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第二章 中学3年
夜灯⚽・
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⚽駿
根津屋はAubeから歩いてわずか3分もかからない近所にあった。
本当に普通の定食屋さん。
席はテーブルと畳の両方が有り、開いていたのがたまたま畳だったから、僕たちは畳に座る。
夫婦でやっているみたい。
二人共に年は30そこそこかな。
奥さんと思われる人は綺麗な人だけどね。
「あなたが暁さんの従兄弟の涼太君ね。
あれっ…一度うちに来たわよねえ。
なんとなく…覚えてるもの。」
「はい。いつも暁が世話になってます。」
涼君も図々しいなあ。
自分がいつも暁さんの世話になってるのに。
「なあ…駿もトンカツ定食の味噌ダレ、食ってみな。
最高に美味いから。」
「う~ん。トンカツかあ。
僕はトンカツよりヒレカツ派だからなあ。
やっぱりヒレカツだとソースにマスタードでしょ。」
でも…味噌ダレに興味が無い事もない。
なんたって育ち盛りだしね。
「あのう。ヒレカツを味噌ダレでもいいのですか?」
「はい。大丈夫ですよ。
うちはフライ物なら味噌ダレでもタルタルでも自由に選べますから。
ただうちの旦那は名古屋出身だから赤味噌。八丁味噌って言う岡崎市から取り寄せの味噌で、味は甘めになりますけどね。
ただ磯佐木モールでも名古屋風の味噌ダレはうちだけだから、結構遠くから食べに来る人もいるんですよ。」
へぇ…何か美味しそうだな。
よし。試して見ようかな。
根津屋のフライは大盛りキャベツにトマト。そして網の上に乗ったヒレカツ。
そして小鉢の蓮根炒めに奴と味噌汁と漬物。
味噌ダレは別の器で漬けて食べるらしい。
うわっ本当に色が赤黒いな。
ヒレカツの先端をタレに漬けて口の中に。
シャコッ!…
うっ…美味い!こりゃ美味い!
味噌なのにこんなに甘辛なんだ。
僕と涼君はトンカツとヒレカツを味噌ダレで楽しみながら平らげた。
ましてやおかわりも出来るみたいでライスをおかわりしちゃいました。
「かぁ。名古屋の人って美味いもん食ってるなあ。聞いたら名古屋っておでんも味噌で食うらしいぜ。
俺も食いてえなあ味噌おでん。」
ーーーーー
腹もいっぱいで満足した僕らはAubeに戻った。すると暁さんがお金を数えていた。
どうやら今日のお店の売上げを数えているようだ。
Aubeは19:30まで。
お金は帰り際に夜間金庫に預ける仕組みらしい。
なるほどお店ってこういうものなのかな?
「じゃあ…後は涼に任せるから。
これはお店のシャッターのスペアキーね。
お店のシャッターは閉めるけど、出口はお店からだから、銭湯に行く時はシャッターを降ろして必ず鍵を掛ける事。
店の戸締まりをする時は中から鍵を掛けたらもう開けないから。
あっ…それと火の元には気をつけるようにね。
あと店の電話がかかっても出なくていいから。
音は切っておくし。
あっそれと店の電気は基本つけないように。
補助灯だけで店内は歩けるから。
それと磯佐木には夜には変な人もいるから、お風呂以外では出歩かない方がいいからね。」
「おーい暁。俺たちはもう中3だぜ。
心配しなくても、だーい丈夫だって。」
「そうかなあ。どうも涼は信用出来ないんだよなあ。
まあ…駿はしっかりしてそうだから大丈夫か。
じゃあ…駿。
涼を頼んだよ。」
「なんで俺じゃ無くて駿なんだ!」
ーーーーー
「ったく。なんで暁は俺を信用しねえかなあ?」
「そんな事無いよ。
だったら僕らだけでお泊りなんて許す訳ないもん。
暁さんは凄く涼君を評価してるように僕には感じるけど。」
「ふ~ん。どうだかなあ?
まっいいや。それより暁の店の中に二人だけって言うのもなんかスリルがあって…楽しいな。」
「そうだね。入口はシャッターで閉まってるし、お店の中で明るいのは、補助灯の光るこの辺だけだし。
あっ…そう言えば寝巻きとパンツって買わないとまずいよね。」
確かに僕らの衣装はドライブ時と同じ。
涼君はジーンズの上下にオシャレなキャップ。
そしてブランド物ハイカットスニーカー。
僕はAubeのオリジナルパーカーにショートパンツ。
そして水色、青、紺の縞のハイソックスに黄色のスニーカー。そしてリストバンド。
そのままの衣装だもんね。
まあ…僕はTシャツはもうAubeで1枚購入してるけど。
「それなら大丈夫。
寝巻きはここの捨て売り品をもうもらってあるし、でもパンツだけは銭湯に行く前にドンキで買うか。それより駿。なあ…ここって古着屋じゃん。」
「うん…そうだね。」
「と!言うことはだ。
ここに古着を売って、何か不幸な事が起こって亡くなった人の…服なんかが有るかもな。<笑>」
「うん…それで?」
「いやいや、ひょっとしたら…店の中に陳列されてる服の中に念が残っている服が…あったり…して~…!」
「うん…それで?」
「へっ…お前…怖く…無いの?」
「うん…別に平気だよ。」
「いやいやいやいや!例えばだぜ!今は俺も一緒だけど、もし駿が店の中にたった一人だけしかいなかったら…
予想しろよ。
けっこう怖いだろ?」
「プッ…ああっ…な~んだ!
