44 / 48
困惑《フィリップ視点》
しおりを挟む
気がついたらそこは、見知らぬ部屋の中だった。
ソファーに、ベッド、風呂やトイレもある。だが窓はなく、入口の扉も開かない。
いや、正確に言うと開くのだが、その扉の向こう側には鉄格子がはまっていた。
何故、王族である僕がこんなところに閉じ込められなければならないんだ?
誰かに尋ねようにも、隠密部隊の誰もこの部屋にはいない。
大体、僕は森の中にいたのではなかったか?一体、何がどうなっているんだ?
疑問を持っても、答えてくれる相手はいなくて、僕に出来ることは、食事をし、あとは眠ることくらいだった。
一体、何日経っただろうか。
それも分からなくなった頃、1人の少年が鉄格子の向こう側に現れた。
歳は僕とさほど変わらない、金髪に金の瞳をした少年。
「元気そうだね、フィリップ・モーリス王子。いや、元王子というべきかな」
「何を・・・言っている?僕は現在も王子だ」
「残念だけど、モーリス王国は改変の時を迎えた。国王陛下は崩御し、王妃殿下は離宮へとこもられることとなった」
コイツは何を言ってるんだ?
父上が・・・崩御した?
母上は、ここ数年はずっと部屋から出てこられなかったけど、それでも公務の時はお姿を見ることが出来た。
「父上が・・・父上が崩御されたとして、僕は王子には変わりないはずだ」
「王妃殿下は、君の継承権を剥奪したよ。他国の王太子の婚約者を攫おうとしたんだ。当然だよね?」
「他国の王太子の婚約者?」
「ルーナ・イザヴェリ公爵令嬢は僕の、ガラティア王国王太子ソル・ガラティアの婚約者だよ」
なん、だと?
だが、父上は何かお考えがあって、イザヴェリ公爵令嬢を拉致せよとおっしゃったのだ。
それなのに、どうして母上は僕の継承権を剥奪などと!
それに、父上が崩御など!何があったというんだ?
「こっ、ここはどこだ!出せっ!」
「出れるわけないでしょ。君はガラティア王国に不法入国した。仮にも王族だったんだから、それがどういうことかくらい分かるよね?」
「母上に会わせろ!母上が僕の継承権を剥奪などするわけがない!」
そうだ。母上が僕の継承権を剥奪するわけがない。コイツが嘘をついているに違いない。
そう確信し叫ぶ僕に、ソルと名乗ったガラティアの王太子は冷ややかな視線を向ける。
「君、本当に王族だったの?どれだけ自分が愚かな行動をしたのかすら分からないの?父親である国王が言ったから?その頭はお飾りなの?幼い子供ならいざ知らず、君11歳だよね?」
「なっ!?貴様!僕を愚弄するのか?」
「ハァ。さっき僕は言ったよね?ガラティア王国の王太子だと。もし仮に君が王族のままだとしても、一国の王太子に対して貴様などと、国際問題だとすらわからないの?」
大袈裟にため息を吐くと、王太子はそのまま立ち去ろうとする。
「まっ、待てっ!母上に、母上に会わせろ!ここから出せっ!」
『ねー、ソル。こんな馬鹿のせいでルーナは何度も辛い思いをしたの?』
突然、少女の声がした。
ソファーに、ベッド、風呂やトイレもある。だが窓はなく、入口の扉も開かない。
いや、正確に言うと開くのだが、その扉の向こう側には鉄格子がはまっていた。
何故、王族である僕がこんなところに閉じ込められなければならないんだ?
誰かに尋ねようにも、隠密部隊の誰もこの部屋にはいない。
大体、僕は森の中にいたのではなかったか?一体、何がどうなっているんだ?
疑問を持っても、答えてくれる相手はいなくて、僕に出来ることは、食事をし、あとは眠ることくらいだった。
一体、何日経っただろうか。
それも分からなくなった頃、1人の少年が鉄格子の向こう側に現れた。
歳は僕とさほど変わらない、金髪に金の瞳をした少年。
「元気そうだね、フィリップ・モーリス王子。いや、元王子というべきかな」
「何を・・・言っている?僕は現在も王子だ」
「残念だけど、モーリス王国は改変の時を迎えた。国王陛下は崩御し、王妃殿下は離宮へとこもられることとなった」
コイツは何を言ってるんだ?
父上が・・・崩御した?
母上は、ここ数年はずっと部屋から出てこられなかったけど、それでも公務の時はお姿を見ることが出来た。
「父上が・・・父上が崩御されたとして、僕は王子には変わりないはずだ」
「王妃殿下は、君の継承権を剥奪したよ。他国の王太子の婚約者を攫おうとしたんだ。当然だよね?」
「他国の王太子の婚約者?」
「ルーナ・イザヴェリ公爵令嬢は僕の、ガラティア王国王太子ソル・ガラティアの婚約者だよ」
なん、だと?
だが、父上は何かお考えがあって、イザヴェリ公爵令嬢を拉致せよとおっしゃったのだ。
それなのに、どうして母上は僕の継承権を剥奪などと!
