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セレスティーナ10歳⑦

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 私は、父様の言葉に従えなかった。
もしかしたら、王宮にリウスも父様も母様もいるのかもしれない。

 でも、それならエルムンド殿下は何も言わなかったの?

 宝物を取りに男爵家に戻って、誰もいなかったら怪しむことくらいわかるはず。

 親な予感がまとわりついて離れなかった。

 青褪めた私に、お母様が優しく声をかけてくれる。

「セレ、大丈夫?一応ご挨拶はしたし、帰りましょうか?」

「・・・いえ、大丈夫です。もしかしたらユリウス様がいらっしゃるかもしれませんから、もう少しだけいます」

 でも、ダンスなんてごめんだわ。
今だって、立っているのが精一杯だもの。

 皆様へのご挨拶はお父様にお任せして、お母様と壁際に下がる。

 その間、ずっと背中に視線を感じていた。

 エルム殿下は、私の知っているエルムンド殿下ではない。

 でも、あの目は同じよ。
私にまとわりついて離れない、イヤな目。

 王宮に戻った私は、適当に取って戻ったハンカチをエルムンド殿下に見せ、そして懇願した。

「父様たちが王宮に来ていると聞きました。それに婚・・・幼馴染が捕えられていると。会わせてください」

「僕のセレス。僕以外を見る必要はないと言っただろう?」

「お願いします。会わせて・・・」

 何度も何度も懇願し、何度も抱かれ、王宮という檻に囚われ続けて一ヶ月経った頃、殿下が公務でいない時間にジュリエット様が部屋を訪れた。

「サマラン公爵令嬢様・・・」

「あらあら。随分と痩せてしまって。ちゃんと食事を取らなきゃ駄目よ」

「リウスに・・・父様達に会わせて」

「・・・分かったわ。今ならエルムンド様もいないから。大人しくすること。約束できて?」

 あの時のジュリエット様は、私が絶望すれば諦めると思ったのか。
 それとも、エルムンド殿下が執着する私に実は嫉妬していたのか。

 今考えても分からないけど、どちらでもいいわ。

 ジュリエット様の真意が何にしろ、あの時の私は絶望した。

 ジュリエット様に連れて行かれたのは、王宮地下の牢だった。

 酷すぎる。
貴族なら、よほどの罪でない限りは貴族牢に入れられるのに。

 地下牢に入れられるのは、殺人や国家転覆などの重罪を犯した者だけ。

 淀んだ空気の地下を駆け足で進む。
ジュリエット様は、途中で足を止めていた。

 地下牢の一番奥、左の牢に両親はいた。

 父様と母様、コパー子爵であるおじ様は、多分毒なのだろう。口から血を流した状態で、息絶えた姿で。

 右の牢には、天井から吊られ、その身を全身血で赤黒く染めたがいた。



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