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最終章

最終話:手の中の幸せ《アレクシス視点》

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 セレスティーナがグレイスの生まれ変わり?グレイスは死んだ後にセレスティーナとして生まれ変わるはずだったのに、悪霊に捕らえられていた?

 セレスティーナの語る内容に、理解が追いついていかない。

 確かに、何故グレイスがセレスティーナの中にいたのかという疑問はあった。
 グレイスは息をするように自然にセレスティーナとして過ごし、15歳となった。

 だからセレスティーナの言うとおり、セレスティーナがグレイスの生まれ変わりだというのなら、納得できてしまう。

 グレイスを愛している。セレスティーナのことは従妹だと、ずっと思っていた。
 10歳も年下の、大切な従妹。
ずっとセレスティーナの見た目を通して、内側のグレイスを見ていたつもりだった。

 だけど、今こうして話していると、僕が見ていたのはグレイスなのかセレスティーナなのか、分からなくなる。

 何故なら、グレイスと話していた時と、変わらない。
 10年間、ずっとそばにいて、僕に笑顔を向けていてくれた彼女のままだ。

 自分の気持ちに混乱している僕に、セレスティーナは上半身を起こすと、ぎゅっと抱きついてきた。
 思わず、そのまま抱きとめる。

「アル兄様がセレスティーナを従妹としてしか見れなくても、それは当たり前なの。だって、当時私は5歳だったんだから。15歳のアル兄様が当時の私を1人の女の子として見てたって言ったら、逆に引いてしまうわ」

 セレスティーナがクスクスと耳元で微笑う。

 くすぐったくて、身を捩った。
だけど言われた内容は、ストンと、僕の中に落ちてきた。

 そうか。それもそうか。
セレスティーナが5歳の時に16歳のグレイスと出会った。同じ年代の彼女とセレスティーナを同じには見れなかったのは当たり前なのかもしれない。

 それでも、引いてしまうと言われて、ちょっと拗ねた声が出た。

「酷いな。引いてしまうだなんて」

「ふふっ。だって、アル兄様。5歳よ?元々、アル兄様は私のことを溺愛して下さっていたけど、従妹でなかったら周囲から見たらアル兄様は危ない人だわ」

「酷いな。でもまぁ、確かにそう思われても仕方ないよな」

 実際、僕たちの周囲の人間は、見慣れていたから何も言わなかったが、初めての人間は必ず驚いたような顔をしていた。
 さすがに、皇族相手に何か言うようなことはなかったし、すぐに何もなかったような表情に戻っていたけど。

 僕は腕の中のセレスティーナをぎゅっと抱きしめる。

 ずっと、ずっと大切だった。
可愛くて仕方のなかった10歳も年下の従妹。

 そして10年間、ずっと僕のそばで笑っていてくれた愛しい女性。

 手の中に戻ってきた愛しくて可愛くて、大切な存在。
 少しだけ体を離すと、セレスティーナの瞳が僕を見上げた。

 僕が頬に触れると、銀色のまつ毛がふるりと震える。
 僕はゆっくりと、その小さな唇に自分のそれを重ねた。

「よく戻って来たね。もう絶対に離さない」


∞∞  fin  ∞∞
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