涼君、僕を怪談話で怖がらせたかったんだ。」
「笑うなよ!お前、全然怖くねえの?」
「うん…だって僕は父さんと一緒に旅をして暮らしてたんだよ。
まあ…主に北海道や東北、北陸、そして四国、九州。
関東、近畿、東海はたまたま縁が無かったけどね。
だいたい3ヶ月おきだから転校経験は年4回で通算20回。
色々な所に行ったもん。
怪談も色々と聞いたよ。
もし良ければお話しようか?」
「へっ…へぇ…おっ面白いじゃん!
じゃあ…聞いて…見ようじゃないの?」
「うん。じゃあ…僕が小4の時に熊本県にいた時のお話ね。
熊本では明治10年に西南の役と呼ばれる戦争があってね…
最大の激戦地が田原坂…って場所だったんだ…
その戦いでは薩摩軍と政府軍が雨の中で大劇戦を繰り返して、大勢の兵士が亡くなったんだ…そして…」
✞#‡❀☆):±@♢
「あっ…ごめんごめんごめんね!涼君。
まさか涼君がそんなに怖がるとは思わなくて…<焦り>
これでも青森県にいた時の八甲田山の方がもっと怖いからあえて西南の役にしたんだけど、それでも充分怖すぎたね。
大丈夫大丈夫!
ここは横浪市だから…政府軍の兵隊なんかいないから!
それに150年近くも昔の話だから!<焦り>
ねっ…涼君。」
涼君は震えちゃって僕にしがみついて離さない!
参ったな!口も聞けなくなっちゃってるし。
まさか元気印の涼君がこんなに怖がりだとは…
全く知らなかったんだ。
う~ん。こんな事もいい思い出なんかになるのかなあ❓<汗>
根津屋はAubeから歩いてわずか3分もかからない近所にあった。
本当に普通の定食屋さん。
席はテーブルと畳の両方が有り、開いていたのがたまたま畳だったから、僕たちは畳に座る。
夫婦でやっているみたい。
二人共に年は30そこそこかな。
奥さんと思われる人は綺麗な人だけどね。
「あなたが暁さんの従兄弟の涼太君ね。
あれっ…一度うちに来たわよねえ。
なんとなく…覚えてるもの。」
「はい。いつも暁が世話になってます。」
涼君も図々しいなあ。
自分がいつも暁さんの世話になってるのに。
「なあ…駿もトンカツ定食の味噌ダレ、食ってみな。
最高に美味いから。」
「う~ん。トンカツかあ。
僕はトンカツよりヒレカツ派だからなあ。
やっぱりヒレカツだとソースにマスタードでしょ。」
でも…味噌ダレに興味が無い事もない。
なんたって育ち盛りだしね。
「あのう。ヒレカツを味噌ダレでもいいのですか?」
「はい。大丈夫ですよ。
うちはフライ物なら味噌ダレでもタルタルでも自由に選べますから。
ただうちの旦那は名古屋出身だから赤味噌。八丁味噌って言う岡崎市から取り寄せの味噌で、味は甘めになりますけどね。
ただ磯佐木モールでも名古屋風の味噌ダレはうちだけだから、結構遠くから食べに来る人もいるんですよ。」
へぇ…何か美味しそうだな。
よし。試して見ようかな。
根津屋のフライは大盛りキャベツにトマト。そして網の上に乗ったヒレカツ。
そして小鉢の蓮根炒めに奴と味噌汁と漬物。
味噌ダレは別の器で漬けて食べるらしい。
うわっ本当に色が赤黒いな。
ヒレカツの先端をタレに漬けて口の中に。
シャコッ!…
うっ…美味い!こりゃ美味い!
味噌なのにこんなに甘辛なんだ。
僕と涼君はトンカツとヒレカツを味噌ダレで楽しみながら平らげた。
ましてやおかわりも出来るみたいでライスをおかわりしちゃいました。
「かぁ。名古屋の人って美味いもん食ってるなあ。聞いたら名古屋っておでんも味噌で食うらしいぜ。
俺も食いてえなあ味噌おでん。」
ーーーーー
腹もいっぱいで満足した僕らはAubeに戻った。すると暁さんがお金を数えていた。
どうやら今日のお店の売上げを数えているようだ。
Aubeは19:30まで。
お金は帰り際に夜間金庫に預ける仕組みらしい。
なるほどお店ってこういうものなのかな?
