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やれることをするしかない

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 とりあえず、攻略対象とその婚約者のご令嬢のことは把握オッケーだから、近づかないようにするとして、あとはそれぞれのルートのイベントよね。
 イベントに遭遇すると、どうしても関わっちゃうから、イベント発生ポイントには行かないようにしないといけない。

 あとは、ローズレット伯爵家の両親がどういうスタンスなのかも知らなくてはならない。

 もし権力思考で、家のためにも高位貴族とお近づきになれと言われたら?
 さすがに親が言うことをガン無視も出来ないし、そこのあたりをどううまくやるかが大事になる。
 言うこと聞かないからって、勘当されても困るし。

 とりあえず、やれることをやるしかない。

 そう決意して、握りこぶしを固めていると、ドアがノックされた後、返事をする前に開いた。

「あれ?珍しいですね。お嬢が俺が起こす前に起きてるなんて」

 現れたイケメン(この世界にはイケメンしかいないわけ?)は、そんなことを言いながら、ズカズカと部屋に入って来る。

 艶やかな黒髪に黒い瞳の、有莉愛からしたら見慣れた容姿の男性は、アリアからしたら少し年上に見えた。

 (ってか、誰?)

 お嬢と呼んだことから使用人かと思うけど、伯爵家の使用人がその家のご令嬢をお嬢と呼ぶとも思えない。

 でも、ここで誰と聞くわけにもいかない。でも、1人でいいから転生のことを知ってる味方が欲しい。どうしよう。

「お嬢?」

「あ・・・の・・・」

 駄目だ。なんて言ったらいいのか分からない。

 お嬢って呼んでるくらいだから、きっとアリアと親しいはず。
 そのアリアの中身が別人になってて、この世界が乙女ゲームの世界なんですなんて言ったら、頭がおかしくなったのかと思われる。

 あれ?そういえば、アリアはどうなったんだろう。

 転生モノの話ではどうなっていたっけ?一般的に倒れたりした後に転生してるものだけど、私フツーに起きてたよね?この人も驚いてないし。

「お嬢?まだ寝ぼけてるんですか?今日は街に買い物に行くって楽しみにしてたんでしょ?ほら、さっさと着替える。俺が手伝ってあげましょうか?」

「エッチ」

「お。ようやくいつもの調子になってきましたね」

「あ。お嬢様、おはようございます。イヴァンさん。旦那様がお呼びですよ」

 開きっぱなしのドアからメイドさんが顔を覗かせ、黒髪美形に声をかけた。

 イヴァン。イヴァンって言うんだ。

「了解です。シャリーさん。お嬢様の着替えを手伝って下さい。いつまでたっても動かないんで」

「ふふっ。イヴァンさんがいたら着替えれませんよ。さ。さっさと出てって下さい」

 メイドさん、シャリーさんって言ったっけ。イヴァンと同じくらいの年齢の彼女にイヴァンは部屋から追い出される。

「さあ。アリアお嬢様。今日は楽しみにしてたお出かけですよ。どれを着られますか?」

 メイド、シャリーさんがクローゼットからワンピースを何着か引っ張り出して来る。

 ええと。できればシンプルめなのをお願いします。






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