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今回の皇妃様主催のお茶会には、総勢四十二名のご令嬢が参加する。
十三歳から二十五歳までで、男爵令嬢に至るまでだから、どうしてもその人数になるのよね。
エレメンタル帝国には、公爵家が三家、侯爵家が五家、伯爵家が七家、子爵家が七家、男爵家は十二家ある。
これ、全部頭に入れなきゃならないのね。
私がなるのは伯爵夫人だから、高位貴族だけでなく下位貴族とも交流することになる。
どちらにしろ覚えなきゃいけないんだから、と覚悟を決めて名簿に視線を落とした。
私のそんな様子に、ハンナたち使用人は邪魔をしないように部屋からそっと退出してくれた。
ありがたいわ。
私、ひとりで集中したいタイプなのよ。
こういうことは、ローゼン王国でもやっていたから覚えられないことはないわ。
皇妃様は丁寧に、お名前とご容姿の特徴にその貴族家の立ち位置などを書き込んでくださっていた。
ハデス様は、他の殿下たちの方から情報を得れないか、対応してみると出かけられた。
サリュ殿下ご本人は口を開かないでしょうけど、他の殿下、特に末子のスオン様は何か勘付かれているかもしれないわね。
優秀な方は、年齢に関係なく色々なことに気付くから。
そちらのことは、ハデス様にお任せしておけばいいわね。
私は私の出来ることをしなくては。
何時間たったのか、黙々とリストに目を通していた私は、フッと視界が遮られて顔を上げた。
「ハデス様?」
いつ戻られたのか、私の目を両手で覆っていたのはハデス様だった。
「ジュエルの集中力には驚かされるな。俺が戻ったのにも気付かなかったものな。もう夕食の時間だ、今日はそこまでにしよう」
「え?もうそんな時間なのですか」
ハデス様が出かけられたのは、お昼を過ぎてすぐだったのに?
「疲れただろう?ハンナもお茶を淹れようと声をかけたが、返事がなかったと言っていた」
「申し訳ございません。私は何かに集中すると周囲に気が回らなくて」
「いや、責めているわけではないから謝らないでくれ。ただすごいと思っただけだ」
すごくはないわ。
集中すると周囲に気が回らないことは、お父様たちにも注意されたのよ。
安心できる場所以外ではやらないようにって。
「四十二名だったか?大変だろう」
「そうですね。お会いしたことがない方ばかりですので、ご本人と一致するまでは完全に覚えたとは言えませんから。ですが、皇妃様が細かく特徴を書いてくださっていましたから、多分ですが一致出来ると思います」
「・・・ちょっと待ってくれ。もしかしてもう全部覚えたのか?」
「いえ、おおまかにですわ。お茶会までにはもう少し完全に出来ると思いますわ」
暗記は得意なのよ。
十三歳から二十五歳までで、男爵令嬢に至るまでだから、どうしてもその人数になるのよね。
エレメンタル帝国には、公爵家が三家、侯爵家が五家、伯爵家が七家、子爵家が七家、男爵家は十二家ある。
これ、全部頭に入れなきゃならないのね。
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どちらにしろ覚えなきゃいけないんだから、と覚悟を決めて名簿に視線を落とした。
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ありがたいわ。
私、ひとりで集中したいタイプなのよ。
こういうことは、ローゼン王国でもやっていたから覚えられないことはないわ。
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優秀な方は、年齢に関係なく色々なことに気付くから。
そちらのことは、ハデス様にお任せしておけばいいわね。
私は私の出来ることをしなくては。
何時間たったのか、黙々とリストに目を通していた私は、フッと視界が遮られて顔を上げた。
「ハデス様?」
いつ戻られたのか、私の目を両手で覆っていたのはハデス様だった。
「ジュエルの集中力には驚かされるな。俺が戻ったのにも気付かなかったものな。もう夕食の時間だ、今日はそこまでにしよう」
「え?もうそんな時間なのですか」
ハデス様が出かけられたのは、お昼を過ぎてすぐだったのに?
「疲れただろう?ハンナもお茶を淹れようと声をかけたが、返事がなかったと言っていた」
「申し訳ございません。私は何かに集中すると周囲に気が回らなくて」
「いや、責めているわけではないから謝らないでくれ。ただすごいと思っただけだ」
すごくはないわ。
集中すると周囲に気が回らないことは、お父様たちにも注意されたのよ。
安心できる場所以外ではやらないようにって。
「四十二名だったか?大変だろう」
「そうですね。お会いしたことがない方ばかりですので、ご本人と一致するまでは完全に覚えたとは言えませんから。ですが、皇妃様が細かく特徴を書いてくださっていましたから、多分ですが一致出来ると思います」
「・・・ちょっと待ってくれ。もしかしてもう全部覚えたのか?」
「いえ、おおまかにですわ。お茶会までにはもう少し完全に出来ると思いますわ」
暗記は得意なのよ。
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