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第四十五話 最悪な再会
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コロシアムにやってきた私達は、係員の人の案内の元、控室へとやって来ました。道中で観客席や、実際に戦う広場を見たのですが、その規模の大きさにただ驚く事しか出来ませんでした……。
「うん、とてもおいしかったね。私も食べた事がないものが多くて、有意義な昼食だった」
「それならよかったです!」
「さて、そろそろ試合が始まる頃か……」
「私達はエキシビションだから、しばらく出番は無い。そこの魔法石で、試合の模様を見ていようか」
クリス様は、控室の隅っこに置いてあった大きな石を指差しました。その石は、以前見た訓練場にあったものと、同じものみたいです。
その石には、丁度先ほど始まった試合が流れています。二対二で互いに魔法を撃ちあって勝負しているようです。
わわっ……炎と炎がぶつかって凄い爆発音です! その場にいないのに、迫力があり過ぎて目の前で起こっているかのよう……熱だって感じないのに、体が熱くなってきました!
「互いに良い魔法だね」
「だが直線的すぎるな……いや、違う。これは囮か」
爆発によって発生した煙に紛れるように、尖った岩が地面から大量に突き出てきました。その岩は対戦相手に当たり……そのまま試合が止められました。
あ、あんなのに当たったらって思うとゾッとします。それに、これからジーク様とクリス様がこんな場所に行くって思うと……怖くて仕方がありません。
「ふふ、こんな優秀な魔法使いがいるなら、この国の未来も安泰だね」
「そうか……? いくら優秀な魔法使いがいても、将来はあれが王になると思うと……な」
「それは否定できないね」
「お、お二人共余裕ですね……私が出る側じゃないのに、見てるだけで震えて来ちゃいます」
今でも小刻みに震えている私とは違い、お二人共余裕たっぷりと言いますか……いつもと全然変わりません。むしろ、いつもよりリラックスしてるかもしれません。
「戦いでは、冷静さを欠いた方が負けるからね。こうしていつも通りにしてる方がいいのさ」
「そういうものなんですね……戦った事がない私には、よくわかりませんけど……」
「そんなの、無い方がいい。平和が一番だ」
「その通りだ。おや、次の試合が始まるみたいだ」
再び石に視線を向けると、今度は剣を主体とした試合展開となっていました。剣がぶつかり合う金属音や、合間に挟まる魔法の応酬……見れば見るほど、恐ろしくて震えが増していきます。
こ、このまま試合を見ていたら、お二人が出場する前に倒れてしまいそうです……そうだ! こういう時はお二人が話しているところを見ていましょう!
「剣の振る速度は早いが、あまり力が入っていないように見えるな」
「私ならさっさと魔法で距離を取るが、ジークならどうする?」
「少し相手の攻撃に合わせてから、ペースを乱すように緩急をつけて、俺のペースにするな」
「それなら最初からすればいいのではないか?」
「言い方はあれだが、相手に調子に乗らせてからの方が、崩しやすい」
わ、私には見てても全然わかりませんが、お二人には見てるだけでそういうのがわかるものなんですね……やっぱりお二人は凄い人です!
「そうだ。まだ挨拶に行ってなかったし、今のうちに行っておこうか」
「挨拶って、どこに行くんですか?」
「アンドレの所さ」
……せっかく真剣に試合を見ているお二人を見ていて、ほんのちょっぴり緊張感がほぐれていたのに、アンドレ様の名前を聞いただけで、また緊張してきちゃいました……。
「ど、どうしてアンドレ様の所に?」
「一種の礼儀という奴かな。あれでも一国の王子だから、後ほど面倒な事にならないようにしておいて損はないだろう?」
「まあそうかもしれませんが……」
「大丈夫だ。なにがあっても俺が守る」
「ひゃん……」
ジーク様に手をとられた事で、変な声が出ちゃいました。おかしいな……ジーク様と手を繋ぐのは、これが初めてじゃないんですけど……。
「もし嫌なら私とジークだけで行くが?」
「嫌じゃないです! 離れたくないですっ!」
「わ、わかったから腕に抱きつくな! 離れろ! ちゃんとずっと一緒にいるから!」
「ふふっ。戯れているところに申し訳ないが、そろそろ向かうよ」
「あ、はい!」
……あまり気乗りはしませんが、挨拶をするだけなら、アンドレ様と喧嘩になる事は無さそうですが、相手はアンドレ様……油断はしない方が良さそうですね。
「よし、行こうか」
私はお二人と共に、ゴミ一つ落ちてないピカピカの廊下を歩いて、アンドレ様の控え室の前へと向かいました。
うぅ、お二人が一緒にいるとはいえ、自分からアンドレ様にお会いするなんて、緊張してしまいます……お腹が痛い……。
「失礼します。クリスです」
「あ? クリスだぁ?」
投げやりという言葉がこれほど合うものはないんじゃないかと思えるくらい、とても適当な声が中から聞こえてきました。
もしかして、凄く機嫌が悪いのかもしれません……入った瞬間に攻撃とかされたらどうしよう!? ここは一般人の目が無いから、蛮行に出てもおかしくありません!
