上 下
23 / 100

第22話 アルセリオンへの旅路

しおりを挟む
東方帝国アルセリオンへの道は険しく
険しい山々や広大な草原が続いていた。


俺は心の中でリアナを救う決意を再確認しながら
仲間たちと共に進んでいた。


彼の隣には
元冒険者のカインと
城兵のフェルナンドが静かに歩いている。


二人は俺の忠実な配下となり
共に戦う仲間であった。


「優斗様
この先にアルセリオンの
城門が見えてきました」


カインが前方を指し示しながら言った。
彼の声には緊張と期待が混じっていた。


「分かった、気を引き締めて行こう」

俺は頷き
彼の言葉に答えた。

彼らの目的はただ一つ
魔王の四天王の一人
グレイボを倒し
リアナの体内に流れる猛毒を
解除することだ。


この毒はグレイボの命にリンクされており
彼を倒さなければ解除されない仕組みになっている。

「フェルナンド
お前も心の準備はいいか?」

俺はフェルナンドに目を向けた。

「はい、優斗様。
リアナ様を救うために全力を尽くします」

フェルナンドは決意を込めて答えた。



リアナは聖剣士であり
その名はフロレンシアだけでなく
広く知られている。

彼女は魔王城の地下牢に監禁されており
猛毒に冒されている。


カインとフェルナンドもリアナを英雄として尊敬しており
彼女を救うためなら命を賭ける覚悟だった。


「リアナ様の勇気と強さを思えば
私たちも負けるわけにはいきません」


カインは拳を握り締めた。
「そうだ、彼女のために戦うんだ」

俺は力強く頷いた。


険しい山道を進みながら
次第にアルセリオンの城門に
近づいていった。


城門は巨大で
その向こうには広大な帝国の領土が
広がっている。

アルセリオンは強力な軍事力と
優れた魔法技術を持つ大国であり
その影響力は周辺の国々にも及んでいた。


しかし、アルセリオンの街並みは
かつての栄華とは程遠かった。


街は激しい戦闘の跡が残されており
建物は破壊され
道には瓦礫が散乱していた。




魔族の邪悪な造形物がそこかしこに立ち並び
その不気味な姿は住民たちに恐怖を与えていた。



「ここがかつてのアルセリオンか…」
カインが悲しげに呟いた。


「これも全てグレイボの仕業か。許せない」

フェルナンドは怒りを露わにした。



「俺たちがここに来たのは
この状況を変えるためだ
油断せず進もう」


優斗は冷静に言った。



街を進み
やがてアルセリオン城の跡地にたどり着いた。

かつての壮麗な城は完全に解体され
その代わりに新たな要塞
ナクシアム城が建設中だった。


巨大な石材と鉄骨で構成されたその城は
圧倒的な威圧感を放っていた。


「これがグレイボが築いた新たな要塞
ナクシアム城か…」

カインが呟いた。

「見ろ! あの不気味な造形物
魔族の力が込められているに違いない」

フェルナンドが指差した先には
城の周囲に

立ち並ぶ邪悪な彫像や奇妙な装飾品が見えた。


「ここが最後の戦いの場所だ
リアナを救うために
我々はこの城を攻略しなければならない」

俺は剣を握りしめた。

「優斗様、ここからどう進みますか?」

カインが尋ねた。


「まずは城の外周を確認し
入り口を探そう
無闇に突入するのは危険だ」

俺は慎重に指示を出した。
三人は城の周囲を慎重に調査しながら進んだ。

敵の警備は厳重で
見張りの魔族たちが頻繁に巡回していた。

「ここから侵入できそうだ」

カインが小声で報告した。


「よし、慎重に進もう
見つかればすぐに対処する」

俺はカインの指示に従い
静かに進んだ。


息を潜めながら進み
やがて城の中へと足を踏み入れた。

内部はさらに不気味で
魔族の邪悪な気配が漂っていた。


「グレイボはナクシアム城の最上階にいるに違いない
気を引き締めて進もう」


優斗は前方を見据えながら言った。


「了解です、優斗様」

カインが応じた。


「リアナ様のために
全力を尽くします」

フェルナンドも決意を新たにした。
彼らは廊下を進み