「じゃあ…後は涼に任せるから。
これはお店のシャッターのスペアキーね。
お店のシャッターは閉めるけど、出口はお店からだから、銭湯に行く時はシャッターを降ろして必ず鍵を掛ける事。
店の戸締まりをする時は中から鍵を掛けたらもう開けないから。
あっ…それと火の元には気をつけるようにね。
あと店の電話がかかっても出なくていいから。
音は切っておくし。
あっそれと店の電気は基本つけないように。
補助灯だけで店内は歩けるから。
それと磯佐木には夜には変な人もいるから、お風呂以外では出歩かない方がいいからね。」
「おーい暁。俺たちはもう中3だぜ。
心配しなくても、だーい丈夫だって。」
「そうかなあ。どうも涼は信用出来ないんだよなあ。
まあ…駿はしっかりしてそうだから大丈夫か。
じゃあ…駿。
涼を頼んだよ。」
「なんで俺じゃ無くて駿なんだ!」
ーーーーー
「ったく。なんで暁は俺を信用しねえかなあ?」
「そんな事無いよ。
だったら僕らだけでお泊りなんて許す訳ないもん。
暁さんは凄く涼君を評価してるように僕には感じるけど。」
「ふ~ん。どうだかなあ?
まっいいや。それより暁の店の中に二人だけって言うのもなんかスリルがあって…楽しいな。」
「そうだね。入口はシャッターで閉まってるし、お店の中で明るいのは、補助灯の光るこの辺だけだし。
あっ…そう言えば寝巻きとパンツって買わないとまずいよね。」
確かに僕らの衣装はドライブ時と同じ。
涼君はジーンズの上下にオシャレなキャップ。
そしてブランド物ハイカットスニーカー。
僕はAubeのオリジナルパーカーにショートパンツ。
そして水色、青、紺の縞のハイソックスに黄色のスニーカー。そしてリストバンド。
そのままの衣装だもんね。
まあ…僕はTシャツはもうAubeで1枚購入してるけど。
「それなら大丈夫。
寝巻きはここの捨て売り品をもうもらってあるし、でもパンツだけは銭湯に行く前にドンキで買うか。それより駿。なあ…ここって古着屋じゃん。」
「うん…そうだね。」
「と!言うことはだ。
ここに古着を売って、何か不幸な事が起こって亡くなった人の…服なんかが有るかもな。<笑>」
「うん…それで?」
「いやいや、ひょっとしたら…店の中に陳列されてる服の中に念が残っている服が…あったり…して~…!」
「うん…それで?」
「へっ…お前…怖く…無いの?」
「うん…別に平気だよ。」
「いやいやいやいや!例えばだぜ!今は俺も一緒だけど、もし駿が店の中にたった一人だけしかいなかったら…
予想しろよ。
けっこう怖いだろ?」
「プッ…ああっ…な~んだ!
涼君、僕を怪談話で怖がらせたかったんだ。」
「笑うなよ!お前、全然怖くねえの?」
「うん…だって僕は父さんと一緒に旅をして暮らしてたんだよ。
まあ…主に北海道や東北、北陸、そして四国、九州。
関東、近畿、東海はたまたま縁が無かったけどね。
だいたい3ヶ月おきだから転校経験は年4回で通算20回。
色々な所に行ったもん。
怪談も色々と聞いたよ。
もし良ければお話しようか?」
「へっ…へぇ…おっ面白いじゃん!
じゃあ…聞いて…見ようじゃないの?」
「うん。じゃあ…僕が小4の時に熊本県にいた時のお話ね。
熊本では明治10年に西南の役と呼ばれる戦争があってね…
最大の激戦地が田原坂…って場所だったんだ…
その戦いでは薩摩軍と政府軍が雨の中で大劇戦を繰り返して、大勢の兵士が亡くなったんだ…そして…」
✞#‡❀☆):±@♢
「あっ…ごめんごめんごめんね!涼君。
まさか涼君がそんなに怖がるとは思わなくて…<焦り>
これでも青森県にいた時の八甲田山の方がもっと怖いからあえて西南の役にしたんだけど、それでも充分怖すぎたね。
大丈夫大丈夫!
ここは横浪市だから…政府軍の兵隊なんかいないから!
それに150年近くも昔の話だから!<焦り>
ねっ…涼君。」
涼君は震えちゃって僕にしがみついて離さない!
参ったな!口も聞けなくなっちゃってるし。
まさか元気印の涼君がこんなに怖がりだとは…
全く知らなかったんだ。
う~ん。こんな事もいい思い出なんかになるのかなあ❓<汗>
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