そこは獣人たちの世界

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第一章

魔素纏い次の段階

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ガロの持つ木製ハンマーはいわゆる餅つきの木槌なんかとは形が全然違う。なんかのゲームでおおきづちとかいうのが持ってたのとも柄の部分が全然違う。
ハンマー部分の形は角はないけど四角系で僕の胸幅ほどある大きさ。柄だってそれなりに太くしかも僕の腕分くらいの長さがある。遠心力を付けて振ったらいくら木製でも危険だとわかる。
たぶん銅製の武器もこういう木製の武器も、訓練とはいえ扱い方次第で下手したら死人が出るから一定のランクじゃないと使えないとかそういうやつなんだろう。それで魔道具にギルドカードをかざしていたんじゃないかと思う。

「それじゃあうちこむが、初めは普通に魔素纏いだけで受け流してみろ。」

「え、魔素纏いの段階をあげるとか、言ってなかった?」

「今の上体でも十分受け流せる程度の速度、威力で打ち込む。ちゃんと受け流さなきゃ、剣よりも痛いぞ?」

そういいながら振りかぶり始めた!そ、その勢いで打ち込んでくる気!?

「ちょ、ちょまって!」

「待たない。実戦ではまってくれる相手なんていないからな。」

残酷だけど確かにそう!そうなんだけど待ってほしかった!でも思い届かずガロのハンマーは僕目掛け打ち込まれる。
魔素纏いを全開にしつつ、頼りないけど構えていた木剣でとっさに受けそらそうとしていた。これまでずっとガロに打ち込み訓練させられていたからか、ほぼ勝手に体が動いた感じだ。
でも木剣同士と訳が違う。ハンマーは受けなきゃいけない面がでかいいつもは体をそらすくらいだけど、それじゃだめだ。完全に後ろに下がりながら力を流す。
ギチギチとちょっと嫌な音を鳴らしたが、折れたりはすることなく何とか木剣は受けたハンマーをそらしてくれた。
魔素を大きく使ったせいか、はたまたちょっと焦ったせいか、息が上がっちゃったけど。

「うまくできたじゃねぇか。暴れ牛なんて今のよりよっぽど楽だぞ?」

「はぁ、はぁ、うん、そういわれるとそういう気がするよ。」

息を整えながら思い出してみる。暴れ牛はあの暴れっぷりといえ危険な角もない。突っ込んでこられたら今みたいにそらせばいいだけだろう。いや、角があったとしても大きい角でなければ同じことだろうけど。

「すでにこれだけできているんだ。もう少し自信を持て。んじゃ、魔素纏いの次の段階を教えるぞ。」

「あ、そうだったね。どんなことするの?」

今のハンマー攻撃ははちょっとこわかったけど魔法的なことで新しいのを試すのは楽しみだ。でもそれを覚えたらまたハンマーで、しかも今度はさらに手加減薄めで来るんだろうな。

「まぁ次の段階といっても簡単だ。要は今持ってるその剣にも魔素纏いさせるのさ。」

「剣に魔素纏い?なるほど・・・」

そういえば体には纏わせてたけど、武器に纏わせるってことは考えてなかった。やろうと思えばたぶんできただろうけど、意識がいってなかった。

「さらに、今勝手にやっていた魔素纏いも次の段階の一つだ。今まで使っていた魔素纏いはただ体を覆って防御するだけだったが、さっき使ったのはキオの身体能力を魔素にて補強し底上げしていたからな。」

「え?」

あれ、魔素纏いって今まで僕が使ってたのは身体能力向上はなかったってこと?というか、今のは逆に向上してた?気づかなかったけど。

「気づかなかったのか?」

「うん、ぜんぜん。前のと同じようにしか使ってなかったつもりだよ。」

「そうなのか?ちょっと今まで道理に魔素纏いしてみてくれ。」

「うん、わかった。」

体全体に魔素纏いするのはずっとやってきた訓練で一瞬だ。ずっと纏い続けていると魔素の消費量もきついし、このすぐ纏うってのももっと早くなるようにと、今は纏ったり外したりするように言われてる。

「よし、そのままさっき俺が打ち込んできたときくらいに魔素纏いを強化してみろ。」

「え、や、やってみる。」

「うまくできそうにないなら打ち込んでやるから安心しろ。」

まったく安心できない言葉を受けてできるだけさっきのことを思い出しながら魔素纏いを全開にする。うまくはいってると思うけど、身体能力どうこうの感じは全然感じない。動けば変わるかな?

「うーん、これで身体能力上がってるの?ちょっと動いてみていい?」

「あぁ、いいぞ。」

僕はとりあえずと木剣を振ってみる。縦ぶり、横降り、斜め切りとやってみたけど特に一連の動作が早くなった感じはしない。いや、魔素纏いしてない時よりはもちろん早いけど、いつもの魔素纏いとは変わらない。

「なるほど、そういうことか。もういいぞ。」

「な、なんかわかったの?」

「いや、簡単なことだ。今までの魔素纏いの時点で底上げするための力を混ぜてたんだ。んで、今の魔素纏いはむしろさらに防御に徹底したものってことだ。さすがキオだな。」

「え?え?よくわからないけど、身体能力向上は前の出も出来てるってこと?」

「まぁそういうことだ。それより次ぎ、木剣に魔素纏いさせてみろ。今のお前なら余裕でできるはずだ。」

なんか話を切られちゃったけど、要するに魔素纏い全開にしてたら防御力は向上するらしい。おっと、それについて考えてる暇はない。さっさと木剣に魔素纏いさせないと。
指にだけ魔素纏いさせて外した時のように、今度は持った剣にも纏うようにさらに広げていく。体と違って感覚がちょっとわかりづらいけど、広げていけてる感じはなんとなくある。

「よし、さすがキオ。これも楽々だな。」

「あ、うまくできてる?体はまだわかるけど、剣だとどうしてもわかりづらくて。」

「そうか、しっかりとできているが自分で感覚がわからないと使いづらいだろうな。だがこれっばっかりは慣れだ。何度も纏わせて慣れろ。特に、今はしまってるがお前の専用の剣のほうにな。」

「うん、わかった。」

なんかそれってまるで剣を体の一部だと思うみたいな感じでちょっとかっこいい。そんなのんきなことを思えたのはガロが次の訓練内容をいうまでだった。

「よし、じゃあさっそく武器にまで纏わせられたわけだからな。さっきよりも少し力を入れるぞ。しっかり受け流せよ。」

「ひっ!そ、そんな、さっきよりも振りかぶってる!」

「さっきより力を入れるって言っただろ!」

その勢いのままたたき釣るために振りぬかれるハンマーを、必死で魔素纏いを全開に剣で受けて流そうとする。さっきよりも確かに勢いも威力もあったはずなのに、さっきよりもなんだか軽く感じだ。
ギシギシと木と木のこすれあう音もせず、思ったよりもあっけなくちょっと体をそらしただけで受け流せてしまった。ほっと魔素纏いを解いて握りしめていた手も緩める。

「おぉ、結構当てる気でいったのにな。」

「ちょ!」

「まぁいいじゃないか。それより今度はもっと強めに行くぞ。ほら、構えろ。」

「ま、まじ、ですか・・・」

僕がそういうころにはもう振りかぶっていた。あきらめ半分にまた剣にまで魔素纏いを広げて振りかぶってきたハンマーを受け流す。そんな気の休まらない受け流し訓練を夕暮れごろまで続けさせられた。
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