67 / 215
暴れ馬の主張
しおりを挟む
「駄目だよ、帰るなんて。何なら王宮で預かるからさ」
とんでもないことを言うのは、やっぱりこの方ね。
王太子殿下は、暴れ馬のように鼻息荒く部屋に入って来た。
後ろからルイス様が、情けなさそうな表情で入って来る。
あら?もうタイムリミットだったのね。
ラウンディ公爵家に帰すことすら嫌がる王太子殿下が、同じ空間にいて、湯浴みや着替えでもないのに、ルージュ様と離れて今まで我慢していただけでも十分よね。
「ダニエル様、ノックはどうされました?」
「叔母上!それどころではありません!ジュエル・リビエラ嬢がローゼン王国に戻ってしまったら、ルージュが寂しがるではありませんか!それに、どれだけ優秀でも彼女は伯爵令嬢。周囲に彼女を見下した態度で接する者もいるでしょう。彼女はそれに負けるような弱い人間ではないでしょうが、嫌な気持ちにさせることは勧められません!」
「・・・珍しいわね。貴方がルージュ様以外の人を気遣うなんて」
カミラ様が驚いたように呟いた。
私もびっくりだ。ルイス様の婚約者にと言われた時には、ルージュ様の友達候補として側に置きたいって言ってたのに。
私は、王太子殿下がルージュ様至上主義なことを別に嫌だとは思っていない。
ちょっとめんどくさい人だとは思うけど、ルージュ様は私にとっても大切なお友達。
だからそのルージュ様を、絶対に守り抜くだろう王太子殿下のことは、信用している。
それに、なんだかんだ言ってルージュ様もルイス様も、王太子殿下のこと好きみたいなんだもの。
あの二人が好きな人だから、憎めないってのもあるのよね。
私は、自分のことを卑下するつもりはない。
あの王太子妃教育を受けた五年間は、本当に大変だった。
それをこなして身に付けたことは、私の自信に繋がっている。
私がルイス様の婚約者をお断りするのは、ルイス様にも私にも問題があるというわけではなく、単に権力者と婚約したくないというだけだ。
私にいくら能力があろうとも、伯爵令嬢という地位だけはどうしようもない。
そして、そのどうしようもないことを突いて来る人間はいるものだ。
それの相手をすることが、嫌なだけだ。
確かに王太子殿下の言う通り、私はローゼン王国に戻って陰口を叩かれても、まぁ負けるつもりはない。
でも私が伯爵令嬢である限り、身分が上の人に言い返すことができないのも事実。
ウィリアム殿下の婚約者だった時は、言い返せる立場があったけど、今はそれがない。
だから、帰りたいけど帰りたくないのよね。
とんでもないことを言うのは、やっぱりこの方ね。
王太子殿下は、暴れ馬のように鼻息荒く部屋に入って来た。
後ろからルイス様が、情けなさそうな表情で入って来る。
あら?もうタイムリミットだったのね。
ラウンディ公爵家に帰すことすら嫌がる王太子殿下が、同じ空間にいて、湯浴みや着替えでもないのに、ルージュ様と離れて今まで我慢していただけでも十分よね。
「ダニエル様、ノックはどうされました?」
「叔母上!それどころではありません!ジュエル・リビエラ嬢がローゼン王国に戻ってしまったら、ルージュが寂しがるではありませんか!それに、どれだけ優秀でも彼女は伯爵令嬢。周囲に彼女を見下した態度で接する者もいるでしょう。彼女はそれに負けるような弱い人間ではないでしょうが、嫌な気持ちにさせることは勧められません!」
「・・・珍しいわね。貴方がルージュ様以外の人を気遣うなんて」
カミラ様が驚いたように呟いた。
私もびっくりだ。ルイス様の婚約者にと言われた時には、ルージュ様の友達候補として側に置きたいって言ってたのに。
私は、王太子殿下がルージュ様至上主義なことを別に嫌だとは思っていない。
ちょっとめんどくさい人だとは思うけど、ルージュ様は私にとっても大切なお友達。
だからそのルージュ様を、絶対に守り抜くだろう王太子殿下のことは、信用している。
それに、なんだかんだ言ってルージュ様もルイス様も、王太子殿下のこと好きみたいなんだもの。
あの二人が好きな人だから、憎めないってのもあるのよね。
私は、自分のことを卑下するつもりはない。
あの王太子妃教育を受けた五年間は、本当に大変だった。
それをこなして身に付けたことは、私の自信に繋がっている。
私がルイス様の婚約者をお断りするのは、ルイス様にも私にも問題があるというわけではなく、単に権力者と婚約したくないというだけだ。
私にいくら能力があろうとも、伯爵令嬢という地位だけはどうしようもない。
そして、そのどうしようもないことを突いて来る人間はいるものだ。
それの相手をすることが、嫌なだけだ。
確かに王太子殿下の言う通り、私はローゼン王国に戻って陰口を叩かれても、まぁ負けるつもりはない。
でも私が伯爵令嬢である限り、身分が上の人に言い返すことができないのも事実。
ウィリアム殿下の婚約者だった時は、言い返せる立場があったけど、今はそれがない。
だから、帰りたいけど帰りたくないのよね。
269
お気に入りに追加
4,664
あなたにおすすめの小説
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる