上 下
79 / 96
最終章

1つに溶け合って《グレイス視点》

しおりを挟む
 セレスティーナ様の決意が固いことが、私にも伝わってきます。

 だけど、私とセレスティーナ様の魂を融合するなんて、一体どうやればいいのでしょうか。

 私にはそんな知識はありませんし、ずっと眠られていたセレスティーナ様にあるわけがありめせん。
 ディアナだってないと思うのですが。

「それで、ディアナ。一体どうやろうというのですか?先程も言いましたが、失敗はできないのですよ?」

「まずはお姉様とセレスティーナ様は手を繋いで下さい。あ。両手ともですよ。そして、私がその繋いだ上から触れますね。私も繋いじゃうと、私まで融合しちゃいますから」

 ディアナはケラケラと笑いながら、そんなことを言います。
 本当に、この子は変に気負っていないというか、何というか。

 私とセレスティーナ様は、向かい合って手を繋ぎます。その繋いだ手の上にディアナが手を重ねました。

「セレスティーナ様、お姉様。お2人とも1つに溶け合って同じ未来に向かうのだと強く思って下さい。2人で必ず皇太子殿下の元へ帰るのだと。強い思いが願いを叶えるんです。強く強く思って下さい」

「同じ未来に・・・」

「アル兄様の元へ私たち2人で戻るの」

「お姉様。お姉様の聖女の力に私の力を注いでいきます。私の力を混ぜ合わせて、ご自分とセレスティーナ様を包むように力を流してください」

 難しいことを言う子です。流れ込んでくるディアナの力と自分の聖女の力を混ぜ合わせるのですね。

 難しいことだと思いましたが、私とディアナは姉妹だからでしょうか。聖女の力は、綺麗に溶け合いました。

 虹色の光を放つ聖女の力を、私とセレスティーナ様を包むように流し込んでいきます。

 フッと脳裏にアル兄様の顔が浮かびました。
 アル兄様・・・アレクシス皇太子殿下。
大好きな、大好きな人。

 本当は、帰りたかった。
私のことを愛してくれたあの人のところへ、戻りたかった。

 だけど、私を守るために10年も眠りについていたセレスティーナ様のことを考えたら、そんな我儘言えませんでした。

 この体はセレスティーナ様のものだから。グレイスわたしはずっと前に死んでいるんだから。

「グレイス。我儘を言っていいの。私のものだからとか、自分は死んてるのだからとか考えないで。私たち、一緒に幸せになりましょう?」

 セレスティーナ様の言葉が、優しく私の体に染み渡っていきます。
 セレスティーナ様と一緒に・・・
幸せに・・・

「お姉様、幸せになって?きっと、お父様もお母様も天国からそれを望んでいるわ」

 お父様、お母様。
私のせいで、お若くして死なせてしまいました。私が何も相談せずに死を選んだりしたから、苦しめてしまいました。

 お父様とお母様は私が幸せになることを望んでくれているの?

 そこまで考えたときー
脳裏に微笑むお父様とお母様の姿が浮かび、そして私の意識はそこで途切れました。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす

みん
恋愛
【モブ】シリーズ③(本編完結済み) R4.9.25☆お礼の気持ちを込めて、子達の話を投稿しています。4話程になると思います。良ければ、覗いてみて下さい。 “巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について” “モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語” に続く続編となります。 色々あって、無事にエディオルと結婚して幸せな日々をに送っていたハル。しかし、トラブル体質?なハルは健在だったようで──。 ハルだけではなく、パルヴァンや某国も絡んだトラブルに巻き込まれていく。 そして、そこで知った真実とは? やっぱり、書き切れなかった話が書きたくてウズウズしたので、続編始めました。すみません。 相変わらずのゆるふわ設定なので、また、温かい目で見ていただけたら幸いです。 宜しくお願いします。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

幸せなのでお構いなく!

恋愛
侯爵令嬢ロリーナ=カラーには愛する婚約者グレン=シュタインがいる。だが、彼が愛しているのは天使と呼ばれる儚く美しい王女。 初対面の時からグレンに嫌われているロリーナは、このまま愛の無い結婚をして不幸な生活を送るよりも、最後に思い出を貰って婚約解消をすることにした。 ※なろうさんにも公開中

〖完結〗私が死ねばいいのですね。

藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。 両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。 それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。 冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。 クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。 そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全21話で完結になります。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

【完結】今夜さよならをします

たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。 あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。 だったら婚約解消いたしましょう。 シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。 よくある婚約解消の話です。 そして新しい恋を見つける話。 なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!! ★すみません。 長編へと変更させていただきます。 書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。 いつも読んでいただきありがとうございます!

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」 謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。 けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。 なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。 そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。 恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。

処理中です...