「わざわざオレ様の所に来るなんて、何かの嫌がらせか? てめえらのツラを見てるだけで吐き気がすんだよ」
あ、相変わらず人の目が無いと、態度が思い切り変わる人ですね。さっきまでの物腰が柔らかかった人と同一人物と思えないくらいです。
「試合の前に、ご挨拶に伺おうと思いまして」
「……ふん、その心意気に免じて通してやろう」
「ありがとうございます」
私を囲うように、前と後ろにお二人がいる形で部屋の中に入ると、そこには偉そうにふんぞり返るアンドレ様と、彼を守る兵士様が数人。そして先程も一緒にいた女性と、見知った方が一人いました。
「ココ様!? え、まさかこんな所で、こんなに早く再会できるなんて!」
「……し、シエルさん……!」
思っていた以上に速い再会に喜ぶ私とは違い、ココ様は気まずそうに視線を逸らしたまま、私と目を合わせる事はありませんでした。
え、えっと……あれ? 私、なにかココ様を怒らせるような事をしちゃったんでしょうか……? どうしよう、もしそうなら謝らないと! でも、全然心当たりがありません……。
「おいそこの小汚い女、あんまりココに手を出すんじゃねえ。今日の試合に響いたらどうする?」
「ど、どういう事ですか?」
「んだよ、そんなのも知らねえ馬鹿かよ。試合は二人一組……つまり、オレ様の相方はそいつに決まったのさ!」
相方……決まった……? 何を言っているのか、全然理解できません。だって……だって! 私の事を心配してくれていて、私が彼らのお世話になっていると知っていて……なのに、どうして!?
「うん、とてもおいしかったね。私も食べた事がないものが多くて、有意義な昼食だった」
「それならよかったです!」
「さて、そろそろ試合が始まる頃か……」
「私達はエキシビションだから、しばらく出番は無い。そこの魔法石で、試合の模様を見ていようか」
クリス様は、控室の隅っこに置いてあった大きな石を指差しました。その石は、以前見た訓練場にあったものと、同じものみたいです。
その石には、丁度先ほど始まった試合が流れています。二対二で互いに魔法を撃ちあって勝負しているようです。
わわっ……炎と炎がぶつかって凄い爆発音です! その場にいないのに、迫力があり過ぎて目の前で起こっているかのよう……熱だって感じないのに、体が熱くなってきました!
「互いに良い魔法だね」
「だが直線的すぎるな……いや、違う。これは囮か」
爆発によって発生した煙に紛れるように、尖った岩が地面から大量に突き出てきました。その岩は対戦相手に当たり……そのまま試合が止められました。
あ、あんなのに当たったらって思うとゾッとします。それに、これからジーク様とクリス様がこんな場所に行くって思うと……怖くて仕方がありません。
「ふふ、こんな優秀な魔法使いがいるなら、この国の未来も安泰だね」
「そうか……? いくら優秀な魔法使いがいても、将来はあれが王になると思うと……な」
「それは否定できないね」
「お、お二人共余裕ですね……私が出る側じゃないのに、見てるだけで震えて来ちゃいます」
今でも小刻みに震えている私とは違い、お二人共余裕たっぷりと言いますか……いつもと全然変わりません。むしろ、いつもよりリラックスしてるかもしれません。
「戦いでは、冷静さを欠いた方が負けるからね。こうしていつも通りにしてる方がいいのさ」
「そういうものなんですね……戦った事がない私には、よくわかりませんけど……」
「そんなの、無い方がいい。平和が一番だ」
「その通りだ。おや、次の試合が始まるみたいだ」
再び石に視線を向けると、今度は剣を主体とした試合展開となっていました。剣がぶつかり合う金属音や、合間に挟まる魔法の応酬……見れば見るほど、恐ろしくて震えが増していきます。
こ、このまま試合を見ていたら、お二人が出場する前に倒れてしまいそうです……そうだ! こういう時はお二人が話しているところを見ていましょう!
