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第四十五話 復讐開始

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「……最近、レオ様の様子が変ね」

 一緒に過ごすようになってからしばらく経ったある日、せっかくレオ様と一緒に過ごせるようになったというのに、最近のレオ様は朝に早く出て行ってしまったり、夜は遅くに帰ってきたり、下手したら帰ってこないことも増えてきた。

 一体レオ様は、何をしているのだろうか? たまに話をすると、明らかに疲れているのが顔に出ているし……なにか厄介なことに巻き込まれているんじゃないかしら?

「ちょっと後をつけてみようかしら……」

 今は、もう外が真っ暗になったくらいの時間だ。この時間になると、レオ様は何処かへと向かって出かけていく。

 それの後をつければ、なにをしているかわかるわよね? 浮気をしてるとかは絶対に無いと思うけど、危ないことをに関わってたら、止めたり助けたりしたい。

「レオ様は……いた」

 玄関から外に出ると、レオ様は丁度出発しようとしていた所だった。しかも、馬車などは一切準備されていなかった。

 まさかと思って声をかけるのをためらっていると、レオ様は勢いよく走りだした。その速度はすさまじく、目で追うのも難しいくらいだった。

 やっぱり自分で走っていくのね……変に声をかけて魔法の邪魔をしたら、予期せぬ事が起こるんじゃないかと思って、声がかけられなかったわ。

「むう……一回ダメなら二回、三回と挑戦するだけだわ」

 そうよ、ここでレオ様のことは気にしなくていいかな、なんて思って過ごした結果、大変なことに巻きまれてました、もう助かりませんなんて言われたら、死んでも死にきれないわ。


 ****


 ……それからというもの、何度もレオ様の後をつけようとしたのだけど、尾行の才能が無さすぎて失敗続き。これでは何の意味もないわ。

 はぁ……そろそろ昼休みの時間だから、一緒にお弁当……食べてくれるかしら。最近は一緒に食べることも減ってきてるのよね……。

「はぁ……あ、いた」

 いつもの教室に行くと、レオ様は試験管とにらめっこをしていた。それは、まるで実験をしているかのようだた。

 ……レオ様も、魔法薬学を勉強し始めたのかしら? でも、実際に作るのは免許が無ければ出来ないはずだけど……。

 よくわからないけど、なんだか邪魔をしてはいけない雰囲気なのはわかる。だって、レオ様の目がとても真剣そのものだったから。

 仕方ない、お弁当自体は貰ってるから、今日は邪魔しないように別のところで食べよう……。

「……はぁ、寂しい……」


 ****


 あれから一週間後の放課後。結局レオ様と全然一緒に過ごせていない私は、そろそろ我慢の限界に達しようとしていた。

 せっかくお付き合いを初めて、一緒にいられるようになったと思っていたいのに、また一人ぼっちだなんて、そんなの寂しすぎるじゃない!

「レオ様は……どこに行ったのかしら」

 授業が終わった後、レオ様はいそいそと教室を後にしてしまったから、どこに行ったかわからない。こういう時は……いそうな所を片っ端から探すしかないわね。

「そこ、廊下は走らない!」
「ごめんなさい!」

 廊下を走り回ってレオ様を探している途中、通りがかった教師に怒られてしまったけど、その甲斐もあってレオ様を見つけることが出来た。

 レオ様は、とても真剣な面持ちで、とある部屋の中へと入っていった。その部屋は、少々予想外の場所だった。

「……会議室……??」

 レオ様が入った場所は、教師や学園の関係者が使う会議室だった。こんな場所に一生徒であるレオ様に用事があるのは、少々考えにくい。

「中で何をしているのかしら……?」

 中に音が聞こえないように、こっそりと扉に耳を当てて中の音を聞いてみると、うっすらとだけど、レオ様の声が聞こえてきた。

「全員お揃いですね。ようこそ皆さん、お会いできて光栄です」

 皆さん? 光栄? レオ様は何人かの人と話をしているの? それは一体誰?

 色々と疑問点が浮かんできたが、とにかく中を確認するのが一番手っ取り早い。そう思った私は、恐る恐る会議室の扉を少しだけ開け、中を確認した。

 そこにいたのは……レオ様とシャーロットとフローラ。更にお母様にセシル様、そしてアドミラル学園のトップである、学園長だった。

 ……?? 一体何がどうなって、この人達がここに集まったの?? え、考えても全然わからないわ。それに、どうして私の元婚約者のセシル様までこの場にいるの?

 ……このまま聞いていたら、その理由がわかるかしら……?

「レオ様、これはどういうこと? あたしとお母様は、校長先生に大事な話があるって言われれここに来たのに、どうしてフローラやセシル様がいるの?」
「私もシャーロットと同じく、校長先生に呼び出されましたわ」
「わ、わたしは何も知りませんぞ? わたしはセシル殿に学園の経営について話があると……」
「はて、私はそのような話はしておりません。私は、我が未来の妻がどうしても学園に来てほしいと言うから、約束の時刻に伺っただけです」

 ど、どういうことなの? 全員が何か嘘をつかれて、ここに集められたってことなの?

「皆さんをここに集めたのは、俺のしたことです。厳密には、我が家の使用人に変身魔法が使える者がおりまして。その人物にお願いして、皆さんを集めてもらいました」
「レオ、久しぶりに会ったというのに、随分なイタズラではないか」
「ははっ、申し訳ないセシル様。あなたがアメリアの元婚約者という情報を手に入れたので、ぜひ聞いてもらいたくてお呼びしました。このご無礼は、後日に我が家で行われる茶会にて謝罪させてください」
「……やれやれ、私の好きな茶と菓子を頼むぞ」
「もちろん」

 今の感じだと、レオ様とセシル様って知り合いなのかしら。全然知らなかったわ……。

「あなたとは初めましてですね。俺はレオ・フィリスと申します。あなたの御息女であるシャーロット様、そしてアメリア様には大変お世話になっております」
「まあ、あなたがフィリス侯爵家の一人息子のレオ様ですのね! お噂はかねがね伺っておりますわ! よろしくお願い致します!」

 私の前では一切見せない、満面の笑顔でレオ様と握手をするお母様を見ていた私は、思わず溜息が漏れてしまった。

 ここで良い顔をしておけば、スフォルツィ家とフィリス家の繋がりが出来るかもしれないから、あんな風な態度を取っているのよ。

「さて、まずは皆さんを騙すような形でお呼びしてしまったことを、深くお詫びさせてください。こうでもしないと、この面々で顔を合わせる機会は無いと思ったので」
「んで、そんなイタズラめいた集め方をして、何の用なのかしら? あたしもお母様も、それにみんなも忙しいのよ?」
「大丈夫、話自体はさほど時間はかかりません。それに……」

 レオ様は一旦話を区切ると、全員に背中を向けて言葉を止めた。その際に、私の方を向く形になってしまったから、危うく見つかってしまうところだった。

 でも、ここにいて良いことがあったと言うべきか……私にしか見えないものがあった。それは……氷のように冷たく、でも口角だけは不敵に上げるレオ様の表情だった。

「もうそんな忙しい日々を送らなくても済むようになるでしょう」

 なんとも不穏なことを言いながら全員の方に向き直したレオ様は、一つの大きな魔方陣を作り出した。

 一体、レオ様は何をするつもりなの……? なんだか凄く嫌な予感がするわ……。
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