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第2話 VTuber異世界転生2
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「どうしたんだろ?」
市場では商人が物を売っているものの
活気が感じられない。
子供たちは遊び回ることなく
大人の後ろに隠れるように歩いている。
「一体何があったんだ?」
俺は街の様子に不安を覚えつつ
通りの一角にいた老人に声をかけた。
「すみません、この街で何かあったんですか?」
老人は俺の方を見上げ
深いため息をついた。
「お前さん、何も知らんのか?」
「はい。 この街にきたばかりで。一晩中、森の中を彷徨っていたんです」
老人はもう一度深いため息を吐き
「実はな。 この街の美しき英雄であるリアナ様が、魔王に捕まってしまったんじゃよ。そのせいで皆、不安でたまらないんじゃ」
「リアナ様……? って誰ですか?」
俺が聞き返すと老人は
「ん? リアナ様を知らんのか?」
「は、はい……」
「なんと、平和ボケをしとるんじゃ!」
「すみません……」
「リアナ・ミスティアは勇者パーティの一員で、この街のみならず、人間界にとっても重要な聖剣士であるのだぞ!」
老人が俺に詰め寄ってきた。
「あ、そ、そうだったんですね……」
「しっかりしておくれ、若いのだから」
「はあ……」
「リアナ様は容姿端麗で、その美貌も人々の希望の象徴である。 そのようなお方が魔王に捕まってしまったのじゃ。 わしらにとっては一大事なんじゃぞ!」
老人は俺の顔を睨んで詰め寄ってきた。
「で、そのリアナって人、もうちょっと詳しく聞かせてもらえないですか?」
老人は悲しそうに首を振った。
「リアナ様は1年ほど前、勇者様とともに魔王討伐に向かった。 しかし、どうやら2ヶ月ほど前になるだろうか。魔王に拘束されて、闇帝国の牢屋に監禁されてしまったのじゃ」
「え? それは大変ですね..」
「うむ..」
「なるほど……。 で、肝心の勇者様は? 他の仲間たちはどうなったのですか?」
「勇者のレオンハルト様はリアナ様を見捨てて、逃げて来たそうじゃ」
「え? 勇者が仲間を見捨てて逃げてきた? 勇者をそこまで追い詰める魔王ってそんなに強いのですか?」
老人は怯えた表情で俺の方を見た。
「うむ。想像をはるかに超える強さだったと聞いておる」
「う……」
「勇者様は自分の城に戻っておられる。 しかし、魔王の実力を思い知らされ、呆然自失。恐怖のあまり、そのまま引き篭もってしまったそうじゃ」
「……」
(おいおい、勇者のくせにカッコ悪いな。 しっかりしてくれよ勇者さん……。 まあ、俺も人のこと、どうこう言える人生じゃなかったけど……)
俺はため息をついた。
「勇者様は時々、死にたい、と仰っているらしい」
「……」
(えー、まじかよ……。人間界やばくねーか?)
「あの勇敢なレオンハルト様をあそこまで追い詰めるとは……。 魔王はとんでもない強さだということじゃ」
「……」
「勇者様と3名の仲間、重戦士ガルド様、狼戦士フェンリル様。 そして我らが英雄、聖剣士リアナ様。 彼らは人間界では突出した戦闘能力を持っている。 強大な魔王と渡り合えるのは彼らしかおらん、はずじゃった……」
「な、なるほど..」
「もし、勇者パーティがいなくなったら、人間界は終わりじゃ」
「む……」
(それ以上、聞きたくないような……)
「他2人の勇者パーティである重戦士ガルド様と狼戦士フェンリル様は現在、行方不明じゃ。 生存は絶望視されている」
「何だって!?そ、それって普通にやばいですよね?じゃあ、そのリアナ様って人が殺されたら人類終わり?」
「無論じゃ。 魔王に収監されているリアナ様だけが、唯一の希望なのじゃよ。 勇者様は大怪我をされている上に、精神的にも戦える状態ではないと聞く。 本当に心配なのじゃよ」
「今のこの状況って、心配とかっていうレベルじゃないですよね!? 助けに行かないと、人間界やばいじゃないですかっ!」
「確かに、そうじゃ」
「じゃあ、みんなで」
「……」
老人は少し黙り込んだ。
「ど、どうされたのですか?」
「すでに手を尽くしたが、無駄だったのじゃ…」
「は?」
老人は悲壮な表情で語り始めた。
「かつて、勇者レオンハルト様の母国、アルカディア王国は、魔王の魔族との戦いで全兵力の90%を失ったのじゃ…」
「え?」
「つまり、もう兵を派遣する力は残されておらんのじゃ…」
「!!!!」
(えーーーっ、マジかよ!ヤバすぎるだろ!)
