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第十四話 恥を知りなさい!
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「このっ……! てめえ、なにしやがる!」
「いきなりビンタだなんて、いい度胸してるじゃねえか!」
「ウー……ガウガウ!! ウー!!」
足元で、私を守ろうと吠えてくれているモコですが、今の私には、それを叱るほど、心に余裕はありませんでした。
今、心にあるのは……怒りだけですから。
「いい加減にしなさい! あなた達、カイン様がどれだけ頑張っているのか知っていますの!? 毎日遅くまで騎士団の仕事をし、訓練だって指示を出すだけではなく、一人一人と向き合って訓練する! それがどれだけ体力を消費するか! それなのにあなた達は、見た目や血といった、目で見たものでしか他人を判断していない! 本当に浅はかで愚かですわ……恥を知りなさい!!」
「こいつ、何様のつもりだ!」
私を威嚇するように、彼らは物凄い形相で睨みつけてきますが、そんなので怯む私ではありませんわ。
「名乗る名などありません。とにかく、あなた達のような人間には、カイン様を悪く言う資格はありません。わかったら……二度とそのような口をきかないように。二度とですわ!」
「舐めやがって……!」
三人程いる兵士の一人が、私に掴みかかろうとしてきましたが、私は一切微動だにせずに仁王立ちをします。だって、ここで引いたらさっきの言葉の重みが無くなってしまいますもの!
「君達、何をしているんだ?」
「カイン様!」
まさに完璧なタイミングで間に割って入ったカイン様は、いつもよりも低い声で彼らに問い詰めます。お顔は私の所からでは見えませんが、見えなくて正解かもしれません。
「隊長、こいつが急に来て、俺達にたてついたんですよ!」
「……お前達、昼食抜きで城下町を二十周」
「はぁ!? この女にはお咎めなしっすか!? 自分達は被害者っすよ!?」
「民間人に手を出すような行為など、言語道断だ。マシェリーには俺から話をする。いいから行ってこい」
「ちっ……バケモノが……」
カイン様がそう仰ると、彼らはわざとらしく舌打ちをしてから、その場を後にしました。
最初から最後まであの態度……仮に私にするのなら理解できますが、相手は上官のカイン様ですのよ? こんな態度を取って許されるなんて、意味がわかりませんわ。
「まさかマシェリーが来るとは、思っても無かったよ。それと、俺のために怒ってくれてありがとう」
「怒られる事はあっても、礼を言われる資格なんて……私、頭に血が上って……その……」
「気にしなくていい。全く、民間人に手を出そうとするなんて……許してほしい」
「ええ、私もこれ以上言うつもりはございませんわ」
本当はもっとお説教をして、カイン様に直接謝罪をさせたいですが、ご本人がこう仰ってる以上、私が口出しするべきではありませんわね。
「そうだ、これを届けに参りましたの。お弁当、忘れていったでしょう?」
「わざわざ届けてくれてありがとう。いつも騎士団の隊長室で食べてるんだが……良かったら一緒にどうだ?」
「そうですね。ではご相伴にあずかりますわ。モコも食べるよね?」
「ワンッ」
「では行こうか」
カイン様の案内の下、騎士団の隊長室へとやって来た私は、持ってきたお弁当を広げました。
私の気のせいかもしれませんが、少し量が多くありませんか? カイン様って、あまり食べない印象を持っていたので、少々意外ですわ。
「マシェリー、この野菜はとても体に良いんだ。是非食べてほしい」
「まあ、そうですのね。もぐもぐ……う、苦い……」
「体に良いものは、そういうのが多いから仕方ないさ。ほら、この肉はうまいから口直しをするといい」
「口の中でホロホロと溶けてしまいましたわ! って……あの、カイン様もちゃんと食べてくださいませ。あと、自分で食べられるので……」
さっきから、カイン様は私に勧めるばかりで、全然食べておりません。それどころか、私の口元に料理を運んでくださって……正直恥ずかしいですわ。
「別に俺の事は気にしなくていい。マシェリーにはたくさん食べてもらって、丈夫になってほしいんだ」
「その気持ちは嬉しいですが、午後も訓練があるのでしょう? 食べて体力をつけないといけませんわ」
「それはそうだけど……俺はマシェリーの方が重要だ」
「私だってカイン様の方が重要です」
互いに一歩も譲らずに睨み合っていましたが、完全に不毛な争いだと気づいた私達は、それぞれ食事を再開しました。
なんだか、モコの視線が冷たいような気がするのは、私の気のせいでしょうか?
