上 下
12 / 35

第十二話 悪趣味な義妹

しおりを挟む
■コルエ視点■

「はぁ……お姉様から奪ったドレスを着ながら、お姉様の私物を眺めるのもちょっと飽きてきたな~」

 お姉様がいなくなってから少し経った頃。あたしは自室でお姉様から奪った戦利品で楽しんでいた。

 最初の方は、優越感に浸れて楽しかったけど、お姉様の悔しそうな顔が無いとやりがいが無いというか……面白くないんだよね。

 本人は隠してるつもりだったみたいだけど、あたしに服とかアクセサリーを渡す時に、若干頬が引きつるんだよね。あの顔が面白くて、本当に最高! また見たいな~。

「あたしが望む時だけ、ひょっこり帰ってこないかな」

 あたしが呼んだ時だけ目の前に現れて、あたしから色々なものを奪われて悔しそうな顔を浮かべて、そして消えていくお姉様……なんか滑稽すぎて笑えるんだけど!

 まあお姉様にはお似合いかもしれないね! あいつの自分は王族です~みたな態度、すっごくムカつくし! あたしの方が容姿も性格も優れてるのに、偉そうで……!

 いなくなって清々したけど、嫌がらせをする相手がいなくなって、初めて面白くないっていうのがわかったよ。

「仕方ない、お姉様の顔を思い出そう……ふふっ、お姉様が追放されたのを突き付けられた時の顔、今思い出しても笑えるなぁ! 本当に良い気味……あははは!」
「もう、なに大きな声で笑っているの? 廊下にまで聞こえてたわよ」
「あ、お母様!」

 ゲラゲラと笑っていたら、呆れ顔で入ってきたお母様に見られちゃった。やーだー恥ずかしいなーもう!

「またあの女から奪ったものを楽しんでたの? ほどほどにしないと、あの女の汚れが付いちゃうわよ」
「だって優越感に浸れるし、楽しいんだもん! 最近ちょっと飽きてはきてるけど!」
「それはそうね」

 あたしに釣られるように、お母様も楽しそうにクスクスと笑っていた。

 えへへー……あたし、本当にお母様の元に生まれて来てよかった! だって、望んだものは何でも手に入るし、こき使える使用人はいるし、まさに天国!

「それにしても、本当に何もかも上手くいったよね。お母様の作戦通り!」
「当然よ。その為に好きでもない女との友情ごっこをして、好きでもない男と結婚して、この地位を手に入れたんだから」

 その友人……つまりお姉様のお母様の事は全然知らないし、興味も無いなぁ。お父様は……記念日とかは祝ってくれたけど、基本的に好きじゃない。だって全然遊んでくれないし、ワガママを言うなって怒るし、面白くないし! いなくなって良かったよ!

「でも、まだ満足してないわ。まだ現状では仮の女王……せっかくあの女を排除できたのだから、真の女王になるまで、止まるつもりはない」
「さすがお母様。それもこれも、ぜーんぶお母様の作戦――」
「そこまで。誰が聞いてるかわからないのだから、あんまりペラペラ喋らないの」

 少しだけジトッとした目で、あたしの唇を人差し指で押さえるお母様に、あたしは小さく頷いてみせた。

 別にあたしは聞かれても良いと思ってるけど、いちいち難癖を付けてくる馬鹿もいる可能性もあるって、前にお母様が言ってたっけ。

「ごめんなさいお母様! とにかく……あたしは欲しい物が手に入って、最高に幸せだよ!」
「それは何よりだわ。でも、もっと良い物を買ってあげたいから、いつでも言いなさい。これから忙しくなったら、あなたに構えなくなるから」
「それなら新しいドレスとか、アクセサリーとか、宝石が欲しい! でもお金あるの?」
「もちろん。あの男が残した財産があるし、国自体の金もある。足りなくなったら、国民からの税を重くするから大丈夫よ」

 なにそれ、国民のお金はあたし達のものって事? それって……最高じゃん! いくらでも遊んで暮らせるって事と同じ意味だよね! あ~あたし王族の生まれて来て良かった~!

「失礼します。イザベラ様、ここにいらっしゃったんですね」
「あ、ノア様! 今日もカッコいいですね~!」
「……あ、ああ……ありがとう」

 部屋にやってきたノア様の腕に抱きつきながら、あたしは少しベタベタした声を出して甘える。

 こうして媚びを売っておけば、後で何かお願いをする時に、上手く利用できるかもしれないでしょ? 顔もカッコいいし、性格も大人しくてあたし好みだし、いくらでもくっつけるわ~まさに役得!

「それで、何か用?」
「もうすぐ会議ですので、準備をしていただきたくて」
「もうそんな時間? 面倒だから適当に決めておいて頂戴」
「そういうわけには参りません。あなたは仮とはいえ、王なのですから」
「その仮と言うのはやめなさい。後継者のマシェリーがいなくなった今、このイザベラが王となるのは時間の問題なのよ」

 お母様が本当の王かぁ……考えただけでワクワクしてくる! だって、普通に考えれば、将来的にあたしが王になれるって事でしょ? 国を好きにできるとか、夢みたい!

「それなら、尚更会議には出ていただけないと困ります」
「はぁ、仕方ないわね。コルエ、遊ぶのもほどほどにしなさいね」
「は~い」

 お母様とノア様を見送ったあたしは、小さく溜息を吐きながら、ベッドに倒れこんだ。

 なんかもっと面白い事でも起きないかな~……奴隷を買って、それで遊ぶとかも面白そう。でも、お母様に悪趣味だって怒られちゃうか。

 それに、あたしはお姉様の悔しがる顔や嫌がる顔を見るのは大好きだけど、他人が苦しんでるのを見ても、あんまり面白くないしなー却下却下。

「……あー! つまんなーい!!」

 もう、なんでお姉様がいないのよ! いいからあたしの為に帰ってきて、また悔しがる顔を見せなさいよー!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いつの間にかの王太子妃候補

しろねこ。
恋愛
婚約者のいる王太子に恋をしてしまった。 遠くから見つめるだけ――それだけで良かったのに。 王太子の従者から渡されたのは、彼とのやり取りを行うための通信石。 「エリック様があなたとの意見交換をしたいそうです。誤解なさらずに、これは成績上位者だけと渡されるものです。ですがこの事は内密に……」 話す内容は他国の情勢や文化についてなど勉強についてだ。 話せるだけで十分幸せだった。 それなのに、いつの間にか王太子妃候補に上がってる。 あれ? わたくしが王太子妃候補? 婚約者は? こちらで書かれているキャラは他作品でも出ています(*´ω`*) アナザーワールド的に見てもらえれば嬉しいです。 短編です、ハピエンです(強調) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます。

婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました

hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。 家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。 ざまぁ要素あり。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...