。
　それとも、似合わないってことなの？
私的にはイケてると思ったんだけど、シャリーさんも似合うって言ってくれたけど、男の人の目から見たら、駄目なのかなぁ。

「イヴァンさん、何見惚れてるんですか？いつもの軽口はどうしたんです？アリアお嬢様が涙目になってますよ」

　シャリーさんのツッコミに、イヴァンさんが再起動した。

　え？見惚れて？そうなの？
というか、シャリーさん「いつもの軽口」って・・・
　ローズレット伯爵家の使用人って、こんな感じの人ばっかなの？

「着てくれるとは思わなかった。すごい、似合う」

「え・・・と、あ、ありがとう」

「・・・お嬢が俺にお礼言うなんて、今日は雨ですかね？せっかく街にお出かけだというのに」

「酷っ」

　褒めてくれたからお礼言ったのに。
えー。でもヒロインって、使用人にお礼言わない人なわけ？
　なんだか、私の中でのヒロインの評価下りっぱなしなんだけど？

　こんなんじゃ、断罪されても仕方ないと思う。本当、何で攻略対象たち攻略されたの？