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第九話 聖女の裏の顔
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■エリーザ視点■
「ふぅ……」
フレリック様との結婚を発表した数日後の朝、フカフカなベッドの上で目を覚ました。
その隣では、新しい婚約者であるフレリック様が、すやすやと寝息を立てている。
先日婚約をしたばかりで、まだ気が早いと言われるかもしれないけど、こうしてすでにフレリック様と共に夜を過ごしている。
とはいっても、まだ一線は超えていない。超えるつもりも無いのだけど。
「ん~……ああ、あはようエリーザ」
「お、おはようございます……」
「どうしたんだい、そんなにモジモジして」
「一緒に寝たんだって思ったら、恥ずかしくて……」
「既に何回か寝ているじゃないか。これからはずっとこうなるのだから、今のうちに慣れておくといいよ。それじゃあ、私は日課である魔法の練習に行ってくる」
「は、はい……いってらっしゃい、ませ」
おどおどとしつつも、フレリック様が出て行ったのを完全に確認をしたわたくし……じゃねえ。うちは大の字でベッドに寝転んだ。
「ぷくくっ……フレリックとこうして寝ていると、あの傲慢ナルシストなバカ女に、仕返しが出来たって思えて、気分がアガるわ~!」
いつも調子に乗っていて大嫌いだったミシェルから、婚約者を奪えたという快感に、体が震える。
この感覚、マジパネェわ! 体中がゾクゾクする! 変な趣味に目覚めちまいそうだわ!
「つっても、まさかあんなに素直に謝るのは、さすがにないわー……やたらと素直になってたし、土下座でもさせりゃよかったかも? それをSNSにあげりゃ、バズりまくって、さらに仕返しになってたかもしんねーのに。もったいないことしたわ」
炎上商法でもなんでもいいから、ミシェルの無様な姿がネットに晒されたら、あいつの人生終わらせられるのになー残念無念。
「てかさぁ……なんでこの世界にはスマホもパソコンもテレビも無いわけ? 代わりに魔法があるけど、調子に乗って使い過ぎっと、体がだるくてぴえんだし。魔法が使えるのを知った時はマジまんじだったけど、普通に考えて、家電とかの方が色々と便利じゃん」
最初、うちは魔法が使えるどころか、聖女とかいう、よくわからん力も持っていたみたいで、テンションアゲアゲだったんだけど……これが使うと結構疲れる。
しかも、聖女はみんなお淑やかだっていうから、それを演じないといけなくなって……まじだるいの極みなんだけど!
「でもまあ、今は我慢っしょ。このまま演じ続けて、研究に使えそうなものを集めまくれば……きっといつか達成できる。さて、ここでダラダラしてても仕方ないし、あの研究バカに状況を聞かないと」
うちはベッドから起きると、パチンっと指を鳴らす。すると、足元から光に包まれていく。
その光が消えると、うちの服がネグリジェから、華やかなドレスに変わった。
「こんなSNS映えしそうなドレスを、魔法で簡単に着れるのは、結構女の子の夢っぽく見えっけど、慣れると何も思わなくなるなー」
ブツブツと独り言を漏らしながら、もう一度指を鳴らすと、床に魔法陣が出てきた。
うちはその魔法陣にためらいなく乗ると、さっきまでの部屋の景色から一転して、別の部屋の景色に変わった。
部屋の中の明かりは、十個以上あるテレビのようなモニターだけで、とても暗い。そんなモニターの前に置かれた椅子には、一人の男が腰を下ろし、ニヤニヤときしょい笑みを浮かべていた。
「おはようございます、エリーザ様。突然お越しになられると、驚いてしまいますね」
「心にもないこと言うなし、キモいんだよ」
モニターの明かりでぼんやりと見える男は、ニコニコと笑顔を浮かべながら挨拶をする。
一応こいつとは、利害が一致しているから協力関係にあるけど、なんかキモくて好きになれない。
まあ、うちは男なんてみんな死ねばいいと思ってるくらい嫌いだけど。あ、男に限らず人間なんて全員消えればいい的な?
