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第1章
灰色の魔女《アレクシス視点》
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「グレイス・シュラット・・・その名前は知っているが、灰色の魔女などと呼ばれていたとは書かれていない」
僕がそう言うと、セレスティーナはその愛らしい顔に大人びた表情を浮かべた。
「婚約者であった王太子殿下に、灰色の髪と瞳だったために、灰色の魔女と呼ばれました。そのうち、周囲にも隠れて呼ばれていたみたいです」
「あまりいい呼び名とは思えないな」
「ええ。王太子殿下は私などより、妹の聖女の方が自分には相応しいと思われていましたから」
淡々と語られる内容に、胸の中がもやもやする。
彼女は何とも思わないのか?
「腹立たしいとは思わなかったのか?」
「仕方のないことです。確かに聖女の妹は愛らしい子でしたから」
見た目はセレスティーナなのに、もうセレスティーナとは思えなかった。
「見た目通りの醜い灰色の魔女だと罵られました。死して償えと言われて、私はその通り死ぬことにしました」
「何かやったのか?」
「いえ。王太子殿下は聖女である妹を害していたとおっしゃられましたが、そんなことはしていません」
「弁解しなかったのか?」
そう問うと、諦めたような微笑みを浮かべる。
「もう、疲れたのです。愛されないことにしがみつくことに。処刑されるくらいなら、最後くらい自分で幕引きをしたくて、奥歯に仕込まれた毒を噛んだのです。やっと全て終わったと思ったら、気がついたらセレスティーナの体の中にいて・・・」
そこで一旦、グレイスは話を止め、真剣な視線を僕へと向けた。
「お願いします。セレスティーナに何があったのか調べてもらえませんか?セレスティーナにこの体を返そうにも、語りかけても反応がないんです」
「セレスティーナに体を返すということは、君は消えるということになるんじゃないか?それでいいの?」
「ええ。私は自分で納得して死んだのです。ですから、早くセレスティーナに体を返さないと」
グレイスの潔さに、驚いた。
せっかく生まれ変わって、どうしてだかわからないけどセレスティーナの精神も見当たらないのだろう?そのままセレスティーナとして生きたいとは思わないのだろうか。
もちろん僕としては会ったことのないグレイス・シュラットよりも、セレスティーナの方が大切だ。
彼女の願いに否を唱えることはない。
「わかった。協力しよう。セレスティーナが倒れたのは、ちょうど20日前だ。セレスティーナの誕生日だった」
「ちょうど20日前?その日は・・・」
「どうかした?」
「ちょうど20日前。その日は私が死んだ日です」
僕がそう言うと、セレスティーナはその愛らしい顔に大人びた表情を浮かべた。
「婚約者であった王太子殿下に、灰色の髪と瞳だったために、灰色の魔女と呼ばれました。そのうち、周囲にも隠れて呼ばれていたみたいです」
「あまりいい呼び名とは思えないな」
「ええ。王太子殿下は私などより、妹の聖女の方が自分には相応しいと思われていましたから」
淡々と語られる内容に、胸の中がもやもやする。
彼女は何とも思わないのか?
「腹立たしいとは思わなかったのか?」
「仕方のないことです。確かに聖女の妹は愛らしい子でしたから」
見た目はセレスティーナなのに、もうセレスティーナとは思えなかった。
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「何かやったのか?」
「いえ。王太子殿下は聖女である妹を害していたとおっしゃられましたが、そんなことはしていません」
「弁解しなかったのか?」
そう問うと、諦めたような微笑みを浮かべる。
「もう、疲れたのです。愛されないことにしがみつくことに。処刑されるくらいなら、最後くらい自分で幕引きをしたくて、奥歯に仕込まれた毒を噛んだのです。やっと全て終わったと思ったら、気がついたらセレスティーナの体の中にいて・・・」
そこで一旦、グレイスは話を止め、真剣な視線を僕へと向けた。
「お願いします。セレスティーナに何があったのか調べてもらえませんか?セレスティーナにこの体を返そうにも、語りかけても反応がないんです」
「セレスティーナに体を返すということは、君は消えるということになるんじゃないか?それでいいの?」
「ええ。私は自分で納得して死んだのです。ですから、早くセレスティーナに体を返さないと」
グレイスの潔さに、驚いた。
せっかく生まれ変わって、どうしてだかわからないけどセレスティーナの精神も見当たらないのだろう?そのままセレスティーナとして生きたいとは思わないのだろうか。
もちろん僕としては会ったことのないグレイス・シュラットよりも、セレスティーナの方が大切だ。
彼女の願いに否を唱えることはない。
「わかった。協力しよう。セレスティーナが倒れたのは、ちょうど20日前だ。セレスティーナの誕生日だった」
「ちょうど20日前?その日は・・・」
「どうかした?」
「ちょうど20日前。その日は私が死んだ日です」
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