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第57話 運命を変えた剣

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シグリッド・レイヴンは優斗を見下すように睨みつけながら
冷笑を浮かべて言った。

「その気丈さ、見上げたものだな」
「……」
「だが、睨むだけでは勝てはしないぞ。優斗よ」

言葉の端々に嫌味が滲んでいる。



シグリッド・レイヴンは一瞬で優斗の背後に回り込み
冷酷な笑みを浮かべた。

「お前には
この速さについてこれないだろう?」

彼の言葉は優斗に対する挑発であり
同時に自分の優位を誇示するものだった。

優斗は背後の動きを捉えようと必死になるが
シグリッド・レイヴンの速さには追いつけなかった。

シグリッド・レイヴンの斬撃が
音もなく優斗の背中に深く入り込んだ。

その瞬間
鋭い痛みが優斗の全身を貫き
血が滲み出して背中を赤く染め始めた。

優斗は苦痛に顔を歪ませながらも
必死に耐え
倒れることなく立ち続けようとしたが
その足元は揺らぎ始めていた。

シグリッド・レイヴンは冷笑を浮かべながら
その姿を見下ろしていた。

リアナは
優斗の背中に深く入った斬撃を目の当たりにし
悲鳴を上げた。

「ああ!」

その声には
驚愕と絶望が混じり
彼女の心を締め付けるような痛みが伝わってきた。

リアナの目には
今にも涙が溢れそうで
彼女の手は震えていた。

優斗が倒れるのではないかと
胸が張り裂けそうな思いで見つめていた。

シグリッド・レイヴンは優斗を見下ろし
冷たい笑みを浮かべた。

「これが実力差だ」

と嘲笑うように言い放った。

その言葉には
圧倒的な自信と優越感が滲んでおり
優斗やリアナに対する侮辱が込められていた。

彼の声は
まるで優斗の苦しみを楽しむかのように響き渡った。

優斗は背中に深く入った斬撃の痛みに顔を歪めながらも
倒れまいと必死に踏ん張った。

血が背中から滲み出し
視界が少しずつぼやけていくのを感じながらも
彼は歯を食いしばり
意識を保とうと全力で耐えていた。

「ここで倒れるわけにはいかない…リアナを守らなければ…」

と心の中で何度も繰り返し
身体が崩れ落ちそうになるのを必死に堪えた。

彼の決意は
シグリッド・レイヴンの圧倒的な力に抗う最後の砦であった。

シグリッド・レイヴンは優斗の姿を見て
薄笑いを浮かべながら言った。

「ほう、まだ倒れないとはな」
「……」

「さすがはリアナが見込んだ男だけのことはある。
だが、その執念
痛みを堪えて立ち続けるその姿
実に滑稽だ」
「……」



「何を守るつもりだ?このままでは無駄死にになるだけだというのに」

彼の声には嫌味と冷笑がたっぷりと含まれていた。


シグリッド・レイヴンは冷たい目で優斗を見下ろし
ゆっくりと剣を振り上げた。

「では、体を真っ二つにしてやろう
その頑張りが無意味であることを
今ここで証明してやる」


鋭い剣先が優斗に向かい
振り下ろされる寸前
彼の声には残酷な決意が込められていた。


リアナは恐怖で体が凍りつき
目をぎゅっと閉じた。

(優斗様…お願い…私を置いて逃げて)

心の中で叫ぶも
声にならなかった。

剣の振り下ろされる音が耳をつんざく。

胸を突き刺すような恐怖と絶望が
彼女の体を支配していった。



シグリッド・レイヴンが優斗の頭上に剣を振り下ろした瞬間


ーーーーーーーーーーーーーーーッガ!!!!

優斗は一瞬の隙をついて
剣を横に構え
その一撃を弾いた。

金属がぶつかり合う鋭い音が響き
火花が飛び散る。

シグリッド・レイヴンは驚きに目を見開いたが
すぐに不敵な笑みを浮かべた。

「ほう、まだ力が残っているとはな…」


彼の声にはわずかな驚愕が混ざりつつも
戦いの興奮が明らかだった。


優斗はシグリッド・レイヴンを見据え
静かに言った。

「この剣が何の剣か知っているか?」
「?」

その言葉にシグリッド・レイヴンの眉が動いた。

優斗は剣を掲げ
その刃に宿る光を見せつけるように続ける。

「これは『銀の閃光』」
「ん?」


「お前の主人である魔王モルゴスが大切に保管していた剣だ」
「何だと?」


「かつて勇者が漆黒の騎士団長ヴァルガスを倒した時に手に入れたのさ」
「……」
シグリッド・レイヴンの表情が一瞬硬くなる。

優斗はさらに言葉を重ねた。

「この剣には
魔族を討つ力が込められているんだ。
お前のような存在を
この銀の閃光で葬るためにな」

優斗は剣を握りしめ
さらに強く言い放った。

「それに、この剣。
先ほどからやたらと輝きを増している。
力がどんどん俺に与えられている」

剣の光はますます明るくなり
まるで優斗の心と共鳴するかのように輝きを放つ。

シグリッド・レイヴンはその光景を見て
顔にわずかな驚愕を浮かべた。

「剣が…お前に力を与えているだと?」

優斗は自信に満ちた表情で
シグリッド・レイヴンを睨みつけながら
言葉を続けた。

「そうだ。
この剣は俺を選んだんだ。
お前を倒すために
この力を託してくれているんだよ」

シグリッド・レイヴンは嘲笑いながら剣を振り下ろした。

「その程度の力で何が変わるというのか?」

しかし
彼の剣は優斗に触れることなく
弾かれた。

驚愕の表情がシグリッド・レイヴンの顔に浮かぶ。

「何だ…?先ほどまでの攻撃が通じないだと?」

優斗は余裕の表情で一歩前に進み
銀の閃光を構えた。

「この『銀の閃光』がお前の攻撃を。
いやお前の全てを俺に教えてくれる」
「なんだと?」

「だから、この間にも俺自身がどんどん強くなっていくんだ」
「くっ!」

「覚悟しろ、シグリッド・レイヴン」

シグリッド・レイヴンはその言葉にますます焦りを感じたが
同時にかつてない不安を抱き始めた。

「そんな…馬鹿な!」

優斗は剣を軽く一振りしながら
冷静な声でシグリッド・レイヴンに言った。


「この『銀の閃光』は
魔王モルゴスが人間に渡らないよう
大切に保管していた伝説の剣だ。
俺がこれを手に入れた時
すでにその運命は変わっていたんだよ」

シグリッド・レイヴンは優斗の言葉に目を見開き
動揺を隠せない。
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