「そういえば、彼らとは何を言い争っていたんだ? 俺が見た時は、君がビンタをして叫んでいるところからだったんだけど」
「彼らがカイン様の陰口を言っていたので、つい頭に血が上ってしまったんです。元王族とあろう人間が、あんな事をしてしまうだなんて……」
自分の行いを恥じていると、カイン様が私の隣に立ち、そのまま抱きしめてきました。
え、えっと……急展開過ぎて、頭がついていけませんわ。カイン様は本当に唐突にこういう事をされるから、心臓に悪いです!
「ど、どうかされましたか? もしかして調子が悪いんでしょうか!?」
「なんていうか、あんなに庇ってもらった事がなくて……戸惑ってるんだけど、凄く嬉しくもあって……だから、何度でも言うよ。ありがとう」
私の事を強く抱きしめるカイン様。よほど嬉しかったのでしょうか……私にはよくわかりませんが、背中をさすって元気にしてあげましょう。
「でも……暴力を振るう姿なんて、見られたくありませんでしたわ」
「何を言っている。俺にはとても凛々しく、美しく見えたよ」
きゅ、急に美しいだなんて……そんな事を言われたら、照れちゃいますわ。でも、褒められた内容が、ただの暴力ですからね……なんとも複雑な心境です。
「とはいえ、あんまり彼らを刺激するような事を言っては駄目だよ。俺は慣れてるし、なにがあっても対応できるけど、君は荒事には慣れていないだろう?」
「そうですわね。今後は気を付けますわ」
気を付けると言ったものの、また近くでカイン様の陰口を叩く輩がいたら、口を挟みにいってしまいそうですわ。ちゃんと自制をしませんとね。
「いきなりビンタだなんて、いい度胸してるじゃねえか!」
「ウー……ガウガウ!! ウー!!」
足元で、私を守ろうと吠えてくれているモコですが、今の私には、それを叱るほど、心に余裕はありませんでした。
今、心にあるのは……怒りだけですから。
「いい加減にしなさい! あなた達、カイン様がどれだけ頑張っているのか知っていますの!? 毎日遅くまで騎士団の仕事をし、訓練だって指示を出すだけではなく、一人一人と向き合って訓練する! それがどれだけ体力を消費するか! それなのにあなた達は、見た目や血といった、目で見たものでしか他人を判断していない! 本当に浅はかで愚かですわ……恥を知りなさい!!」
「こいつ、何様のつもりだ!」
私を威嚇するように、彼らは物凄い形相で睨みつけてきますが、そんなので怯む私ではありませんわ。
「名乗る名などありません。とにかく、あなた達のような人間には、カイン様を悪く言う資格はありません。わかったら……二度とそのような口をきかないように。二度とですわ!」
「舐めやがって……!」
三人程いる兵士の一人が、私に掴みかかろうとしてきましたが、私は一切微動だにせずに仁王立ちをします。だって、ここで引いたらさっきの言葉の重みが無くなってしまいますもの!
「君達、何をしているんだ?」
「カイン様!」
まさに完璧なタイミングで間に割って入ったカイン様は、いつもよりも低い声で彼らに問い詰めます。お顔は私の所からでは見えませんが、見えなくて正解かもしれません。
「隊長、こいつが急に来て、俺達にたてついたんですよ!」
「……お前達、昼食抜きで城下町を二十周」
「はぁ!? この女にはお咎めなしっすか!? 自分達は被害者っすよ!?」
「民間人に手を出すような行為など、言語道断だ。マシェリーには俺から話をする。いいから行ってこい」
「ちっ……バケモノが……」
カイン様がそう仰ると、彼らはわざとらしく舌打ちをしてから、その場を後にしました。
最初から最後まであの態度……仮に私にするのなら理解できますが、相手は上官のカイン様ですのよ? こんな態度を取って許されるなんて、意味がわかりませんわ。
「まさかマシェリーが来るとは、思っても無かったよ。それと、俺のために怒ってくれてありがとう」
「怒られる事はあっても、礼を言われる資格なんて……私、頭に血が上って……その……」
「気にしなくていい。全く、民間人に手を出そうとするなんて……許してほしい」
「ええ、私もこれ以上言うつもりはございませんわ」
本当はもっとお説教をして、カイン様に直接謝罪をさせたいですが、ご本人がこう仰ってる以上、私が口出しするべきではありませんわね。
「そうだ、これを届けに参りましたの。お弁当、忘れていったでしょう?」
「わざわざ届けてくれてありがとう。いつも騎士団の隊長室で食べてるんだが……良かったら一緒にどうだ?」
「そうですね。ではご相伴にあずかりますわ。モコも食べるよね?」
「ワンッ」
「では行こうか」
カイン様の案内の下、騎士団の隊長室へとやって来た私は、持ってきたお弁当を広げました。
私の気のせいかもしれませんが、少し量が多くありませんか? カイン様って、あまり食べない印象を持っていたので、少々意外ですわ。
「マシェリー、この野菜はとても体に良いんだ。是非食べてほしい」
「まあ、そうですのね。もぐもぐ……う、苦い……」
「体に良いものは、そういうのが多いから仕方ないさ。ほら、この肉はうまいから口直しをするといい」
「口の中でホロホロと溶けてしまいましたわ! って……あの、カイン様もちゃんと食べてくださいませ。あと、自分で食べられるので……」
さっきから、カイン様は私に勧めるばかりで、全然食べておりません。それどころか、私の口元に料理を運んでくださって……正直恥ずかしいですわ。
「別に俺の事は気にしなくていい。マシェリーにはたくさん食べてもらって、丈夫になってほしいんだ」
「その気持ちは嬉しいですが、午後も訓練があるのでしょう? 食べて体力をつけないといけませんわ」
「それはそうだけど……俺はマシェリーの方が重要だ」
「私だってカイン様の方が重要です」
互いに一歩も譲らずに睨み合っていましたが、完全に不毛な争いだと気づいた私達は、それぞれ食事を再開しました。
なんだか、モコの視線が冷たいような気がするのは、私の気のせいでしょうか?
「そういえば、彼らとは何を言い争っていたんだ? 俺が見た時は、君がビンタをして叫んでいるところからだったんだけど」
「彼らがカイン様の陰口を言っていたので、つい頭に血が上ってしまったんです。元王族とあろう人間が、あんな事をしてしまうだなんて……」
自分の行いを恥じていると、カイン様が私の隣に立ち、そのまま抱きしめてきました。
え、えっと……急展開過ぎて、頭がついていけませんわ。カイン様は本当に唐突にこういう事をされるから、心臓に悪いです!
「ど、どうかされましたか? もしかして調子が悪いんでしょうか!?」
「なんていうか、あんなに庇ってもらった事がなくて……戸惑ってるんだけど、凄く嬉しくもあって……だから、何度でも言うよ。ありがとう」
私の事を強く抱きしめるカイン様。よほど嬉しかったのでしょうか……私にはよくわかりませんが、背中をさすって元気にしてあげましょう。
「でも……暴力を振るう姿なんて、見られたくありませんでしたわ」
「何を言っている。俺にはとても凛々しく、美しく見えたよ」
きゅ、急に美しいだなんて……そんな事を言われたら、照れちゃいますわ。でも、褒められた内容が、ただの暴力ですからね……なんとも複雑な心境です。
「とはいえ、あんまり彼らを刺激するような事を言っては駄目だよ。俺は慣れてるし、なにがあっても対応できるけど、君は荒事には慣れていないだろう?」
「そうですわね。今後は気を付けますわ」
気を付けると言ったものの、また近くでカイン様の陰口を叩く輩がいたら、口を挟みにいってしまいそうですわ。ちゃんと自制をしませんとね。
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