「ふふ、あなたのアイディアのおかげで、サンプル達の監視も楽になりましたよ」
男が見るモニターには、SF映画で出てきそうな、培養液に浸かった色々な動物や植物、人間やエルフが管理されていた。
こうしてみると、中々にヤベー光景で……ちょっとテンション上がるわ。
「むしろ今まで直接見て監視してたとか、原始的すぎてウケるんだけど? 天才が聞いて呆れるわ。本当に、うちが求めている魔法は完成するわけ? うちの駒がこいつらを集めてやってんのを忘れんなよ」
「ええ、もちろん。そもそも、あなたが甲斐甲斐しく男達を大根役者で誘惑して得た駒がいなくても、私には国のお偉い方という、心強い協力者がいますので」
「あぁ? 誰が大根芝居だ。てめーもやってみろよこれ。想像以上につらたんになるから」
「つらたん、というのはよくわかりませんが、私はそんなことをする暇も興味もございません」
だろうな。むしろこいつが芝居なんかに興味持ったらビビるの確定だし、魔法の研究が遅れるから、やられたら困る。
「ていうか、偉そうに協力者とか言ってっけど、魔法でどうにかしてるだけじゃん……そうだ、ここの秘密を知ったバカ共やうちの駒は、ちゃんと処理してるよな?」
「滞りなく。私の魔法で記憶を消したり、使えそうな人間は利用してます。その他はサンプルにさせていただいております」
研究に利用できてるんなら、特にうちからいうことはなにもねーわ。
「進捗ですが、以前よりも遠くに転移は出来てます。現に、あなたの家からここまで転移できていますしね」
「それな。気楽に来られるからマジ便利的な? 普通の転移魔法じゃ、こうはいかないっしょ」
「しかし、更なる長距離転移をすると、魔法の対象者の体が爆発四散してしまいます。何度かマウスや連れてきた人間で試しましたが、どれも同じ結果でした」
「……別にそいつらがどうなろうと興味ないけど、爆発するのを考えたら、さすがにテンサゲだわ……」
まだうちが小さくてプリティな頃に、テレビで見た映画で、人間が爆発するシーンがあったな……さすがにビビり過ぎて、その日はトイレに行けなくなったっけ。
「魔法の発展に、犠牲はつきものです。ちなみに、現状の進捗をわかりやすくお伝えすると、大体三割程度といったところですね。まだいろいろと試してみたいことがありますが、いかんせんサンプルが足りません」
「まだ三割とか、なんの冗談? 転移出来てるし、八割くらいかと思ってたんだが? 研究しか生きがいの無い、クソつまらん人生を送ってるお前だから頼んだってのに……もっと早くに作れし」
「いくら私でも、今回のは難易度が高いものでしてね。まあ、難しければ難しいほど、研究のし甲斐がありますけどねぇ……くくくっ……!」
うわぁ、キモイを通り越して、ドン引きレベルの表情するじゃん。夢に出てきたらテンサゲだから、そんな顔すんなよバーカ!
「そういえば、この前うちの駒が必死に捕まえてきたエルフはどうなったん? あれだけじゃ駄目系?」
「普通の人間よりも、頑丈で魔力も大きいエルフとはいえ、一人程度では全く足りませんよ。先日も一人壊れてしまいましたからね」
ああ、そういえば魔力の摘出をやりすぎて、廃人みたいになったんだっけ。
それで、獰猛なサンプルの一体のエサにしたとかなんとか……悪趣味すぎて、もはやホラー映画に出てくるマッドサイエンティストじゃん。
「まあ、エルフの細胞は全て回収したので、舐め回すように観察をしなければ……くくっ」
「キモいんだけど!? 同じ部屋の空気吸わないで欲しいんだけど!」
「そう仰られましてもねぇ。そうそう、エルフ以外にも希少な獣や植物も欲しておりましてね。これがまとめたリストなのですが」
「いや自分で集めろし!?」
「持ってきてくだされば、研究は進みますよ? 目的のために、元の世界に帰りたいのでしょう?」
「うぐっ……」
言い当てられてめっちゃ悔しいけど、実際にその通りだ。うちは何があっても、元の世界に帰らなきゃいけない。
