上 下
3 / 100

第2話 VTuber異世界転生2

しおりを挟む
「どうしたんだろ?」

市場では商人が物を売っているものの
活気が感じられない。 

子供たちは遊び回ることなく
大人の後ろに隠れるように歩いている。

「一体何があったんだ?」

俺は街の様子に不安を覚えつつ
通りの一角にいた老人に声をかけた。

「すみません、この街で何かあったんですか?」

老人は俺の方を見上げ
深いため息をついた。

「お前さん、何も知らんのか?」
「はい。 この街にきたばかりで。一晩中、森の中を彷徨さまよっていたんです」

老人はもう一度深いため息を吐き

「実はな。 この街の美しき英雄であるリアナ様が、魔王に捕まってしまったんじゃよ。そのせいで皆、不安でたまらないんじゃ」
「リアナ様……? って誰ですか?」

俺が聞き返すと老人は

「ん? リアナ様を知らんのか?」
「は、はい……」
「なんと、平和ボケをしとるんじゃ!」
「すみません……」
「リアナ・ミスティアは勇者パーティの一員で、この街のみならず、人間界にとっても重要な聖剣士であるのだぞ!」

老人が俺に詰め寄ってきた。

「あ、そ、そうだったんですね……」
「しっかりしておくれ、若いのだから」
「はあ……」
「リアナ様は容姿端麗ようしたんれいで、その美貌びぼうも人々の希望の象徴である。 そのようなお方が魔王に捕まってしまったのじゃ。 わしらにとっては一大事なんじゃぞ!」
老人は俺の顔をにらんでめ寄ってきた。

「で、そのリアナって人、もうちょっと詳しく聞かせてもらえないですか?」

老人は悲しそうに首を振った。

「リアナ様は1年ほど前、勇者様とともに魔王討伐とうばつに向かった。 しかし、どうやら2ヶ月ほど前になるだろうか。魔王に拘束されて、闇帝国の牢屋ろうごくに監禁されてしまったのじゃ」
「え? それは大変ですね..」
「うむ..」
「なるほど……。 で、肝心かんじんの勇者様は? 他の仲間たちはどうなったのですか?」
「勇者のレオンハルト様はリアナ様を見捨てて、逃げて来たそうじゃ」
「え? 勇者が仲間を見捨てて逃げてきた? 勇者をそこまで追いめる魔王ってそんなに強いのですか?」

老人は怯えた表情で俺の方を見た。

「うむ。想像をはるかに超える強さだったと聞いておる」
「う……」
「勇者様は自分の城に戻っておられる。 しかし、魔王の実力を思い知らされ、呆然自失ぼうぜんじしつ。恐怖のあまり、そのまま引き篭もってしまったそうじゃ」
「……」

(おいおい、勇者のくせにカッコ悪いな。 しっかりしてくれよ勇者さん……。 まあ、俺も人のこと、どうこう言える人生じゃなかったけど……)

俺はため息をついた。

「勇者様は時々、死にたい、と仰っているらしい」
「……」


(えー、まじかよ……。人間界やばくねーか?)


「あの勇敢ゆうかんなレオンハルト様をあそこまで追い詰めるとは……。 魔王はとんでもない強さだということじゃ」
「……」
「勇者様と3名の仲間、重戦士じゅうせんしガルド様、狼戦士ろうせんしフェンリル様。 そして我らが英雄、聖剣士せいけんしリアナ様。 彼らは人間界では突出した戦闘能力を持っている。 強大な魔王と渡り合えるのは彼らしかおらん、はずじゃった……」
「な、なるほど..」
「もし、勇者パーティがいなくなったら、人間界は終わりじゃ」
「む……」


(それ以上、聞きたくないような……)


「他2人の勇者パーティである重戦士じゅうせんしガルド様と狼戦士ろうせんしフェンリル様は現在、行方不明じゃ。 生存は絶望視されている」
「何だって!?そ、それって普通にやばいですよね?じゃあ、そのリアナ様って人が殺されたら人類終わり?」
「無論じゃ。 魔王に収監しゅうかんされているリアナ様だけが、唯一の希望なのじゃよ。 勇者様は大怪我をされている上に、精神的にも戦える状態ではないと聞く。 本当に心配なのじゃよ」
「今のこの状況って、心配とかっていうレベルじゃないですよね!? 助けに行かないと、人間界やばいじゃないですかっ!」
「確かに、そうじゃ」
「じゃあ、みんなで」
「……」

老人は少し黙り込んだ。

「ど、どうされたのですか?」
「すでに手を尽くしたが、無駄だったのじゃ…」
「は?」

老人は悲壮な表情で語り始めた。

「かつて、勇者レオンハルト様の母国、アルカディア王国は、魔王の魔族との戦いで全兵力の90%を失ったのじゃ…」
「え?」
「つまり、もう兵を派遣する力は残されておらんのじゃ…」
「!!!!」

(えーーーっ、マジかよ!ヤバすぎるだろ!)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

階段落ちたら異世界に落ちてました!