市場では商人が物を売っているものの
活気が感じられない。
子供たちは遊び回ることなく
大人の後ろに隠れるように歩いている。
「一体何があったんだ?」
俺は街の様子に不安を覚えつつ
通りの一角にいた老人に声をかけた。
「すみません、この街で何かあったんですか?」
老人は俺の方を見上げ
深いため息をついた。
「お前さん、何も知らんのか?」
「はい。 この街にきたばかりで。一晩中、森の中を彷徨っていたんです」
老人はもう一度深いため息を吐き
「実はな。 この街の美しき英雄であるリアナ様が、魔王に捕まってしまったんじゃよ。そのせいで皆、不安でたまらないんじゃ」
「リアナ様……? って誰ですか?」
俺が聞き返すと老人は
「ん? リアナ様を知らんのか?」
「は、はい……」
「なんと、平和ボケをしとるんじゃ!」
「すみません……」
「リアナ・ミスティアは勇者パーティの一員で、この街のみならず、人間界にとっても重要な聖剣士であるのだぞ!」
老人が俺に詰め寄ってきた。
「あ、そ、そうだったんですね……」
「しっかりしておくれ、若いのだから」
「はあ……」
「リアナ様は容姿端麗で、その美貌も人々の希望の象徴である。 そのようなお方が魔王に捕まってしまったのじゃ。 わしらにとっては一大事なんじゃぞ!」
老人は俺の顔を睨んで詰め寄ってきた。
「で、そのリアナって人、もうちょっと詳しく聞かせてもらえないですか?」
老人は悲しそうに首を振った。
「リアナ様は1年ほど前、勇者様とともに魔王討伐に向かった。 しかし、どうやら2ヶ月ほど前になるだろうか。魔王に拘束されて、闇帝国の牢屋に監禁されてしまったのじゃ」
「え? それは大変ですね..」
「うむ..」
「なるほど……。 で、肝心の勇者様は? 他の仲間たちはどうなったのですか?」
「勇者のレオンハルト様はリアナ様を見捨てて、逃げて来たそうじゃ」
「え? 勇者が仲間を見捨てて逃げてきた? 勇者をそこまで追い詰める魔王ってそんなに強いのですか?」
老人は怯えた表情で俺の方を見た。
「うむ。想像をはるかに超える強さだったと聞いておる」
「う……」
「勇者様は自分の城に戻っておられる。 しかし、魔王の実力を思い知らされ、呆然自失。恐怖のあまり、そのまま引き篭もってしまったそうじゃ」
「……」
(おいおい、勇者のくせにカッコ悪いな。 しっかりしてくれよ勇者さん……。 まあ、俺も人のこと、どうこう言える人生じゃなかったけど……)
俺はため息をついた。
「勇者様は時々、死にたい、と仰っているらしい」
「……」
(えー、まじかよ……。人間界やばくねーか?)
「あの勇敢なレオンハルト様をあそこまで追い詰めるとは……。 魔王はとんでもない強さだということじゃ」
「……」
「勇者様と3名の仲間、重戦士ガルド様、狼戦士フェンリル様。 そして我らが英雄、聖剣士リアナ様。 彼らは人間界では突出した戦闘能力を持っている。 強大な魔王と渡り合えるのは彼らしかおらん、はずじゃった……」
「な、なるほど..」
「もし、勇者パーティがいなくなったら、人間界は終わりじゃ」
「む……」
(それ以上、聞きたくないような……)
「他2人の勇者パーティである重戦士ガルド様と狼戦士フェンリル様は現在、行方不明じゃ。 生存は絶望視されている」
「何だって!?そ、それって普通にやばいですよね?じゃあ、そのリアナ様って人が殺されたら人類終わり?」
「無論じゃ。 魔王に収監されているリアナ様だけが、唯一の希望なのじゃよ。 勇者様は大怪我をされている上に、精神的にも戦える状態ではないと聞く。 本当に心配なのじゃよ」
「今のこの状況って、心配とかっていうレベルじゃないですよね!? 助けに行かないと、人間界やばいじゃないですかっ!」
「確かに、そうじゃ」
「じゃあ、みんなで」
「……」
老人は少し黙り込んだ。
「ど、どうされたのですか?」
「すでに手を尽くしたが、無駄だったのじゃ…」
「は?」
老人は悲壮な表情で語り始めた。
「かつて、勇者レオンハルト様の母国、アルカディア王国は、魔王の魔族との戦いで全兵力の90%を失ったのじゃ…」
「え?」
「つまり、もう兵を派遣する力は残されておらんのじゃ…」
「!!!!」
(えーーーっ、マジかよ!ヤバすぎるだろ!)
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