命が宿るのはその肉体ではないだろうか

0章

1話

　命が宿るのはその肉体ではないだろうか。私は教師の追及から逃れるために学校を抜け出していた、脳の交換の作業準備はクラスで私一人だけ大幅に遅れている。交換作業は人によってなじむ速度が違うため10年掛かる人もいれば1年で行ってしまう人もいる。行う年齢も本来であれば自由なはずだが、高校において全ての人間の取替えを行うのが私の都市での方針となっていた。
　脳の取替え作業は寿命を半永久的に延ばすためここ数十年の中で行われている手術である。手術内容というと睡眠時に脳の一部の機能を停止させ、その度脳の一部の箇所へ大量のナノコンピュータを埋め込んでいく。こうして最終的には脳の機能をナノコンピュータ集合体に行わせ、意識を保ったまま脳死を防ぎ寿命を延ばすのである。この方法は意識＝命を守る最良の方法として社会で認識されている。これについて友人と議論した時の彼の主張はこうだった。
『命というのは自分の持っている意識だ、だから脳を徐々に変えていくことで命をそのまま伸ばすことが出来る。行わないと考えるほうが頭が狂っている』
これに私は怒りすぐに私の主張を繰り出した。
『ナノコンピュータにおいて無数に存在するシナプスの1作用まで完全に再現出来るはずがない、もし99.9%が同じであれば0.1%が私を形作るのだ』
『人間の脳は常に変化し続けている、0.1%にこだわるのは無意味だ』
この時私達は怒りを覚え、殴り合いになっただけだが、この考えは後に私に大きな影響を与えた。

続きます