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11 美女の来訪
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「メルー!!久し振り。会いたかったわ!」
馬車から降りた美女は、いきなり私にハグをした。
勿論、美女の正体はソフィー様だ。
「こんな遠くまで、ようこそいらっしゃいました。
私もソフィー様にお会い出来て嬉しいです」
お客様を庭園に用意したテーブルに案内すると、侍女が紅茶と茶菓子を用意してくれる。
「後は私がやるから良いわ」
一杯目を入れたら下がるように指示した。
ソフィー様とのお話にはスタンリー公爵家の件が出るだろうから、侍女に聞かせるわけにいかない。
私達は、入れ立ての紅茶を一口飲むと、堰を切ったように話し始めた。
「それにしても、サミュエルは何を考えているのかしら。
魔力の器だって、まだ治ってないのでしょう?」
「聖女様が魔力提供してくださるそうですよ。」
「だから隣国へ行ってしまったの?なんて無責任なんでしょう!」
「聖女様は国を移る事は出来ませんから、一緒にいるにはサミュエル様があちらに移るしかありません。
国際問題になってしまいますから」
「公爵家は、幼い弟が継ぐのかしら」
「このままだと、そうなる様ですね」
公爵家の後継として育てられた彼が、その義務を年端も行かない弟に任せて、急に隣国へ渡ったのだから、確かに無責任な話だ。
「ところで、最近の王都の様子は如何ですか?」
「貴女達の事は、もうしっかり噂になってしまってるわよ。
メルは〝運命の恋人を聖女に奪われた哀れな令嬢〟なんですって。
実態は全く違うのにね。
あの人達、始める時は自分達の名誉に傷が付かないように、台本まで用意してメルに協力させた癖に、終わる時は平気でメルに不名誉な噂が立ちかねないやり方をするなんて、ちょっとどうかと思うのだけれど」
「聖女様に気を使ったのでしょうね。
私達は、世間的には愛し合う婚約者同士だと思われています。
私を気使い、そのせいで別れに時間がかかれば、聖女様も面白くないでしょうからね。
こちらとしても、今回の婚約で子爵家がとても助かったのは事実ですし、多少の事は仕方がないかと」
「これを〝多少〟って言うのは貴女だけじゃ無いかしら?
私は凄く腹が立ったけど、メルはあんまり怒っていないのね」
ソフィー様は眉根を寄せながら、チョコレートを口に放り込む。
怒った顔も愛らしいのだから、美人って得だなーと、関係のない事が頭を過ぎる。
私の代わりに怒ってくれる友人の存在は、素直に嬉しい。
「悲しみや悔しさはありませんが、虚しい気持ちにはなりました。
私達の間に愛は生まれなかったけれど、それなりに信頼関係があったと思っていたのです。
そうでなければ、三年以上もあんな生活続きません。
私はサミュエル様のお役に立っていた自負がありましたし、サミュエル様も私に感謝してくれていると思っていました。
でも、それは恋心の前には簡単に崩れてしまうのですよね。
なんだか、今迄の私の努力や、積み重ねた信頼が、全て無駄になったように感じてしまって」
「なんとなく、分かる気がするわ。
それにしても、こんなに可愛いメルと、あんなに長い事一緒に過ごしたのに惹かれないなんて、アイツ男としてどうかしてるんじゃないかしら?」
「・・・私を可愛いと思うのは、姉の欲目では?」
いつの間にか私も姉妹設定を受け入れてしまっている。
「そんな事ないわよ。リチャードだって・・・・・・」
「ウェイクリング様が、何か?」
「・・・・・・いえ、いいの。何でもないわ」
ソフィー様は少し慌てたように首を振った。
馬車から降りた美女は、いきなり私にハグをした。
勿論、美女の正体はソフィー様だ。
「こんな遠くまで、ようこそいらっしゃいました。
私もソフィー様にお会い出来て嬉しいです」
お客様を庭園に用意したテーブルに案内すると、侍女が紅茶と茶菓子を用意してくれる。
「後は私がやるから良いわ」
一杯目を入れたら下がるように指示した。
ソフィー様とのお話にはスタンリー公爵家の件が出るだろうから、侍女に聞かせるわけにいかない。
私達は、入れ立ての紅茶を一口飲むと、堰を切ったように話し始めた。
「それにしても、サミュエルは何を考えているのかしら。
魔力の器だって、まだ治ってないのでしょう?」
「聖女様が魔力提供してくださるそうですよ。」
「だから隣国へ行ってしまったの?なんて無責任なんでしょう!」
「聖女様は国を移る事は出来ませんから、一緒にいるにはサミュエル様があちらに移るしかありません。
国際問題になってしまいますから」
「公爵家は、幼い弟が継ぐのかしら」
「このままだと、そうなる様ですね」
公爵家の後継として育てられた彼が、その義務を年端も行かない弟に任せて、急に隣国へ渡ったのだから、確かに無責任な話だ。
「ところで、最近の王都の様子は如何ですか?」
「貴女達の事は、もうしっかり噂になってしまってるわよ。
メルは〝運命の恋人を聖女に奪われた哀れな令嬢〟なんですって。
実態は全く違うのにね。
あの人達、始める時は自分達の名誉に傷が付かないように、台本まで用意してメルに協力させた癖に、終わる時は平気でメルに不名誉な噂が立ちかねないやり方をするなんて、ちょっとどうかと思うのだけれど」
「聖女様に気を使ったのでしょうね。
私達は、世間的には愛し合う婚約者同士だと思われています。
私を気使い、そのせいで別れに時間がかかれば、聖女様も面白くないでしょうからね。
こちらとしても、今回の婚約で子爵家がとても助かったのは事実ですし、多少の事は仕方がないかと」
「これを〝多少〟って言うのは貴女だけじゃ無いかしら?
私は凄く腹が立ったけど、メルはあんまり怒っていないのね」
ソフィー様は眉根を寄せながら、チョコレートを口に放り込む。
怒った顔も愛らしいのだから、美人って得だなーと、関係のない事が頭を過ぎる。
私の代わりに怒ってくれる友人の存在は、素直に嬉しい。
「悲しみや悔しさはありませんが、虚しい気持ちにはなりました。
私達の間に愛は生まれなかったけれど、それなりに信頼関係があったと思っていたのです。
そうでなければ、三年以上もあんな生活続きません。
私はサミュエル様のお役に立っていた自負がありましたし、サミュエル様も私に感謝してくれていると思っていました。
でも、それは恋心の前には簡単に崩れてしまうのですよね。
なんだか、今迄の私の努力や、積み重ねた信頼が、全て無駄になったように感じてしまって」
「なんとなく、分かる気がするわ。
それにしても、こんなに可愛いメルと、あんなに長い事一緒に過ごしたのに惹かれないなんて、アイツ男としてどうかしてるんじゃないかしら?」
「・・・私を可愛いと思うのは、姉の欲目では?」
いつの間にか私も姉妹設定を受け入れてしまっている。
「そんな事ないわよ。リチャードだって・・・・・・」
「ウェイクリング様が、何か?」
「・・・・・・いえ、いいの。何でもないわ」
ソフィー様は少し慌てたように首を振った。
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