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第四十三話 反撃開始!!

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「えっと、この真っ白な花を集めればいいのかな?」

「はい。触る分にはいいですけど、食べないようにしてくださいね」

 エルヴィン様は、私の指示通りにとある花を採取しながら、確認の言葉を投げかける。

 二人が勝手にそんなことをするはずが無いのはわかっているけど、ちゃんと言っておかないと、あとでなにかあってからでは遅いからね。

「この花、小さくて見つけにくいものなんだけど、ソーニャちゃんの鼻のおかげで、簡単に見つかったよ!」

「良かったですっ! それにしてもこのお花、匂いがかなり変わってますね」

「そうなんだよ。匂いを辿るのが、一番手っ取り早い方法だったんだよ。それを出来るソーニャちゃんは、やっぱりすごい!」

 私はソーニャちゃんに抱きつきながら、その凄さを褒め称える。

 今も昔も、ソーニャちゃんは抱きつかれると、照れながら困ってしまうが、嫌がったりはしない。むしろ、尻尾を私の尻尾に絡ませてくれるくらいだ。

 ソーニャちゃん、本当に可愛いな。同性の私ですらそう思うんだから、相当だと思う。

 ……私も、エルヴィン様に同じように気持ちが伝えられれば……どうなるんだろう……?

「ソーニャも凄いが、アイリーンだって凄いじゃないか。野生の植物を利用するだなんて、僕には到底思いつかないものだよ。その発想力や、利用できる知識量には驚くばかりだよ」

「そんな、褒められたら照れちゃいますよ」

 褒められたのが嬉しくて、また尻尾が勝手に揺れちゃうのを、それとなく体で隠す。

 自然の物をいただくというのは、結構リスクが伴うもの。食べたら危険なものはもちろん、触れるだけでも危険なものだってある。

 そういうのを回避するためだったり、逆に利用するために、小さい頃から暇な時に無料で使える図書館で勉強してたのが、こんなところで役立つとはね。

「これだけあれば足りると思います。あとはさっき使ったキノコと同じように、粉末状にすれば使えます」

「わかった、任せてくれ。ところで、その赤い花は?」

「隠し味みたいなものです。これも粉末状にして混ぜるんです」

 エルヴィン様は、魔法で二種類の花を一瞬で切り刻んで粉末状にしてくれた。

「これでよし。さあ、先を急ごう。思わぬところで時間を浪費してしまったからね」

「そ、そうですね……これで時間切れになったら、元も子もないですよね……」

 二人の言う通りだ。仕返しに躍起になって本来の目的を見失うわけにはいかない。

「チェックポイントを周りながら、ゲオルク様達を探しましょう。私が先導しますね」

「よろしくお願いするよ。ああ、僕達のことは気にしないで、急いで行ってくれるかな?」

「えっ? でも……」

「だ、大丈夫ですっ! わたし達、頑張ってアイリーンさんを追いかけますから!」

「僕も、少しは森の道に慣れてきたから、大丈夫だと思う」

「……わかりました! 行きましょう!」

 二人が提案してくれたことを、無下にする必要は無い。さすがに全力だと追いつくのは大変そうだから……さっきの倍くらいの早さで進もう!


 ****


■ゲオルク視点■

 最後のチェックポイントを無事に通過した俺様は、高らかな笑い声を森の中に響かせていた。

「はーっはっはっはっ!! 試験は順調、おまけにアイリーンも始末できて、最高じゃないか!」

 まさに有頂天な気分とは、このことを言うのだろう。全てが思い通りになるというのは、何度経験しても良いものだ!

「ゲオルク様のお役に立てて、本当に嬉しいですわ」

「ああ、愛しのルシア。お前の功績は称賛に値する。今日は俺様の部屋に来い。たっぷりかわいがってやる」

「あぁ……嬉しいですわ、ゲオルク様ぁ……」

「お兄様、一応今は試験の最中なのですから、お戯れは控えてくださいます?」

「いやぁ、今更それを言っても無理じゃないかな~?」

 ミアの奴め、俺様のことをよくわかっているではないか。どんな場所でも、どんな状況でも、俺様は自分がしたいようにするだけだ。

 とはいっても、さすがに最低限の分別はついているつもりなのだがな。本当なら、この場でルシアを愛してやりたいところだが、さすがに外でとなったら、それではただの薄汚い動物と同じだからな。

「チェックポイントは全て周りましたし、あとは頂上に向かうだけですので、すぐに帰れるかと存じますわ」

「そうだな。早く帰ってお前を楽しみたい……いや、お前と楽しみたいものだ」

「あっ……」

 いつものように俺の腕に抱きつくルシアの首筋をペロッと舐める。すると、ルシアは艶やかな声を漏らした。

 本当に我慢が出来なくなってきた。だが、俺のそんな純情な心を邪魔するものが現れた。

 その邪魔者とは、どこからか投げ込まれた球体から発せられた、うっすらと白い煙だった。

「ごほっ、なんだこの煙は!?」

「これ、煙じゃなくて何かの粉末っぽいよ、お兄様!」

「粉末だと? 誰かが俺様達の邪魔をしているのか? 全く良い度胸だ」

 どこの誰かは知らないが、こんなことをしても無駄だというのがなぜわからないのか。実際に、俺様達の体にはなんの変化もない。

 はははっ、邪魔をしたいのか、それとも時間稼ぎのつもりかは知らんが、徒労に終わったな。愚か者どもめ!

「こんなもの、恐れるに足らず! さあ行くぞ、我が妹と婚約者よ!」

 まるで軍を指揮する指揮官のように、俺様は声を高々に宣言をしてゴールを目指す。

 それから十分程で、ついに俺様達は山頂へと到達することが出来た。

「ここが山頂か。景色は悪くないが、だだっ広くて何もないな」

「お兄様、こちらに魔法陣と石碑がございますわ」

「なになに~? 勇気ある者よ、証を我に示せ……どゆこと?」

「ミア様、恐らくではございますが、ここに来る途中に集めてきた証を使うのかと」

「証……あっ! 地図に集めていたやつだね!」

 ほう、なるほどな。チェックポイントを通らずに来た愚か者は、ここではじかれてしまうというわけか。良く出来ているではないか。

「そうとわかれば話は早い。さっさと終わらせて帰ると――」

 俺様のありがたい言葉は、それ以上先のことを言えなくなった。

 なぜなら、突然地面がせり上がったと思ったら、その地面が巨大なゴーレムへと変化したからだ。
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