215 / 215
最終話:家族なのだから
しおりを挟む
「ハデス様、そこにお座りください」
お仕事から戻り、着替える前にやって来たハデス様に、ベッド横の椅子に座るように促す。
ハデス様は、一瞬戸惑った顔をして・・・
自分が何かしたか考えるようなお顔をされた。
「ジュエル?」
「以前にも申し上げましたが、妊娠は病気ではありません。ですから、ハデス様に四六時中付いていただく必要はありません。むしろ、子供が生まれた時『お父様はお仕事を放り出してお前が生まれて来るまでそばにいたんだよ』とでもおっしゃるつもりですか?」
「・・・」
「私は、ハデス様のお優しいところが大好きです。私にとってもハデス様にとっても、妊娠は初めてのこと。不安になる私を気遣い、そばにいてくれようとすることは、とても・・・とても嬉しいです。ですが、お仕事はちゃんとなさって下さい。皇帝陛下にも皇妃様にも、とてもお力を貸していただいたのでしょう?私が妊娠したせいで、陛下たちの不興を買うようなことになったら・・・いえ、陛下はお許しくださるでしょう。でも、他の貴族たちは?他国出身のハデス様のことをよく思わない貴族も皆無ではないはずです。それらの声を無視することは、皇帝陛下の治世に影を落とします。もしそんなことになったら、私は自分を許せません」
ハデス様は、ジッと私の話を聞いてくださった。
私だって、ハデス様がそばにいてくれたら、安心する。
だけど、ハデス様が伯爵位をいただいたことをよく思わない貴族がいることも事実。
今は問題がないけど、彼らが追求してくる隙を与えたら、陛下だって庇いきれなくなる。
「すまない、ジュエル。俺は・・・ただ嬉しくて」
「ハデス様が喜んでくれて、私も嬉しかったです」
「そうだよな。生まれて来る子供に胸を張って背中を見せれる父親にならないとな」
「ふふっ。ハデス様は素敵な旦那様で、そして素敵なお父様ですわ。ごめんなさい、ハデス様のお気持ちを無碍にするようなことを言って」
私が謝罪すると、ハデス様は私の両手をご自分の両手で包んでくれた。
「ジュエルは間違っていない。馬鹿な真似をしていたら、義姉上に叱られるところだった」
「お姉様とハデス様は似てらっしゃるから、怒ったとしたらきっと似たようなことをしてお母様にでも叱られたのだと思いますわ」
「似てるかな?」
「ええ。私に過保護なところが」
顔を合わせて、微笑み合う。
きっとこの先も、こんな風に問題が起きることもあると思う。
だけど私とハデス様なら、話し合ってちゃんと解決していける。
だって私たちは、家族なのだから。
***end***
これにて完結です。
ジュエルとハデスは、たくさんの子供達に囲まれ、夫婦仲良く、家族仲良く暮らしていきます。
長い間、ジュエルの人生にお付き合いいただき、ありがとうございました。
お仕事から戻り、着替える前にやって来たハデス様に、ベッド横の椅子に座るように促す。
ハデス様は、一瞬戸惑った顔をして・・・
自分が何かしたか考えるようなお顔をされた。
「ジュエル?」
「以前にも申し上げましたが、妊娠は病気ではありません。ですから、ハデス様に四六時中付いていただく必要はありません。むしろ、子供が生まれた時『お父様はお仕事を放り出してお前が生まれて来るまでそばにいたんだよ』とでもおっしゃるつもりですか?」
「・・・」
「私は、ハデス様のお優しいところが大好きです。私にとってもハデス様にとっても、妊娠は初めてのこと。不安になる私を気遣い、そばにいてくれようとすることは、とても・・・とても嬉しいです。ですが、お仕事はちゃんとなさって下さい。皇帝陛下にも皇妃様にも、とてもお力を貸していただいたのでしょう?私が妊娠したせいで、陛下たちの不興を買うようなことになったら・・・いえ、陛下はお許しくださるでしょう。でも、他の貴族たちは?他国出身のハデス様のことをよく思わない貴族も皆無ではないはずです。それらの声を無視することは、皇帝陛下の治世に影を落とします。もしそんなことになったら、私は自分を許せません」
ハデス様は、ジッと私の話を聞いてくださった。
私だって、ハデス様がそばにいてくれたら、安心する。
だけど、ハデス様が伯爵位をいただいたことをよく思わない貴族がいることも事実。
今は問題がないけど、彼らが追求してくる隙を与えたら、陛下だって庇いきれなくなる。
「すまない、ジュエル。俺は・・・ただ嬉しくて」
「ハデス様が喜んでくれて、私も嬉しかったです」
「そうだよな。生まれて来る子供に胸を張って背中を見せれる父親にならないとな」
「ふふっ。ハデス様は素敵な旦那様で、そして素敵なお父様ですわ。ごめんなさい、ハデス様のお気持ちを無碍にするようなことを言って」
私が謝罪すると、ハデス様は私の両手をご自分の両手で包んでくれた。
「ジュエルは間違っていない。馬鹿な真似をしていたら、義姉上に叱られるところだった」
「お姉様とハデス様は似てらっしゃるから、怒ったとしたらきっと似たようなことをしてお母様にでも叱られたのだと思いますわ」
「似てるかな?」
「ええ。私に過保護なところが」
顔を合わせて、微笑み合う。
きっとこの先も、こんな風に問題が起きることもあると思う。
だけど私とハデス様なら、話し合ってちゃんと解決していける。
だって私たちは、家族なのだから。
***end***
これにて完結です。
ジュエルとハデスは、たくさんの子供達に囲まれ、夫婦仲良く、家族仲良く暮らしていきます。
長い間、ジュエルの人生にお付き合いいただき、ありがとうございました。
1,888
お気に入りに追加
4,869
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(574件)
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結、お疲れ様でした!(◍^ᴗ^◍)
いちゃラブも見れたし嬉しかったです。
ハデス母さん再び!
子供にはのびのび過ごしてほしいけど、ぜひうちの子と!ってなりそう 笑
そしてまた物語が……(ノ∀`)
最後までお付き合いいただきありがとうございました😊
まぁ、愛しい妻と、その妻との子供となると、ハデス様の過保護も加速しますよね(笑)
皇帝一家の子供とのお見合い?とか発生しそう。
もう逃さない的な?
最終話・家族なのだから👨👩👧ドキドキしながら楽しく拝読しました😃コレは子供達のやら、ではなく活躍もみたい( =^ω^)完結お疲れ様です😆ありがとうございます🎵🎵。
最後までお付き合いいただきありがとうございました😊
やらかし・・・やらかさないで欲しいけど、なんか色々と絡まれそうですよね。母親譲り?
それでも、幸せに生きていきそうな家族です。周囲が強いから・・・(笑)
ジュエルも強くなったなぁ的な終わりでした。
完結、おめでとうございます。
連載、お疲れ様でしたm(__)m
新連載も楽しみにしてます。
読んでくださりありがとうございました😊
新作、頑張りますので、またお会いできますように(祈り🙏)