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第10話 剣の死神

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俺はその後、2時間ほど睡眠を取り
旅支度を済ませた。

スマホカメラを起動し、部屋を出ようとした時

突然、誰かが扉を叩く音が響いた。

「優斗、いるか!」
外からの声が聞こえた。

「その声は、武器屋のグレンさん?」
「ああ、そうだ!俺だ」

グレンの声が返ってきた。

俺は急いで扉を開けた。
すると、グレンは顔を真っ赤にして、息を切らしていた。

「ど、どうしたんですか?」

グレンは大声で叫んだ。
「フロレンシア城の王が魔族に殺された!」

「え!?」
「聞くところによると、魔王の使いが、城に来たみたいなんだ」
「魔王の使いが?」

「『剣の死神』と恐れられる暗黒騎士団あんこくきしだんだ。20体ほど引き連れているって城から逃げてきた人に聞いた」

「!!!」


(そういえば、YouTubeのステータス画面に『剣の死神』の注意警告が表示されていたな)


「『剣の死神』のリーダーのグリムズって奴が恐ろしく強いみたいなんだ。
そいつが生贄いけにえを300人差し出すよう、王に要求してきたみたいで……。王が断った瞬間、心臓しんぞうつらぬかれたみたいだ」

「そ、そんな……」

「グリムズって化け物の魔力で、街の中央に強制的に集められた人々がいる!」
「!」
「広場に集められた人々は逃げられないらしい。緊張きんちょうがピークに達しているってことだ」
「行かなきゃ!」
俺はさけんだ。

するとグレンが
「いや、だめだ!」

「え? 何を言っている!?」
「行ったら、お前も殺されるぞ!」
「俺は戦うためにここにいる!」


「今のお前じゃ絶対に勝てない、というかお前は戦えない!」
大声で叫んだグレンの言葉には
絶望と不安が混じっていた。


俺は一瞬言葉を失ったが、すぐに思い直した。

「リアナを救うために、戦わなければならない」

グレンは首を振る。
「いや、だめだ」
「なんだってっ! じゃあ、街の人を見捨てろってのかよっ!?」
俺は怒りをまじえて返した。

「そうじゃない!」
「!」

「お前がいつか、大きな力を身につけたら、俺たち助けてほしい。でもそれは今じゃない」
「!」
「優斗、落ち着いて考えてみろ!今のお前の戦闘能力はゼロだ」
「う……」

俺は返す言葉がなかった。


「だが、『銀の閃光せんこう』の使い手が現れた、それがお前だ!優斗っ!」
「…………」

「お前が希望であり、お前が勇者だ」
「……」

グレンは俺に背を向けた。
「付いてこい。この裏通りに地下通路がある。 そこを伝っていけば森に出られる」
「俺は行かない。 ここに残って戦う!」
「…………」


グレンは深く息を吐き、真剣な表情で俺を見つめた。「分かった。でも、無策では勝ち目がない。まず、情報を集めよう。暗黒騎士団の力を知る必要がある」
「そうだな……」
俺はうなずき、グレンの提案に従うことにした。

その時だった!

ーーーーーーーーーーーーーッ!!!!

グレンは俺の背後に回り、俺の口をふさいだ。

グレンが手に持っている物
クロロフォルムだろうか?
全身の力が抜け、俺はその場に倒れ込んだ。

意識が遠のく中で、グレンの涙がこぼれ落ちるのが見えた。

「ありがとうよ、優斗。この街のため、そしてリアナ様を助けたいって、お前の気持ち。本当に嬉しかった」
「…………」

だめだ、意識が薄れる。
「わかってくれ。俺たち人間界にとって、お前を失うわけにはいかないんだ。やっとお前という『銀の閃光』の使い手が現れたんだ」
「…………」

「俺たちにとって、思わぬ幸運だった」
「…………」

「いいか、この街には絶対に戻るな。お前が目覚める頃には、俺もおそらくは生きていない」
「ーーーーッ!!!」

行かないでくれ!グレンさん
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