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第十話 正しい選択は……
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「……こうして王子様と王女様は、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
同日の夜。夕食を済ませた後、私は使わせてもらっている部屋に置かれたソファに腰を降ろしながら、絵本を読んでいた。
「えへへ、お姫様が幸せになってよかったねシーちゃん!」
「ええ、そうですねご主人様」
私の隣にちょこんと座るルナちゃんとシーちゃんは、互いに笑顔で頷き合う。ああ、癒されるわ。
「失礼します。おや、お楽しみの最中でしたか」
「あ、お兄様! おかえりなさい!」
「おかえりなさい、ウィルフレッド様。お仕事お疲れ様でした」
可愛い二人に癒されていると、ウィルフレッド様が使用人の女性と共に、静かに部屋に入ってきた。
朝早くから、当主の仕事をするために出かけていたウィルフレッド様だが、全く疲れている素振りがないわ。
「こんな遅くに帰ってくるなんて、随分と沢山お仕事されていたんですね」
「ええ。今日は古くから付き合いのある家に行って、茶会をした後に、縁のある騎士団に、剣術の指南をしに行きました。彼らの相手をするのは、この体では少々疲れますがね」
「そんなことをして、大丈夫なんですか? 朝もあんなに早かったのに……」
「昔から鍛えているので、この程度平気ですよ」
口ではそう言っても、きっと疲れは溜まっているはずだ。そう思った私は、有無も言わせずに回復魔法を使い、ウィルフレッド様の体を癒した。
回復魔法の本来の使い方は、怪我や病気の治療だけど、ある程度の疲れを取る効果もある。
「ふう。私の回復魔法では大した効果は無いと思いますが……少しは力になれてたらと嬉しいです」
「ありがとうございます、エレナ殿。おかげで体が軽くなりました。これなら明日以降の仕事も問題無さそうです」
「明日もお仕事なんですか?」
「ええ、もちろん。予定は詰めに詰めてあります。しかし、エレナ殿のおかげで、あと三日は寝ずに働けそうですよ」
「お兄様、ちゃんと寝ないとダメなんだよ!」
ほっぺをプクーっと膨らますルナちゃんの頭を撫でながら、ウィルフレッド様は困った様に笑った。
笑った顔も可愛らしいけど、拗ねた顔も可愛いだなんて……可愛さに隙が無さすぎる。
「今のは物の例えだから大丈夫だよ、ルナ」
「むぅ……お兄様、すぐ頑張り過ぎちゃうから信じられないもん!」
「これは困った。どうすれば信じてくれるかな?」
ウィルフレッド様の優しい問いを聞いたルナちゃんは、一瞬にして表情を笑顔で一杯にしながら、目をキラキラと輝かせた。
「ルナ達と遊んでくれれば信じる!」
「それならお安い御用だ。何をするかい?」
「うーん……おままごと!」
「ああ、わかった」
「やったー! それじゃあオモチャを持ってくるから、待っててね! シーちゃん、行こっ!」
大喜びのルナちゃんと、それに必死についていくシーちゃんを見送った私達は、思わずクスクスと笑いながら、互いに顔を見合わせた。
「本当に可愛らしい子達ですね」
「ええ、本当に。当主の仕事が忙しくて、あまり構ってあげられてないのが、本当に心苦しいです。ですが、彼女達のあの笑顔を守るためにも、明日からの仕事も頑張らなければならないのです」
「その、頑張るのは素晴らしいことだと思いますけど……」
「体は大丈夫なのか、そうお聞きになりたいのでしょう?」
言い当てられてしまった私は、特に隠したりせずに頷いて見せた。
「沢山仕事をしてる上に、朝はあんなに早くから体を動かして……心配です」
「ご心配には及びません。私は当主として、そして一人の騎士として、大切なものを守っているだけにすぎません」
「…………」
真っ直ぐと私に言葉を紡ぐウィルフレッド様の目は、強い意志に満ちていた。私が何を言っても、己の意志を曲げることは無い……そんな強さが伝わってくる。
「わかりました。部外者の分際で、余計なことを言ってしまいました」
「いえ、とんでもありません。他人に哀れに思われることはあっても、純粋な心配をしてくれるのは、家族や使用人しかいないので、とても嬉しく思いました」
「ウィルフレッド様……」
「持ってきたよ~!」
しんみりとした空気を変えるように、ルナちゃんの元気な声が部屋の中に響き渡る。
これまでの話を聞いてる限りだと……ウィルフレッド様は、心身ともに、無理をしているのは明らかだ。
そんな状態だとわかっていて、私は……邪魔になるだろうからと決めつけて、去っていいのだろうか? 個人的には、ここに残ってウィルフレッド様を支えるお手伝いをしたい。
でも、私がいたら余計な気を使わせ、更に疲れさせてしまうかもしれない。
母さん……私、どうすればいいんだろう……?