「……それな。うちを殺したあの男達と……うちを助けてくれなかった人間全てを、この聖女の魔法で全てぶっ殺すために、必ず帰らなきゃいけねーし!」
「ふぅ……」
フレリック様との結婚を発表した数日後の朝、フカフカなベッドの上で目を覚ました。
その隣では、新しい婚約者であるフレリック様が、すやすやと寝息を立てている。
先日婚約をしたばかりで、まだ気が早いと言われるかもしれないけど、こうしてすでにフレリック様と共に夜を過ごしている。
とはいっても、まだ一線は超えていない。超えるつもりも無いのだけど。
「ん~……ああ、あはようエリーザ」
「お、おはようございます……」
「どうしたんだい、そんなにモジモジして」
「一緒に寝たんだって思ったら、恥ずかしくて……」
「既に何回か寝ているじゃないか。これからはずっとこうなるのだから、今のうちに慣れておくといいよ。それじゃあ、私は日課である魔法の練習に行ってくる」
「は、はい……いってらっしゃい、ませ」
おどおどとしつつも、フレリック様が出て行ったのを完全に確認をしたわたくし……じゃねえ。うちは大の字でベッドに寝転んだ。
「ぷくくっ……フレリックとこうして寝ていると、あの傲慢ナルシストなバカ女に、仕返しが出来たって思えて、気分がアガるわ~!」
いつも調子に乗っていて大嫌いだったミシェルから、婚約者を奪えたという快感に、体が震える。
この感覚、マジパネェわ! 体中がゾクゾクする! 変な趣味に目覚めちまいそうだわ!
「つっても、まさかあんなに素直に謝るのは、さすがにないわー……やたらと素直になってたし、土下座でもさせりゃよかったかも? それをSNSにあげりゃ、バズりまくって、さらに仕返しになってたかもしんねーのに。もったいないことしたわ」
炎上商法でもなんでもいいから、ミシェルの無様な姿がネットに晒されたら、あいつの人生終わらせられるのになー残念無念。
「てかさぁ……なんでこの世界にはスマホもパソコンもテレビも無いわけ? 代わりに魔法があるけど、調子に乗って使い過ぎっと、体がだるくてぴえんだし。魔法が使えるのを知った時はマジまんじだったけど、普通に考えて、家電とかの方が色々と便利じゃん」
最初、うちは魔法が使えるどころか、聖女とかいう、よくわからん力も持っていたみたいで、テンションアゲアゲだったんだけど……これが使うと結構疲れる。
しかも、聖女はみんなお淑やかだっていうから、それを演じないといけなくなって……まじだるいの極みなんだけど!
「でもまあ、今は我慢っしょ。このまま演じ続けて、研究に使えそうなものを集めまくれば……きっといつか達成できる。さて、ここでダラダラしてても仕方ないし、あの研究バカに状況を聞かないと」
うちはベッドから起きると、パチンっと指を鳴らす。すると、足元から光に包まれていく。
その光が消えると、うちの服がネグリジェから、華やかなドレスに変わった。
「こんなSNS映えしそうなドレスを、魔法で簡単に着れるのは、結構女の子の夢っぽく見えっけど、慣れると何も思わなくなるなー」
ブツブツと独り言を漏らしながら、もう一度指を鳴らすと、床に魔法陣が出てきた。
うちはその魔法陣にためらいなく乗ると、さっきまでの部屋の景色から一転して、別の部屋の景色に変わった。
部屋の中の明かりは、十個以上あるテレビのようなモニターだけで、とても暗い。そんなモニターの前に置かれた椅子には、一人の男が腰を下ろし、ニヤニヤときしょい笑みを浮かべていた。
「おはようございます、エリーザ様。突然お越しになられると、驚いてしまいますね」
「心にもないこと言うなし、キモいんだよ」
モニターの明かりでぼんやりと見える男は、ニコニコと笑顔を浮かべながら挨拶をする。
一応こいつとは、利害が一致しているから協力関係にあるけど、なんかキモくて好きになれない。
まあ、うちは男なんてみんな死ねばいいと思ってるくらい嫌いだけど。あ、男に限らず人間なんて全員消えればいい的な?
