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51話 初詣
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「寒いね、外。」
「そうだな、左手はあったかいけど、やっぱり右手はやばいな……」
「私も左手やばい。」
やはり彼女と繋がっている手は暖かかった。彼女の温もりが手全体を包み込んでいるようで、僕は優しい安心感を覚えた。
何故僕らが今外に出ているのか。それは、今日が元旦だからだった。
「翔太、今年の初詣はいつ行くの?」
突然リビングで、葵と勉強していたタイミングで、母さんが話しかけてきた。
「今は…………嘘!? もう日付変わってんじゃん!」
「そうよ。だから聞きにきたのに。」
「どうしようかな。」
僕がそう悩んでいると母さんが提案をしてきた。
「じゃあさ、今行ってきちゃいなさいよ、2人で。」
「ああ、良いなそれ。どうする? 葵は。」
「翔太が行くなら行く。」
「そんじゃ、行きますか!」
そんな軽いノリで決まったのだ。というのも、この時間帯になって、眠気に襲われ始めた頃だったから、母さんの提案はちょうど良かった。もしかすると、それまで見越して僕らを外に出させたのかもしれない。どっちにしても、さすが我が母親と言ったところだ。
「こうして家族以外の誰かと、初詣行くの初めてかも。」
「そうなのか?」
「うん。お父さんがさ、結構厳しくて。元旦は家族でって決まってたんだよね。」
なんかイメージできるな。話せば、意外と物腰の柔らかい人だったけど、そこら辺の行事はちゃんとしてそう。偏見かもしれないけど、実際葵がそう言っている訳だし、僕の第一印象が当たっていたわけだ。
「結構立派な神社だね。」
「ああ。僕もそう思うよ。」
ここは天神様を祀る神社で、受験生がよく足を運ぶ姿を目にする。僕らも一年早いが、そろそろ受験のことを考えて参拝することにしたのだ。
「人多いな。」
「そうだね。ちょっとだけ緊張する……」
そっか。まだ少し残ってるんだな、君のトラウマ。前に葵は消えないって言ってたけど、一生付き合っていくしかないみたいだ。
「大丈夫。僕がいるから。」
「うん。ありがとう。」
葵は可愛い笑顔を浮かべて、僕にそう言った。暗がりの中にいる葵の笑顔は、どこかエモく感じた。
僕らは長蛇の列に並んで自分たちの番を待った。その間はスマホをいじったり、会話が盛り上がったり、長かった待ち時間も苦にならずに待っていられた。
そして僕らの番がやってきた。二つの鐘を1人ずつ鳴らす。お賽銭に50円玉を投げ入れ、鐘を鳴らし、慣わし通りにやった後、手を合わせてお願い事をした。
……受験勉強上手くいきますように。あと、葵と楽しく暮らせますように
僕の願いはそれだけだった。僕らは、上がってきた階段とは別の階段を降りて、甘酒を飲んだりおみくじを引いたり、お守りを買ったりと、例年通りの初詣を過ごしていた。
そして僕らは帰路につく。何もないただの初詣、こうしたイベント系はなぜかいつもトラブル続きで、嫌になってきたところだから、ちょうど良かったと思うのだった。
「そうだな、左手はあったかいけど、やっぱり右手はやばいな……」
「私も左手やばい。」
やはり彼女と繋がっている手は暖かかった。彼女の温もりが手全体を包み込んでいるようで、僕は優しい安心感を覚えた。
何故僕らが今外に出ているのか。それは、今日が元旦だからだった。
「翔太、今年の初詣はいつ行くの?」
突然リビングで、葵と勉強していたタイミングで、母さんが話しかけてきた。
「今は…………嘘!? もう日付変わってんじゃん!」
「そうよ。だから聞きにきたのに。」
「どうしようかな。」
僕がそう悩んでいると母さんが提案をしてきた。
「じゃあさ、今行ってきちゃいなさいよ、2人で。」
「ああ、良いなそれ。どうする? 葵は。」
「翔太が行くなら行く。」
「そんじゃ、行きますか!」
そんな軽いノリで決まったのだ。というのも、この時間帯になって、眠気に襲われ始めた頃だったから、母さんの提案はちょうど良かった。もしかすると、それまで見越して僕らを外に出させたのかもしれない。どっちにしても、さすが我が母親と言ったところだ。
「こうして家族以外の誰かと、初詣行くの初めてかも。」
「そうなのか?」
「うん。お父さんがさ、結構厳しくて。元旦は家族でって決まってたんだよね。」
なんかイメージできるな。話せば、意外と物腰の柔らかい人だったけど、そこら辺の行事はちゃんとしてそう。偏見かもしれないけど、実際葵がそう言っている訳だし、僕の第一印象が当たっていたわけだ。
「結構立派な神社だね。」
「ああ。僕もそう思うよ。」
ここは天神様を祀る神社で、受験生がよく足を運ぶ姿を目にする。僕らも一年早いが、そろそろ受験のことを考えて参拝することにしたのだ。
「人多いな。」
「そうだね。ちょっとだけ緊張する……」
そっか。まだ少し残ってるんだな、君のトラウマ。前に葵は消えないって言ってたけど、一生付き合っていくしかないみたいだ。
「大丈夫。僕がいるから。」
「うん。ありがとう。」
葵は可愛い笑顔を浮かべて、僕にそう言った。暗がりの中にいる葵の笑顔は、どこかエモく感じた。
僕らは長蛇の列に並んで自分たちの番を待った。その間はスマホをいじったり、会話が盛り上がったり、長かった待ち時間も苦にならずに待っていられた。
そして僕らの番がやってきた。二つの鐘を1人ずつ鳴らす。お賽銭に50円玉を投げ入れ、鐘を鳴らし、慣わし通りにやった後、手を合わせてお願い事をした。
……受験勉強上手くいきますように。あと、葵と楽しく暮らせますように
僕の願いはそれだけだった。僕らは、上がってきた階段とは別の階段を降りて、甘酒を飲んだりおみくじを引いたり、お守りを買ったりと、例年通りの初詣を過ごしていた。
そして僕らは帰路につく。何もないただの初詣、こうしたイベント系はなぜかいつもトラブル続きで、嫌になってきたところだから、ちょうど良かったと思うのだった。
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