それに、父上が崩御など!何があったというんだ?
「こっ、ここはどこだ!出せっ!」
「出れるわけないでしょ。君はガラティア王国に不法入国した。仮にも王族だったんだから、それがどういうことかくらい分かるよね?」
「母上に会わせろ!母上が僕の継承権を剥奪などするわけがない!」
そうだ。母上が僕の継承権を剥奪するわけがない。コイツが嘘をついているに違いない。
そう確信し叫ぶ僕に、ソルと名乗ったガラティアの王太子は冷ややかな視線を向ける。
「君、本当に王族だったの?どれだけ自分が愚かな行動をしたのかすら分からないの?父親である国王が言ったから?その頭はお飾りなの?幼い子供ならいざ知らず、君11歳だよね?」
「なっ!?貴様!僕を愚弄するのか?」
「ハァ。さっき僕は言ったよね?ガラティア王国の王太子だと。もし仮に君が王族のままだとしても、一国の王太子に対して貴様などと、国際問題だとすらわからないの?」
大袈裟にため息を吐くと、王太子はそのまま立ち去ろうとする。
「まっ、待てっ!母上に、母上に会わせろ!ここから出せっ!」
『ねー、ソル。こんな馬鹿のせいでルーナは何度も辛い思いをしたの?』
突然、少女の声がした。
22
お気に入りに追加
889
あなたにおすすめの小説
【完結】前世を思い出したら価値観も運命も変わりました
暁山 からす
恋愛
完結しました。
読んでいただいてありがとうございました。
ーーーーーーーーーーーー
公爵令嬢のマリッサにはピートという婚約者がいた。
マリッサは自身の容姿に自信がなくて、美男子であるピートに引目を感じてピートの言うことはなんでも受け入れてきた。
そして学園卒業間近になったある日、マリッサの親友の男爵令嬢アンナがピートの子供を宿したのでマリッサと結婚後にアンナを第二夫人に迎えるように言ってきて‥‥。
今までのマリッサならば、そんな馬鹿げた話も受け入れただろうけど、前世を思したマリッサは‥‥?
ーーーーーーーーーーーー
設定はゆるいです
ヨーロッパ風ファンタジーぽい世界
完結まで毎日更新
全13話
【完結】 いいえ、あなたを愛した私が悪いのです
冬馬亮
恋愛
それは親切な申し出のつもりだった。
あなたを本当に愛していたから。
叶わぬ恋を嘆くあなたたちを助けてあげられると、そう信じていたから。
でも、余計なことだったみたい。
だって、私は殺されてしまったのですもの。
分かってるわ、あなたを愛してしまった私が悪いの。
だから、二度目の人生では、私はあなたを愛したりはしない。
あなたはどうか、あの人と幸せになって ---
※ R-18 は保険です。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
前世を思い出したのでクッキーを焼きました。〔ざまぁ〕
ラララキヲ
恋愛
侯爵令嬢ルイーゼ・ロッチは第一王子ジャスティン・パルキアディオの婚約者だった。
しかしそれは義妹カミラがジャスティンと親しくなるまでの事。
カミラとジャスティンの仲が深まった事によりルイーゼの婚約は無くなった。
ショックからルイーゼは高熱を出して寝込んだ。
高熱に浮かされたルイーゼは夢を見る。
前世の夢を……
そして前世を思い出したルイーゼは暇になった時間でお菓子作りを始めた。前世で大好きだった味を楽しむ為に。
しかしそのクッキーすら義妹カミラは盗っていく。
「これはわたくしが作った物よ!」
そう言ってカミラはルイーゼの作ったクッキーを自分が作った物としてジャスティンに出した…………──
そして、ルイーゼは幸せになる。
〈※死人が出るのでR15に〉
〈※深く考えずに上辺だけサラッと読んでいただきたい話です(;^∀^)w〉
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げました。
※女性向けHOTランキング14位入り、ありがとうございます!!
あなたの事は記憶に御座いません
cyaru
恋愛
この婚約に意味ってあるんだろうか。
ロペ公爵家のグラシアナはいつも考えていた。
婚約者の王太子クリスティアンは幼馴染のオルタ侯爵家の令嬢イメルダを側に侍らせどちらが婚約者なのかよく判らない状況。
そんなある日、グラシアナはイメルダのちょっとした悪戯で負傷してしまう。
グラシアナは「このチャンス!貰った!」と・・・記憶喪失を装い逃げ切りを図る事にした。
のだが…王太子クリスティアンの様子がおかしい。
目覚め、記憶がないグラシアナに「こうなったのも全て私の責任だ。君の生涯、どんな時も私が隣で君を支え、いかなる声にも盾になると誓う」なんて言い出す。
そりゃ、元をただせば貴方がちゃんとしないからですけどね??
記憶喪失を貫き、距離を取って逃げ切りを図ろうとするのだが何故かクリスティアンが今までに見せた事のない態度で纏わりついてくるのだった・・・。
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★ニャンの日present♡ 5月18日投稿開始、完結は5月22日22時22分
★今回久しぶりの5日間という長丁場の為、ご理解お願いします(なんの?)
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる