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第十二話 悪趣味な義妹
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■コルエ視点■
「はぁ……お姉様から奪ったドレスを着ながら、お姉様の私物を眺めるのもちょっと飽きてきたな~」
お姉様がいなくなってから少し経った頃。あたしは自室でお姉様から奪った戦利品で楽しんでいた。
最初の方は、優越感に浸れて楽しかったけど、お姉様の悔しそうな顔が無いとやりがいが無いというか……面白くないんだよね。
本人は隠してるつもりだったみたいだけど、あたしに服とかアクセサリーを渡す時に、若干頬が引きつるんだよね。あの顔が面白くて、本当に最高! また見たいな~。
「あたしが望む時だけ、ひょっこり帰ってこないかな」
あたしが呼んだ時だけ目の前に現れて、あたしから色々なものを奪われて悔しそうな顔を浮かべて、そして消えていくお姉様……なんか滑稽すぎて笑えるんだけど!
まあお姉様にはお似合いかもしれないね! あいつの自分は王族です~みたな態度、すっごくムカつくし! あたしの方が容姿も性格も優れてるのに、偉そうで……!
いなくなって清々したけど、嫌がらせをする相手がいなくなって、初めて面白くないっていうのがわかったよ。
「仕方ない、お姉様の顔を思い出そう……ふふっ、お姉様が追放されたのを突き付けられた時の顔、今思い出しても笑えるなぁ! 本当に良い気味……あははは!」
「もう、なに大きな声で笑っているの? 廊下にまで聞こえてたわよ」
「あ、お母様!」
ゲラゲラと笑っていたら、呆れ顔で入ってきたお母様に見られちゃった。やーだー恥ずかしいなーもう!
「またあの女から奪ったものを楽しんでたの? ほどほどにしないと、あの女の汚れが付いちゃうわよ」
「だって優越感に浸れるし、楽しいんだもん! 最近ちょっと飽きてはきてるけど!」
「それはそうね」
あたしに釣られるように、お母様も楽しそうにクスクスと笑っていた。
えへへー……あたし、本当にお母様の元に生まれて来てよかった! だって、望んだものは何でも手に入るし、こき使える使用人はいるし、まさに天国!
「それにしても、本当に何もかも上手くいったよね。お母様の作戦通り!」
「当然よ。その為に好きでもない女との友情ごっこをして、好きでもない男と結婚して、この地位を手に入れたんだから」
その友人……つまりお姉様のお母様の事は全然知らないし、興味も無いなぁ。お父様は……記念日とかは祝ってくれたけど、基本的に好きじゃない。だって全然遊んでくれないし、ワガママを言うなって怒るし、面白くないし! いなくなって良かったよ!
「でも、まだ満足してないわ。まだ現状では仮の女王……せっかくあの女を排除できたのだから、真の女王になるまで、止まるつもりはない」
「さすがお母様。それもこれも、ぜーんぶお母様の作戦――」
「そこまで。誰が聞いてるかわからないのだから、あんまりペラペラ喋らないの」
少しだけジトッとした目で、あたしの唇を人差し指で押さえるお母様に、あたしは小さく頷いてみせた。
別にあたしは聞かれても良いと思ってるけど、いちいち難癖を付けてくる馬鹿もいる可能性もあるって、前にお母様が言ってたっけ。
「ごめんなさいお母様! とにかく……あたしは欲しい物が手に入って、最高に幸せだよ!」
「それは何よりだわ。でも、もっと良い物を買ってあげたいから、いつでも言いなさい。これから忙しくなったら、あなたに構えなくなるから」
「それなら新しいドレスとか、アクセサリーとか、宝石が欲しい! でもお金あるの?」
「もちろん。あの男が残した財産があるし、国自体の金もある。足りなくなったら、国民からの税を重くするから大丈夫よ」
なにそれ、国民のお金はあたし達のものって事? それって……最高じゃん! いくらでも遊んで暮らせるって事と同じ意味だよね! あ~あたし王族の生まれて来て良かった~!
「失礼します。イザベラ様、ここにいらっしゃったんですね」
「あ、ノア様! 今日もカッコいいですね~!」
「……あ、ああ……ありがとう」
部屋にやってきたノア様の腕に抱きつきながら、あたしは少しベタベタした声を出して甘える。
こうして媚びを売っておけば、後で何かお願いをする時に、上手く利用できるかもしれないでしょ? 顔もカッコいいし、性格も大人しくてあたし好みだし、いくらでもくっつけるわ~まさに役得!
「それで、何か用?」
「もうすぐ会議ですので、準備をしていただきたくて」
「もうそんな時間? 面倒だから適当に決めておいて頂戴」
「そういうわけには参りません。あなたは仮とはいえ、王なのですから」
「その仮と言うのはやめなさい。後継者のマシェリーがいなくなった今、このイザベラが王となるのは時間の問題なのよ」
お母様が本当の王かぁ……考えただけでワクワクしてくる! だって、普通に考えれば、将来的にあたしが王になれるって事でしょ? 国を好きにできるとか、夢みたい!
「それなら、尚更会議には出ていただけないと困ります」
「はぁ、仕方ないわね。コルエ、遊ぶのもほどほどにしなさいね」
「は~い」
お母様とノア様を見送ったあたしは、小さく溜息を吐きながら、ベッドに倒れこんだ。
なんかもっと面白い事でも起きないかな~……奴隷を買って、それで遊ぶとかも面白そう。でも、お母様に悪趣味だって怒られちゃうか。
それに、あたしはお姉様の悔しがる顔や嫌がる顔を見るのは大好きだけど、他人が苦しんでるのを見ても、あんまり面白くないしなー却下却下。
「……あー! つまんなーい!!」
もう、なんでお姉様がいないのよ! いいからあたしの為に帰ってきて、また悔しがる顔を見せなさいよー!
「はぁ……お姉様から奪ったドレスを着ながら、お姉様の私物を眺めるのもちょっと飽きてきたな~」
お姉様がいなくなってから少し経った頃。あたしは自室でお姉様から奪った戦利品で楽しんでいた。
最初の方は、優越感に浸れて楽しかったけど、お姉様の悔しそうな顔が無いとやりがいが無いというか……面白くないんだよね。
本人は隠してるつもりだったみたいだけど、あたしに服とかアクセサリーを渡す時に、若干頬が引きつるんだよね。あの顔が面白くて、本当に最高! また見たいな~。
「あたしが望む時だけ、ひょっこり帰ってこないかな」
あたしが呼んだ時だけ目の前に現れて、あたしから色々なものを奪われて悔しそうな顔を浮かべて、そして消えていくお姉様……なんか滑稽すぎて笑えるんだけど!
まあお姉様にはお似合いかもしれないね! あいつの自分は王族です~みたな態度、すっごくムカつくし! あたしの方が容姿も性格も優れてるのに、偉そうで……!
いなくなって清々したけど、嫌がらせをする相手がいなくなって、初めて面白くないっていうのがわかったよ。
「仕方ない、お姉様の顔を思い出そう……ふふっ、お姉様が追放されたのを突き付けられた時の顔、今思い出しても笑えるなぁ! 本当に良い気味……あははは!」
「もう、なに大きな声で笑っているの? 廊下にまで聞こえてたわよ」
「あ、お母様!」
ゲラゲラと笑っていたら、呆れ顔で入ってきたお母様に見られちゃった。やーだー恥ずかしいなーもう!
「またあの女から奪ったものを楽しんでたの? ほどほどにしないと、あの女の汚れが付いちゃうわよ」
「だって優越感に浸れるし、楽しいんだもん! 最近ちょっと飽きてはきてるけど!」
「それはそうね」
あたしに釣られるように、お母様も楽しそうにクスクスと笑っていた。
えへへー……あたし、本当にお母様の元に生まれて来てよかった! だって、望んだものは何でも手に入るし、こき使える使用人はいるし、まさに天国!