****
結局どうすれば正しい選択なのかわからないまま、私はエクウェス家で三日の時を過ごした。
この三日間の間、私はウィルフレッド様に毎日回復魔法を使っているが、やはり動かなくなった体は元に戻っていない。私の回復魔法のおかげで、仕事の疲れが取れていると言ってくれてるのが、せめてもの救いだ。
とはいえ、それに満足するわけにもいかない。私としては、疲れを取るのも大事だけど、もう一度元気に動き回ってほしい。
「エレナ殿、ご気分が優れませんか?」
「え?」
「先程から、ぼんやりとしておられるので」
「エレナお姉ちゃん、具合悪いの?」
「いえ、大丈夫です。少し考え事をしていただけです」
今朝はウィルフレッド様とルナちゃんと揃って食事をしているのに、余計な心配をかけてどうするのよ私。もっとしっかりしないとね。
「そういえば、今日はお仕事はお休みなんですか?」
「いえ。午前の仕事が少ないですが、午後からはいつも通りの量ですね。なので、久しぶりにこうしてゆっくり朝食が食べれてるのです」
ウィルフレッド様は、紅茶をゆっくりと口に含んでから、ふぅと小さく息を漏らした。
「しかし、あまり悠長には出来ません。今日は来客が来るので、その対応をしないとなりません」
「来客?」
「父の古い知人が帰国するので、その挨拶に来るそうです。私がまだ幼い頃に会ったきりですので、本当に久しぶりに会いますね」
幼い頃の知り合いか……もし私がそんな人と会うなら、楽しみに思って顔にも出ちゃうと思うけど、ウィルフレッド様はなんだか少し嫌そうな雰囲気がある。
「あまり無理はしないでくださいね」
「ええ、ありがとうございます。では私は部屋に戻って準備をしなければいけないので、お先に失礼します」
朝食を綺麗に完食したウィルフレッド様は、使用人と一緒に食堂から去っていった。その後ろ姿を、ルナちゃんが悲しそうな目で見つめていたのが、とても印象に残った――
同日の夜。夕食を済ませた後、私は使わせてもらっている部屋に置かれたソファに腰を降ろしながら、絵本を読んでいた。
「えへへ、お姫様が幸せになってよかったねシーちゃん!」
「ええ、そうですねご主人様」
私の隣にちょこんと座るルナちゃんとシーちゃんは、互いに笑顔で頷き合う。ああ、癒されるわ。
「失礼します。おや、お楽しみの最中でしたか」
「あ、お兄様! おかえりなさい!」
「おかえりなさい、ウィルフレッド様。お仕事お疲れ様でした」
可愛い二人に癒されていると、ウィルフレッド様が使用人の女性と共に、静かに部屋に入ってきた。
朝早くから、当主の仕事をするために出かけていたウィルフレッド様だが、全く疲れている素振りがないわ。
「こんな遅くに帰ってくるなんて、随分と沢山お仕事されていたんですね」
「ええ。今日は古くから付き合いのある家に行って、茶会をした後に、縁のある騎士団に、剣術の指南をしに行きました。彼らの相手をするのは、この体では少々疲れますがね」
「そんなことをして、大丈夫なんですか? 朝もあんなに早かったのに……」
「昔から鍛えているので、この程度平気ですよ」
口ではそう言っても、きっと疲れは溜まっているはずだ。そう思った私は、有無も言わせずに回復魔法を使い、ウィルフレッド様の体を癒した。
回復魔法の本来の使い方は、怪我や病気の治療だけど、ある程度の疲れを取る効果もある。
「ふう。私の回復魔法では大した効果は無いと思いますが……少しは力になれてたらと嬉しいです」
「ありがとうございます、エレナ殿。おかげで体が軽くなりました。これなら明日以降の仕事も問題無さそうです」
「明日もお仕事なんですか?」
「ええ、もちろん。予定は詰めに詰めてあります。しかし、エレナ殿のおかげで、あと三日は寝ずに働けそうですよ」
「お兄様、ちゃんと寝ないとダメなんだよ!」
ほっぺをプクーっと膨らますルナちゃんの頭を撫でながら、ウィルフレッド様は困った様に笑った。
笑った顔も可愛らしいけど、拗ねた顔も可愛いだなんて……可愛さに隙が無さすぎる。
「今のは物の例えだから大丈夫だよ、ルナ」
「むぅ……お兄様、すぐ頑張り過ぎちゃうから信じられないもん!」
「これは困った。どうすれば信じてくれるかな?」