織原深雪
ファンタジー
どこにでも居る普通の女子高生、鈴木まどか17歳。 その日も普通に学校に行くべく電車に乗って学校の最寄り駅で下りて階段を登っていたはずでした。 混むのが嫌いなので少し待ってから階段を登っていたのに何の因果かふざけながら登っていた男子高校生の鞄が激突してきて階段から落ちるハメに。 ちょっと!! と思いながら衝撃に備えて目を瞑る。 いくら待っても衝撃が来ず次に目を開けたらよく分かんないけど、空を落下してる所でした。 意外にも冷静ですって?内心慌ててますよ? これ、このままぺちゃんこでサヨナラですか?とか思ってました。 そしたら地上の方から何だか分かんない植物が伸びてきて手足と胴に巻きついたと思ったら優しく運ばれました。 はてさて、運ばれた先に待ってたものは・・・ ベリーズカフェ投稿作です。 各話は約500文字と少なめです。 毎日更新して行きます。 コピペは完了しておりますので。 作者の性格によりざっくりほのぼのしております。 一応人型で進行しておりますが、獣人が出てくる恋愛ファンタジーです。 合わない方は読むの辞めましょう。 お楽しみ頂けると嬉しいです。 大丈夫な気がするけれども一応のR18からR15に変更しています。 トータル約6万字程の中編?くらいの長さです。 予約投稿設定完了。 完結予定日9月2日です。 毎日4話更新です。 ちょっとファンタジー大賞に応募してみたいと思ってカテゴリー変えてみました。

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ
ファンタジー
 数年前に没落してしまった元貴族令嬢のエリーゼは、市井で逞しく生きていた。  元貴族令嬢なのに、どうして市井で逞しく生きれるのか…?それは、私には前世の記憶があるからだ。  毒親に殴られたショックで、日本人の庶民の記憶を思い出した私は、毒親を捨てて一人で生きていくことに決めたのだ。  そんな私は15歳の時、仕事終わりに赤ちゃんを見つける。 「えぇー!この赤ちゃんかわいい。天使だわ!」  こんな場所に置いておけないから、とりあえず町の孤児院に連れて行くが… 「拾ったって言っておきながら、本当はアンタが産んで育てられないからって連れてきたんだろう?  若いから育てられないなんて言うな!責任を持ちな!」  孤児院の職員からは引き取りを拒否される私…  はあ?ムカつくー!  だったら私が育ててやるわ!  しかし私は知らなかった。この赤ちゃんが、この後の私の人生に波乱を呼ぶことに…。  誤字脱字、いつも申し訳ありません。  ご都合主義です。    第15回ファンタジー小説大賞で成り上がり令嬢賞を頂きました。  ありがとうございました。

(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる

青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。 ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。 Hotランキング21位(10/28 60,362pt  12:18時点)

完結・私と王太子の婚約を知った元婚約者が王太子との婚約発表前日にやって来て『俺の気を引きたいのは分かるがやりすぎだ!』と復縁を迫ってきた

まほりろ
恋愛
元婚約者は男爵令嬢のフリーダ・ザックスと浮気をしていた。 その上、 「お前がフリーダをいじめているのは分かっている! お前が俺に惚れているのは分かるが、いくら俺に相手にされないからといって、か弱いフリーダをいじめるなんて最低だ! お前のような非道な女との婚約は破棄する!」 私に冤罪をかけ、私との婚約を破棄すると言ってきた。 両家での話し合いの結果、「婚約破棄」ではなく双方合意のもとでの「婚約解消」という形になった。 それから半年後、私は幼馴染の王太子と再会し恋に落ちた。 私と王太子の婚約を世間に公表する前日、元婚約者が我が家に押しかけて来て、 「俺の気を引きたいのは分かるがこれはやりすぎだ!」 「俺は充分嫉妬したぞ。もういいだろう? 愛人ではなく正妻にしてやるから俺のところに戻ってこい!」 と言って復縁を迫ってきた。 この身の程をわきまえない勘違いナルシストを、どうやって黙らせようかしら? ※ざまぁ有り ※ハッピーエンド ※他サイトにも投稿してます。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 小説家になろうで、日間総合3位になった作品です。 小説家になろう版のタイトルとは、少し違います。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました

お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。

処理中です...