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第70話 雷獄の戦士と勇者の試練

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ヴォイドハウンドとの戦いを終えた後も
優斗とリアナは1週間もの間
絶え間ない戦闘に身を置くこととなった。

深淵回廊を進むたびに
新たなモンスターが次々と襲いかかり
二人はその都度
剣と魔法を駆使して応戦し続けた。

昼夜の区別がつかない闇の中
彼らの体力は限界に近づきつつあったが
休む暇すら与えられなかった。

「来るぞ、リアナ!」

優斗が前方に迫る敵の気配を感じ取ると
リアナはすぐに聖剣を構えた。

影の魔法を使って敵の背後に回り込み
素早く仕留める。

しかし
敵は一体で終わることはなく
群れを成して次々と押し寄せてくる。

「これでもか…!」

リアナが息を整える間もなく
また次の戦いが始まった。

彼らの連携は次第に洗練されていったが
その一方で
お互いが恋人同士であることを
意識する余裕すらなかった。

戦うことが優先され
日々の生存が唯一の目標となっていた。

時折、互いに視線を交わすことはあったが
それは次の戦術を確認するためのもの。

優しさや愛情は
その隙間には入り込む余地がなかった。

「まただ…戦うしかない」

優斗の言葉に
リアナは黙って頷いた。

彼らはただ
生き延びるために剣を振り続ける日々を送っていた。

1週間の激しい戦いを終えた二人が
ようやくひと息つこうとしたその時
空気が一変した。

突然
深淵回廊全体が不気味に明るくなり
雷鳴のような轟音が響き渡った。

「この気配…まさか!」

優斗は剣を構え
周囲を警戒しながらリアナに目をやった。

リアナもすでに聖剣を手にし
緊張の表情を浮かべている。

「優斗様、何かが近づいています…」

リアナの声には焦りが感じられた。

その瞬間
目の前に閃光が走り
電撃のエネルギーが迸った。

雷鳴とともに現れたのは
雷を纏った魔族
ライデス・ゼクスだった。

漆黒の鎧に銀髪をなびかせ
赤紫の瞳で二人を冷徹に見下ろす。

「ふん…これが魔王の命令で追うべき相手か
思っていたよりも
見た目は大したことがないな」

彼の声は冷たく
軽蔑に満ちていた。

ゼクスはゆっくりと歩みを進めると
雷が彼の周囲でまるで生き物のように跳ね回った。


「貴様が黙示録の四凶星の一人…
『雷獄のゼクス』か!」

優斗は剣を構えたまま
鋭い視線をゼクスに向けた。

「その通りだ新生の勇者よ。
そしてそちらは聖剣士か。
どちらにせよ
魔王様の敵となるなら
消し去らねばならない存在だ」

ゼクスの目は冷ややかに光り
手を軽く挙げると
指先に雷が集まり始めた。

「リアナ、気をつけろ
こいつはただの敵じゃない…!」

「ええ、優斗様
わかっています!」

その瞬間
ゼクスは笑みを浮かべ
空中に雷の刃を生み出して二人に向かって放った。

「逃げる隙は与えない…『ライトニング・スラッシュ』!」

轟音と共に放たれた雷の刃は
まるで光そのもののような速度で二人に迫る。

優斗はすぐに剣を掲げて防御の構えを取ったが
その衝撃は強烈だった。

「ぐっ…!」

一撃の重さに
優斗は後退を余儀なくされる。



「影よ私を守れ…!」

リアナは咄嗟にシャドウシフトで姿を消し
雷の刃を避けたが
ゼクスの攻撃は止まらない。

「ふん…手応えがなさすぎるな。
どうだ新生の勇者?
少しは楽しませてくれるのか?」

ゼクスは冷酷な笑みを浮かべながら
再び電撃を纏った手をかざし
次の攻撃の準備を始めた。


ゼクスの冷たい笑みが二人を挑発するように浮かんだ。

優斗はその視線に耐えながら
リアナに視線を送った。

「リアナ、同時に攻撃を仕掛けるぞ!」

「わかりました、優斗様!」

二人は即座に息を合わせ
優斗は剣を高く掲げ
剣に光の力を込めた。

リアナもまた
聖剣に闇の力を纏わせ
影の中から一瞬でゼクスの背後に回り込んだ。

「行くぞ、リアナ!」
「はい!」

優斗は『ブレイジング・スター』を発動させ
剣から放たれた閃光がゼクスに向かって一直線に走った。

同時に
リアナは『シャドウシフト』で
ゼクスの背後に瞬間移動し
聖剣を振り下ろした。


だが、ゼクスはまるで二人の攻撃を予測していたかのように
微動だにしない。

その瞬間
彼の周囲に電撃のバリアが展開され
二人の攻撃がそのバリアにぶつかった瞬間
激しい衝撃音が響いた。


「何…!?」

優斗の光の剣は
ゼクスの電撃の防御に弾かれ
リアナの影の力を纏った一撃もまた
彼のバリアに飲み込まれた。

二人の攻撃は一切届かず
ゼクスは無傷のままだった。

「お前たちの力では
私の雷の結界を破ることはできない」


ゼクスは軽く手を振り払うような仕草で
二人の攻撃を無視し
冷ややかな視線を二人に向けた。



「くっ…何て防御力だ…!」

優斗はその圧倒的な力に驚愕し
歯を食いしばった。

リアナも同じく息を切らしながら
剣を握り直す。

「これでは…全く攻撃が通じない…」

「さあ、次は私の番だ」

ゼクスは軽く指を鳴らし
電撃が二人を包み込むように広がった。

「覚悟はいいか?」
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