ウィルフレッド様の優しい問いを聞いたルナちゃんは、一瞬にして表情を笑顔で一杯にしながら、目をキラキラと輝かせた。
「ルナ達と遊んでくれれば信じる!」
「それならお安い御用だ。何をするかい?」
「うーん……おままごと!」
「ああ、わかった」
「やったー! それじゃあオモチャを持ってくるから、待っててね! シーちゃん、行こっ!」
大喜びのルナちゃんと、それに必死についていくシーちゃんを見送った私達は、思わずクスクスと笑いながら、互いに顔を見合わせた。
「本当に可愛らしい子達ですね」
「ええ、本当に。当主の仕事が忙しくて、あまり構ってあげられてないのが、本当に心苦しいです。ですが、彼女達のあの笑顔を守るためにも、明日からの仕事も頑張らなければならないのです」
「その、頑張るのは素晴らしいことだと思いますけど……」
「体は大丈夫なのか、そうお聞きになりたいのでしょう?」
言い当てられてしまった私は、特に隠したりせずに頷いて見せた。
「沢山仕事をしてる上に、朝はあんなに早くから体を動かして……心配です」
「ご心配には及びません。私は当主として、そして一人の騎士として、大切なものを守っているだけにすぎません」
「…………」
真っ直ぐと私に言葉を紡ぐウィルフレッド様の目は、強い意志に満ちていた。私が何を言っても、己の意志を曲げることは無い……そんな強さが伝わってくる。
「わかりました。部外者の分際で、余計なことを言ってしまいました」
「いえ、とんでもありません。他人に哀れに思われることはあっても、純粋な心配をしてくれるのは、家族や使用人しかいないので、とても嬉しく思いました」
「ウィルフレッド様……」
「持ってきたよ~!」
しんみりとした空気を変えるように、ルナちゃんの元気な声が部屋の中に響き渡る。
これまでの話を聞いてる限りだと……ウィルフレッド様は、心身ともに、無理をしているのは明らかだ。
そんな状態だとわかっていて、私は……邪魔になるだろうからと決めつけて、去っていいのだろうか? 個人的には、ここに残ってウィルフレッド様を支えるお手伝いをしたい。
でも、私がいたら余計な気を使わせ、更に疲れさせてしまうかもしれない。
母さん……私、どうすればいいんだろう……?
****
結局どうすれば正しい選択なのかわからないまま、私はエクウェス家で三日の時を過ごした。
この三日間の間、私はウィルフレッド様に毎日回復魔法を使っているが、やはり動かなくなった体は元に戻っていない。私の回復魔法のおかげで、仕事の疲れが取れていると言ってくれてるのが、せめてもの救いだ。
とはいえ、それに満足するわけにもいかない。私としては、疲れを取るのも大事だけど、もう一度元気に動き回ってほしい。
「エレナ殿、ご気分が優れませんか?」
「え?」
「先程から、ぼんやりとしておられるので」
「エレナお姉ちゃん、具合悪いの?」
「いえ、大丈夫です。少し考え事をしていただけです」
今朝はウィルフレッド様とルナちゃんと揃って食事をしているのに、余計な心配をかけてどうするのよ私。もっとしっかりしないとね。
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「いえ。午前の仕事が少ないですが、午後からはいつも通りの量ですね。なので、久しぶりにこうしてゆっくり朝食が食べれてるのです」
ウィルフレッド様は、紅茶をゆっくりと口に含んでから、ふぅと小さく息を漏らした。
「しかし、あまり悠長には出来ません。今日は来客が来るので、その対応をしないとなりません」
「来客?」
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「あまり無理はしないでくださいね」
「ええ、ありがとうございます。では私は部屋に戻って準備をしなければいけないので、お先に失礼します」
朝食を綺麗に完食したウィルフレッド様は、使用人と一緒に食堂から去っていった。その後ろ姿を、ルナちゃんが悲しそうな目で見つめていたのが、とても印象に残った――
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