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困惑《フィリップ視点》

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 気がついたらそこは、見知らぬ部屋の中だった。

 ソファーに、ベッド、風呂やトイレもある。だが窓はなく、入口の扉も開かない。
 いや、正確に言うと開くのだが、その扉の向こう側には鉄格子がはまっていた。

 何故、王族である僕がこんなところに閉じ込められなければならないんだ?
 誰かに尋ねようにも、隠密部隊の誰もこの部屋にはいない。

 大体、僕は森の中にいたのではなかったか?一体、何がどうなっているんだ?

 疑問を持っても、答えてくれる相手はいなくて、僕に出来ることは、食事をし、あとは眠ることくらいだった。

 一体、何日経っただろうか。
それも分からなくなった頃、1人の少年が鉄格子の向こう側に現れた。

 歳は僕とさほど変わらない、金髪に金の瞳をした少年。

「元気そうだね、フィリップ・モーリス王子。いや、元王子というべきかな」

「何を・・・言っている?僕は現在も王子だ」

「残念だけど、モーリス王国は改変の時を迎えた。国王陛下は崩御し、王妃殿下は離宮へとこもられることとなった」

 コイツは何を言ってるんだ?
父上が・・・崩御した?
母上は、ここ数年はずっと部屋から出てこられなかったけど、それでも公務の時はお姿を見ることが出来た。

「父上が・・・父上が崩御されたとして、僕は王子には変わりないはずだ」

「王妃殿下は、君の継承権を剥奪したよ。他国の王太子の婚約者を攫おうとしたんだ。当然だよね?」

「他国の王太子の婚約者?」

「ルーナ・イザヴェリ公爵令嬢は僕の、ガラティア王国王太子ソル・ガラティアの婚約者だよ」

 なん、だと?
だが、父上は何かお考えがあって、イザヴェリ公爵令嬢を拉致せよとおっしゃったのだ。

 それなのに、どうして母上は僕の継承権を剥奪などと!
 それに、父上が崩御など!何があったというんだ?

「こっ、ここはどこだ!出せっ!」

「出れるわけないでしょ。君はガラティア王国に不法入国した。仮にも王族だったんだから、それがどういうことかくらい分かるよね?」

「母上に会わせろ!母上が僕の継承権を剥奪などするわけがない!」

 そうだ。母上が僕の継承権を剥奪するわけがない。コイツが嘘をついているに違いない。

 そう確信し叫ぶ僕に、ソルと名乗ったガラティアの王太子は冷ややかな視線を向ける。

「君、本当に王族だったの?どれだけ自分が愚かな行動をしたのかすら分からないの?父親である国王が言ったから?その頭はお飾りなの?幼い子供ならいざ知らず、君11歳だよね?」

「なっ!?貴様!僕を愚弄するのか?」

「ハァ。さっき僕は言ったよね?ガラティア王国の王太子だと。もし仮に君が王族のままだとしても、一国の王太子に対して貴様などと、国際問題だとすらわからないの?」

 大袈裟にため息を吐くと、王太子はそのまま立ち去ろうとする。

「まっ、待てっ!母上に、母上に会わせろ!ここから出せっ!」

『ねー、ソル。こんな馬鹿のせいでルーナは何度も辛い思いをしたの?』

 突然、少女の声がした。





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