「それにしても、本当に何もかも上手くいったよね。お母様の作戦通り!」
「当然よ。その為に好きでもない女との友情ごっこをして、好きでもない男と結婚して、この地位を手に入れたんだから」
その友人……つまりお姉様のお母様の事は全然知らないし、興味も無いなぁ。お父様は……記念日とかは祝ってくれたけど、基本的に好きじゃない。だって全然遊んでくれないし、ワガママを言うなって怒るし、面白くないし! いなくなって良かったよ!
「でも、まだ満足してないわ。まだ現状では仮の女王……せっかくあの女を排除できたのだから、真の女王になるまで、止まるつもりはない」
「さすがお母様。それもこれも、ぜーんぶお母様の作戦――」
「そこまで。誰が聞いてるかわからないのだから、あんまりペラペラ喋らないの」
少しだけジトッとした目で、あたしの唇を人差し指で押さえるお母様に、あたしは小さく頷いてみせた。
別にあたしは聞かれても良いと思ってるけど、いちいち難癖を付けてくる馬鹿もいる可能性もあるって、前にお母様が言ってたっけ。
「ごめんなさいお母様! とにかく……あたしは欲しい物が手に入って、最高に幸せだよ!」
「それは何よりだわ。でも、もっと良い物を買ってあげたいから、いつでも言いなさい。これから忙しくなったら、あなたに構えなくなるから」
「それなら新しいドレスとか、アクセサリーとか、宝石が欲しい! でもお金あるの?」
「もちろん。あの男が残した財産があるし、国自体の金もある。足りなくなったら、国民からの税を重くするから大丈夫よ」
なにそれ、国民のお金はあたし達のものって事? それって……最高じゃん! いくらでも遊んで暮らせるって事と同じ意味だよね! あ~あたし王族の生まれて来て良かった~!
「失礼します。イザベラ様、ここにいらっしゃったんですね」
「あ、ノア様! 今日もカッコいいですね~!」
「……あ、ああ……ありがとう」
部屋にやってきたノア様の腕に抱きつきながら、あたしは少しベタベタした声を出して甘える。
こうして媚びを売っておけば、後で何かお願いをする時に、上手く利用できるかもしれないでしょ? 顔もカッコいいし、性格も大人しくてあたし好みだし、いくらでもくっつけるわ~まさに役得!
「それで、何か用?」
「もうすぐ会議ですので、準備をしていただきたくて」
「もうそんな時間? 面倒だから適当に決めておいて頂戴」
「そういうわけには参りません。あなたは仮とはいえ、王なのですから」
「その仮と言うのはやめなさい。後継者のマシェリーがいなくなった今、このイザベラが王となるのは時間の問題なのよ」
お母様が本当の王かぁ……考えただけでワクワクしてくる! だって、普通に考えれば、将来的にあたしが王になれるって事でしょ? 国を好きにできるとか、夢みたい!
「それなら、尚更会議には出ていただけないと困ります」
「はぁ、仕方ないわね。コルエ、遊ぶのもほどほどにしなさいね」
「は~い」
お母様とノア様を見送ったあたしは、小さく溜息を吐きながら、ベッドに倒れこんだ。
なんかもっと面白い事でも起きないかな~……奴隷を買って、それで遊ぶとかも面白そう。でも、お母様に悪趣味だって怒られちゃうか。
それに、あたしはお姉様の悔しがる顔や嫌がる顔を見るのは大好きだけど、他人が苦しんでるのを見ても、あんまり面白くないしなー却下却下。
「……あー! つまんなーい!!」
もう、なんでお姉様がいないのよ! いいからあたしの為に帰ってきて、また悔しがる顔を見せなさいよー!
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