「ふふ、あなたのアイディアのおかげで、サンプル達の監視も楽になりましたよ」
男が見るモニターには、SF映画で出てきそうな、培養液に浸かった色々な動物や植物、人間やエルフが管理されていた。
こうしてみると、中々にヤベー光景で……ちょっとテンション上がるわ。
「むしろ今まで直接見て監視してたとか、原始的すぎてウケるんだけど? 天才が聞いて呆れるわ。本当に、うちが求めている魔法は完成するわけ? うちの駒がこいつらを集めてやってんのを忘れんなよ」
「ええ、もちろん。そもそも、あなたが甲斐甲斐しく男達を大根役者で誘惑して得た駒がいなくても、私には国のお偉い方という、心強い協力者がいますので」
「あぁ? 誰が大根芝居だ。てめーもやってみろよこれ。想像以上につらたんになるから」
「つらたん、というのはよくわかりませんが、私はそんなことをする暇も興味もございません」
だろうな。むしろこいつが芝居なんかに興味持ったらビビるの確定だし、魔法の研究が遅れるから、やられたら困る。
「ていうか、偉そうに協力者とか言ってっけど、魔法でどうにかしてるだけじゃん……そうだ、ここの秘密を知ったバカ共やうちの駒は、ちゃんと処理してるよな?」
「滞りなく。私の魔法で記憶を消したり、使えそうな人間は利用してます。その他はサンプルにさせていただいております」
研究に利用できてるんなら、特にうちからいうことはなにもねーわ。
「進捗ですが、以前よりも遠くに転移は出来てます。現に、あなたの家からここまで転移できていますしね」
「それな。気楽に来られるからマジ便利的な? 普通の転移魔法じゃ、こうはいかないっしょ」
「しかし、更なる長距離転移をすると、魔法の対象者の体が爆発四散してしまいます。何度かマウスや連れてきた人間で試しましたが、どれも同じ結果でした」
「……別にそいつらがどうなろうと興味ないけど、爆発するのを考えたら、さすがにテンサゲだわ……」
まだうちが小さくてプリティな頃に、テレビで見た映画で、人間が爆発するシーンがあったな……さすがにビビり過ぎて、その日はトイレに行けなくなったっけ。
「魔法の発展に、犠牲はつきものです。ちなみに、現状の進捗をわかりやすくお伝えすると、大体三割程度といったところですね。まだいろいろと試してみたいことがありますが、いかんせんサンプルが足りません」
「まだ三割とか、なんの冗談? 転移出来てるし、八割くらいかと思ってたんだが? 研究しか生きがいの無い、クソつまらん人生を送ってるお前だから頼んだってのに……もっと早くに作れし」
「いくら私でも、今回のは難易度が高いものでしてね。まあ、難しければ難しいほど、研究のし甲斐がありますけどねぇ……くくくっ……!」
うわぁ、キモイを通り越して、ドン引きレベルの表情するじゃん。夢に出てきたらテンサゲだから、そんな顔すんなよバーカ!
「そういえば、この前うちの駒が必死に捕まえてきたエルフはどうなったん? あれだけじゃ駄目系?」
「普通の人間よりも、頑丈で魔力も大きいエルフとはいえ、一人程度では全く足りませんよ。先日も一人壊れてしまいましたからね」
ああ、そういえば魔力の摘出をやりすぎて、廃人みたいになったんだっけ。
それで、獰猛なサンプルの一体のエサにしたとかなんとか……悪趣味すぎて、もはやホラー映画に出てくるマッドサイエンティストじゃん。
「まあ、エルフの細胞は全て回収したので、舐め回すように観察をしなければ……くくっ」
「キモいんだけど!? 同じ部屋の空気吸わないで欲しいんだけど!」
「そう仰られましてもねぇ。そうそう、エルフ以外にも希少な獣や植物も欲しておりましてね。これがまとめたリストなのですが」
「いや自分で集めろし!?」
「持ってきてくだされば、研究は進みますよ? 目的のために、元の世界に帰りたいのでしょう?」
「うぐっ……」
言い当てられてめっちゃ悔しいけど、実際にその通りだ。うちは何があっても、元の世界に帰らなきゃいけない。
「……それな。うちを殺したあの男達と……うちを助けてくれなかった人間全てを、この聖女の魔法で全てぶっ殺すために、必ず帰らなきゃいけねーし!」
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