「剣の振る速度は早いが、あまり力が入っていないように見えるな」
「私ならさっさと魔法で距離を取るが、ジークならどうする?」
「少し相手の攻撃に合わせてから、ペースを乱すように緩急をつけて、俺のペースにするな」
「それなら最初からすればいいのではないか?」
「言い方はあれだが、相手に調子に乗らせてからの方が、崩しやすい」
わ、私には見てても全然わかりませんが、お二人には見てるだけでそういうのがわかるものなんですね……やっぱりお二人は凄い人です!
「そうだ。まだ挨拶に行ってなかったし、今のうちに行っておこうか」
「挨拶って、どこに行くんですか?」
「アンドレの所さ」
……せっかく真剣に試合を見ているお二人を見ていて、ほんのちょっぴり緊張感がほぐれていたのに、アンドレ様の名前を聞いただけで、また緊張してきちゃいました……。
「ど、どうしてアンドレ様の所に?」
「一種の礼儀という奴かな。あれでも一国の王子だから、後ほど面倒な事にならないようにしておいて損はないだろう?」
「まあそうかもしれませんが……」
「大丈夫だ。なにがあっても俺が守る」
「ひゃん……」
ジーク様に手をとられた事で、変な声が出ちゃいました。おかしいな……ジーク様と手を繋ぐのは、これが初めてじゃないんですけど……。
「もし嫌なら私とジークだけで行くが?」
「嫌じゃないです! 離れたくないですっ!」
「わ、わかったから腕に抱きつくな! 離れろ! ちゃんとずっと一緒にいるから!」
「ふふっ。戯れているところに申し訳ないが、そろそろ向かうよ」
「あ、はい!」
……あまり気乗りはしませんが、挨拶をするだけなら、アンドレ様と喧嘩になる事は無さそうですが、相手はアンドレ様……油断はしない方が良さそうですね。
「よし、行こうか」
私はお二人と共に、ゴミ一つ落ちてないピカピカの廊下を歩いて、アンドレ様の控え室の前へと向かいました。
うぅ、お二人が一緒にいるとはいえ、自分からアンドレ様にお会いするなんて、緊張してしまいます……お腹が痛い……。
「失礼します。クリスです」
「あ? クリスだぁ?」
投げやりという言葉がこれほど合うものはないんじゃないかと思えるくらい、とても適当な声が中から聞こえてきました。
もしかして、凄く機嫌が悪いのかもしれません……入った瞬間に攻撃とかされたらどうしよう!? ここは一般人の目が無いから、蛮行に出てもおかしくありません!
「わざわざオレ様の所に来るなんて、何かの嫌がらせか? てめえらのツラを見てるだけで吐き気がすんだよ」
あ、相変わらず人の目が無いと、態度が思い切り変わる人ですね。さっきまでの物腰が柔らかかった人と同一人物と思えないくらいです。
「試合の前に、ご挨拶に伺おうと思いまして」
「……ふん、その心意気に免じて通してやろう」
「ありがとうございます」
私を囲うように、前と後ろにお二人がいる形で部屋の中に入ると、そこには偉そうにふんぞり返るアンドレ様と、彼を守る兵士様が数人。そして先程も一緒にいた女性と、見知った方が一人いました。
「ココ様!? え、まさかこんな所で、こんなに早く再会できるなんて!」
「……し、シエルさん……!」
思っていた以上に速い再会に喜ぶ私とは違い、ココ様は気まずそうに視線を逸らしたまま、私と目を合わせる事はありませんでした。
え、えっと……あれ? 私、なにかココ様を怒らせるような事をしちゃったんでしょうか……? どうしよう、もしそうなら謝らないと! でも、全然心当たりがありません……。
「おいそこの小汚い女、あんまりココに手を出すんじゃねえ。今日の試合に響いたらどうする?」
「ど、どういう事ですか?」
「んだよ、そんなのも知らねえ馬鹿かよ。試合は二人一組……つまり、オレ様の相方はそいつに決まったのさ!」
相方……決まった……? 何を言っているのか、全然理解できません。だって……だって! 私の事を心配してくれていて、私が彼らのお世話になっていると知っていて……なのに、どうして!?
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