底辺VTuberのえん罪死刑転生、生前の理不尽さがポイント化されたので無双してきます

宮富タマジ

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第74話思い込みの勇者、真実の刃

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ゼスクは目を閉じ
静かに荒野に立っていた。

風が長い銀髪を揺らし
周囲には何もない静寂が広がっている。

その姿は冷酷ながらも威厳に満ちており
まるでこの世界そのものを支配するかのように

孤独な佇まいを見せていた。

「戻ってきたか…」

ゼスクは微かに笑みを浮かべ
ゆっくりと目を開いた。

背後に感じる気配

それは一度逃げ去ったはずの優斗だった。

ゼスクは背を向けたまま言葉を発することなく
ただその存在を感じ取っていた。

「……」

優斗は無言だった。

ゼスクはゆっくりと振り返り
優斗を見据える。

「死ぬ覚悟はできたか…勇者よ？」

ゼスクは冷ややかな目で優斗を見つめ
静かに口を開いた。

「……」

「聖剣士はどうした？あの女はもう動けないのか？」

彼の声には冷酷な余裕が漂っていた。

リアナのことを気にも留めないように話すその態度が
優斗の胸に怒りを燃え上がらせた。

優斗はゼスクを睨みつけながら
強く剣を握りしめた。

「リアナはここにはいない
お前とは俺が1人で決着をつける」

ゼスクは薄く笑みを浮かべ
「ほう、あの聖剣士を逃したのか
面白い」

と言いながら
その場で静かに立ち続けた。

優斗はゼスクを睨みつけながら
強く決意を込めた声で言った。

「俺はお前を倒して
必ずリアナのところに戻ると約束した

彼女を守り抜くために
ここでお前を終わらせる」

その言葉には
優斗の強い意志と覚悟が感じられた。

リアナへの想いと誓いが彼の胸に燃え上がり
ゼスクに立ち向かう力となっていた。

ゼスクは冷笑を浮かべ
優斗の言葉に答えた。

「死体にして送り届けてやろう
お前の屍を
あの聖剣士に見せてやるさ」

彼の声には冷酷さと嘲笑が込められており
その言葉が荒野に響いた。

ゼスクは余裕を見せつけるように剣を軽く振り上げ
電撃を纏わせた。

彼の瞳は冷たく光り
優斗をまるで獲物を見るような目で見据えていた。

「さあ、ここで終わるがいい
新生の勇者よ」

優斗はゼスクの挑発に応えるかのように
静かに剣を構えた。

その眼差しには決意が宿り
全身に緊張感が走る。

リアナとの約束を果たすため
ここで負けるわけにはいかない。

彼の体は自然と動き出し
ゼスクに向かって駆け出した。

「行くぞ…！」

優斗は鋭い声で叫びながら
全力で剣を振り下ろした。

先ほどまでの戦闘では考えられないスピードだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッズ！！！！

ゼスクはその速度に一瞬驚き
目を見開いた。

優斗の剣は閃光のように素早く
その軌跡を追うことができないほどだった。

「何…!?」

ゼスクは間一髪で体を後ろに引いて回避しようとしたが
完全にかわすことはできなかった。

優斗の剣先が彼の頬をかすめ
鋭い斬撃が浅い傷を刻んだ。

ゼスクは驚きの表情を浮かべながら
頬に触れた。

そこにはほんの少しだが
血が滲んでいた。

ゼスクは頬に触れたまま
驚きと興味を含んだ冷たい瞳で優斗を見据えた。

彼は一瞬
静かに考え込んだかのように口を閉ざし
次に言葉を発した。

「先ほどの戦闘とは
まるで別次元の速さだな。
どういうことだ？」

ゼスクは興味深げに言葉を続け
少し眉をひそめた。

「一体、何が変わった？
今まで手を抜いて戦っていたとは思えないが？」

その質問には
単なる疑問だけでなく
彼の不快感がにじみ出ていた。

優斗がこの短時間で見せた驚異的な成長に
ゼスクは説明を求めた。

彼にとって
優斗がここまで速くなる理由は理解できなかった。

優斗は剣を構えたまま
静かに息を整えた。

優斗は剣を構えたまま
静かにゼスクを見つめ返し
答えるように口を開いた。

「お前が気づいた通り
俺は急激に強くなった」

「！」

「俺のこの剣は『銀の閃光』
お前の主君である魔王モルゴスが人間に渡らないよう
大切に保管していた伝説の剣」

「何だと？」

「この剣はただの武器じゃない

俺が窮地に立たされても
冷静さを取り戻させてくれる

あの時
逃げる判断をさせてくれたのも
この武器だ」

ゼスクは優斗の言葉に少し眉をひそめた。

「その剣が…？」

優斗は力強く頷いた。

「そうだ。

俺が逃げていた間も
この剣は俺の中に知恵を注ぎ込み
取り乱す俺を支えてくれた

『銀の閃光』は
かつての勇者たちが使い続けてきた剣。

そのすべての知恵と力が
この剣には宿っている」

「……」

ゼスクは少し苛立った表情を浮かべながらも
冷静さを保ち続けた。

「この剣はこうも言ったぞ

冷静になれば俺の方が
お前より遥かに強い、とな」

「バカバカしい」
ゼスクは大笑いした。

「事実だと思う」

「なるほど…つまり
新生の勇者よ

お前はただの思い込みで
強くなった気でいるだけ
というわけだな」

優斗は強い決意を込めた目でゼスクを睨み返し
剣を再び構え直した。

「本当にそうなのか
試してみるといい」

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