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呆れられてしまったわ

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「それで、結婚式の招待状が届いたんです」

 私はエレメンタル帝国に向かう馬車の中、ハデス様にルークお兄様が持ち帰った招待状についてお話していた。

 当然のことながら、お父様からも許可は出ていないから、マクラーレン王国に向かう予定はない。

 ただ、ルージュ様のことは嫌いじゃないから、お祝いは送ろうとは考えていた。

 エレメンタル帝国で、何か良いものがあればいいんだけど。

「なんていうか・・・自己中過ぎないか?その王太子殿下は」

「自己中というか、あの方は婚約者を溺愛されているので。全ての基準が婚約者のご令嬢なのです」

 ルージュ様さえ関わらなければ優秀らしいんだけど、とにかくルージュ様のことが好きすぎて周囲を巻き込みすぎるのよね。

 ルイス様とのことだって、ルイス様が望んだわけでもないのに、ルージュ様のそばに私を置きたいからって、婚約の話を勝手に進めようとしちゃうし。

「その婚約者がガツンと言ってやれば良いのに」

「言っちゃうと、監禁されそうな感じなんですよ。とにかく、式には参加しないのでお祝いだけ送ろうと思っているんです」

「まぁ、エレメンタル帝国はローゼン王国を挟んでマクラーレン王国と逆に位置しているからな」

 そうなのよね。
エレメンタル帝国って、ローゼン王国から馬車で三日進んだ先にある街で、船に乗って一週間ほどかかる。

 私、船に乗るの初めてで、実は今からすごく楽しみなの。

「私、船に乗るの初めてです」

「具合が悪くなったら、すぐに言ってくれ。それから乗船前に薬を飲んでおこう」

 ハデス様の話では、船に乗ると『酔う』のだそう。

 私はまだお酒を飲んだことはないけど、頭が痛くなって、視界からぐるぐるして、吐き気もするのだとか。

 それって、ずっと船に乗っている方は大変なのでは?

 大きな船だから、全員が全員酔うわけではないとおっしゃっていた。
 
 それに、慣れてくると最初具合が悪くなってもすぐに治るようになるのですって。

 ローゼン王国は内陸にあるから、海も見たことがないのよね。

 だからものすごく楽しみにしている私を見て、ハデス様は何度も念を押す。

「何度も言うが、船ではデッキには出ないように。海に落ちたら死んでしまうぞ。ジュエルがいくら気をつけていても人にぶつかられて落ちるかもしれない。乗船の時も俺と必ず手を繋いでいること。それから海の風はベタベタするから、髪や肌に悪い。見るなら船室の窓からにしなさい」

「分かっておりますわ」

 でも、楽しみなんだもの。
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