上 下
53 / 96
第3章

愚か者《ルシアン視点》

しおりを挟む
 僕の名前はルシアン・テレンス。テレンス公爵家の嫡子である。

 僕には5年前に結んだ婚約者がいる。
同じ公爵家であるメリッサ・フルーニー公爵令嬢だ。
 赤い髪と瞳をしたメリッサは、フルーニー公爵家の次女で、僕たちは皇妃様のお茶会で出会った。

 アルバム皇国には、僕たちと同い年の皇女様がいて、その皇女様の友人を決めるためのお茶会だった。

 僕たち子息は、皇女様の友人候補ではなく、その友人候補のご令嬢との顔合わせのために招かれた。

 招かれたのは、公爵家2名、侯爵家2名、伯爵家1名の5名のご令嬢。子息は7名の高位貴族。

 その中で出会ったメリッサの笑顔に、僕は一目惚れしたのだ。

 それから、父上にメリッサと婚約したいとお願いして、僕とメリッサは婚約者となった。

 そんな僕だが、ここ最近、学園に通うのが楽しくて仕方ない。
 理由は簡単。可愛いラナナと一緒にいられるからだ。

 ラナナはオットン子爵家の令嬢だ。
公爵家の嫁として迎えるにはラナナは色々問題がある。
 勉強は下の下だし、貴族令嬢としての立ち振る舞いも出来ていない。どちらかと言えば、平民のような振る舞いをする。

 公爵家の嫁は綺麗なドレスを着て、お茶会ばかりしているみたいにラナナは思っているみたいだが、そんなことを言ったら母上から雷が落ちるだろう。

 領地経営をする夫を支え、女主人として公爵家を切り盛りし、お茶会で他家の噂や情報を聞いてそれを公爵家繁栄のために役立てる能力が必要なのだ。

 その点、婚約者のメリッサは公爵令嬢として立ち振る舞いは完璧だし、勉強もできる。
 少々、物言いがキツいところがあるけれど、顔も可愛い部類だし、公爵家の嫁としては完璧だろう。

 そういえば、最近はメリッサと話をしていないな。
 いつもなら月に1度は必ずお茶会を行うのに、誘いがなかった。

 メリッサは皇女殿下と仲がいいから、そちらとの付き合いが忙しいのかな?

 しかし、いくら相手が皇女殿下とはいえ、婚約者を蔑ろにするなんて嫁として失格だと注意しないとな。

「ルシアン?何考えてるの?」

 ラナナが腕に身を寄せてくる。
その、ふくよかな胸が腕に当たって、僕は顔をニヤつかせてしまった。

 メリッサはお堅いから、絶対にこんな真似はしない。
 貴族令嬢としてはラナナの振る舞いは褒められたものではないのかもしれないが、男としては、こういう女性に惹かれるのも無理はないと思う。

「いや。何でもないよ」

「ねぇ。ルシアン。今日の帰りにカフェに行かない?私、ルシアンと一緒にパンケーキ食べたいわ」

「カフェか。いいよ、行こうか」

 ラナナの手を取る。
僕はそんな僕たちを見ている視線があることに、全く気づいていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす

みん
恋愛
【モブ】シリーズ③(本編完結済み) R4.9.25☆お礼の気持ちを込めて、子達の話を投稿しています。4話程になると思います。良ければ、覗いてみて下さい。 “巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について” “モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語” に続く続編となります。 色々あって、無事にエディオルと結婚して幸せな日々をに送っていたハル。しかし、トラブル体質?なハルは健在だったようで──。 ハルだけではなく、パルヴァンや某国も絡んだトラブルに巻き込まれていく。 そして、そこで知った真実とは? やっぱり、書き切れなかった話が書きたくてウズウズしたので、続編始めました。すみません。 相変わらずのゆるふわ設定なので、また、温かい目で見ていただけたら幸いです。 宜しくお願いします。

妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る

星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。 国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。 「もう無理、もう耐えられない!!」 イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。 「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。 そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。 猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。 表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。 溺愛してくる魔法使いのリュオン。 彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる―― ※他サイトにも投稿しています。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

幸せなのでお構いなく!

恋愛
侯爵令嬢ロリーナ=カラーには愛する婚約者グレン=シュタインがいる。だが、彼が愛しているのは天使と呼ばれる儚く美しい王女。 初対面の時からグレンに嫌われているロリーナは、このまま愛の無い結婚をして不幸な生活を送るよりも、最後に思い出を貰って婚約解消をすることにした。 ※なろうさんにも公開中

〖完結〗私が死ねばいいのですね。

藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。 両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。 それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。 冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。 クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。 そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全21話で完結になります。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

処理中です...