時折現れる敵を迅速に片付けながら進んだ。

カインは素早い身のこなしで敵を翻弄し
フェルナンドは重い盾で敵の攻撃を
受け止めながら前進した。



「敵の数が増えてきた、注意して進め」

俺は前方を見据えながら指示を出した。

「了解です、優斗様」

カインは剣を構え直し
次の敵に向かって突進した。



「私も続きます」

フェルナンドも盾を構え
俺の後に続いた。



城内の通路は次第に狭くなり
暗闇が彼らを包み込んだ。

前方に大きな扉が見え始める。

やがて
彼らはその巨大な扉の前に立ち止まった。


扉の向こうには
巨大なエネルギーを感じる。


「これ、ケルベロスですよ」


カインが低い声で言った。

「ケルベロス?」

優斗は眉をひそめた。


カインは恐怖にみちた表情で説明を始めた。


「三つの頭を持つ巨大な犬です!
各頭は異なる能力を持ち
一つは炎を吐き
もう一つは雷を放ち
最後の一つは氷を操る
超高速移動のモンスターです!」



フェルナンドは剣を握りしめ
決意を込めて言った。

「リアナ様のために
何としてもこのモンスターを倒さなければなりません」


「そうだ、準備はいいか?」

俺は二人に問いかけた。


「はい、優斗様
全力で戦います!」

カインとフェルナンドは力強く答えた。


俺は深呼吸をし
扉に手をかけた。

「行くぞ、みんな!」


扉がゆっくりと開かれると
暗闇の中から三つの赤い目が彼らを見つめていた。
ケルベロスの巨大な姿が姿を現し
その凄まじいオーラが俺たちを圧倒した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

お飾りの私を愛することのなかった貴方と、不器用な貴方を見ることのなかった私

歌川ピロシキ
ファンタジー
 ディスコミュニケーションが生み出す悲劇に閉じ込められた、あわれな三つの魂の物語。 ----------------------  わたくしはお飾りの妻、名ばかりの侯爵夫人でした。  思いもかけない求婚のお申し出に、あの女嫌いの「氷の貴公子」エルネスト・タシトゥルヌ様のお心を射止めたのだと有頂天になったのはつかの間。旦那様には他に愛する方がいらっしゃったのでございます。  それでもわたくしどもは表向き理想の夫婦として社交界に君臨しておりました。旦那様にとって唯一無二のあのお方が、わたくしを庇って生命を落とされた、あの日までは。 --------------- ビッチ×クズ×ヤンデレ製造機  それぞれに弱くて脆い心、ドロドロした醜い欲をかかえたままの三人が懸命に生きながらすれ違い、運命に流される様をご照覧あれ。 --------------- 四宮迅さん(https://twitter.com/4nomiyajin)に表紙イラストを描いていただきました。 実物はA4サイズの大作で、透明感のある絶妙な色遣いといい繊細なタッチといい、見れば見るほどうっとりしてしまうほど美麗ですがサイズの制約があるのでこちらが限界です( ノД`) -----------  読んでくださってありがとうございます<(_ _)>  別作品のネタを考えていて唐突に思い付きました。わりとありがちな何番煎じかのテンプレです。児童に対する性虐待や性暴力の表現が一部にあります。露骨な性表現はありませんが、苦手な方はご自衛ください<(_ _)>  以前アルファポリスに掲載していた別名の作品を構成を見直し、大幅に改稿したらほとんど別作品になりました。微妙にBL要素があります。

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

【完結】共に生きていこう。幸せにする。と言ったのに約束は破られ離縁されました

山葵
恋愛
「君だけを愛してる。どうか私と共に生きていこう。必ず幸せにする」 3年前に貴方が私にしてくれた求愛の言葉。 私は、それを信じて貴方と結婚したのに…。

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

処理中です...