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26 立太子の儀
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最後の大きなフラグが立つのは、王宮で大規模な夜会が催される時。
それは、立太子の儀の時なのではないかと思っているのだが・・・・・・。
私という異分子が存在しているせいで、シナリオが大きく変わっており、
いつそれが起こるのか、もしくはそのフラグは既に消えているのか、定かでは無いのだ。
ゲームの中では、ユリアとテオが両思いとなり、悪役令嬢を失脚させる事が出来ると、二人は正式に婚約を結ぶ。
その、婚約のお披露目の夜会で、最後の事件は起こる。
乾杯の際のテオのワインに、毒が混入されるのだ。
その黒幕は側妃であり、王宮内に複数の協力者が居る。
しかし、魔獣討伐の時と違って、実行犯の姿はゲームに出てこない為、誰が側妃の協力者なのか私には分からない。
だが現実には、ユリアでは無く私が婚約者になった。
しかも、私は長く唯一の婚約者候補として貴族達に周知されていたので、今更改めて婚約発表の夜会を開く予定は無い。
立太子の儀も近いので、その時が実質的には披露目となるのだろう。
と、言う事は、やはり側妃がテオの毒殺を目論んでいるのならば、立太子の儀の夜会が一番怪しい。
一応、テオと兄様には警戒を呼び掛けたのだが───。
「その件に関しては対策をしてあるから、エルザは心配しなくて良いよ」
と、言われた。
対策とは何なのだろう?
本当に、心配する必要は無いのだろうか?
テオと兄様が、私を危険に晒したく無いと考えているせいなのか、具体的な事は誰も教えてはくれない。
不安は残るが、必ず事件が起こるとも言い切れない。
なんとかテオがワインを飲む事を阻止したいが、強引な手段を使えば、私が不敬罪に問われる可能性もある。
ぐるぐると考えを巡らせるものの、何も名案は浮かばぬまま。
とうとう立太子の儀当日がやって来てしまった。
式典は昼間に国の重鎮だけが出席して、滞りなく行われた。
そして問題の夜会は、ほぼ全ての国内貴族と隣国からの要人も招待して、盛大に開催される予定である。
昼の式典にも参加していた私は、そのまま王宮の一室と侍女を数名お借りして、夜会用のドレスに着替える。
いつもテオとのお茶の時間にも給仕をしてくれる馴染みの侍女達は、私が王太子妃になった暁には専属として仕えてくれる予定だ。
テオと兄様が厳選した人材なので、信用出来る。
「エルザ様、思いっきりお腹を凹ませて下さい!
せ~のぉ、フンッッ!!」
彼女達は私のコルセットをギリギリと締め付ける。
内臓が口から飛び出しそうだ。
何か恨みでも買ったのかな?
私が王太子妃になったら、コルセットの要らないユルッとしたドレスを社交界で流行らせよう!
絶対に!!
「はぁ、苦しい。もう限界だわ」
「はい、このくらいで良いでしょう」
侍女達が額の汗を拭いながら満足気に頷いてくれて、ホッと安堵の息を吐いた。
「では、ドレスを着付けましょうね」
今日のドレスはテオからのプレゼント。
胸元の水色から、スカートの裾に向かって深い青色になるグラデーションの生地は、上品な光沢を放っている。
金糸を使った刺繍も贅沢に施された美しいドレスに、侍女達が溜息をついた。
「素敵ですねぇ。
エルザ様にとってもお似合いです」
「そう?ドレスに負けてないかしら?」
「とんでもない!!
女神様のようにお美しいですわ」
「ふふっ。
もし、そうだとしたら、貴女達のお化粧の腕が素晴らしいからよ。
綺麗にしてくれてありがとう」
お礼を言うと、彼女達は嬉しそうに微笑んだ。
「支度が出来たって聞いたんだけど」
身支度が済み、そのままお部屋で紅茶を頂いていると、テオが迎えに来た。
「はい。とても素敵なドレスをありがとうございます」
「うん、思った以上に似合ってるよ。
永遠に眺めていたいくらいだ」
ほんのりと頬を染めたテオに褒められて、私の頬も熱くなる。
「テオも正装していると、いつも以上に素敵ですね。
ご令嬢達に益々人気が出てしまいそうで、ちょっと心配です」
「僕はエルザしか見えないから大丈夫だよ」
そっと差し出された腕に手を絡めて、王族の入場口へと案内される。
今迄は候補でしか無かったので、夜会の時は入場だけ兄様にエスコートをして貰って、途中からテオがエスコートを交代していた。
王族の皆様と共に入場するのは初めての経験だ。
無意識の内に深く息を吐くと、隣でテオがクスッと笑った。
「エルザでも緊張する事があるんだね」
「私を何だと思ってるんですか?
緊張くらい、普通にしますよ」
拗ねる私の頭を、テオが笑いながら撫でた。
その時、王族入場の合図のファンファーレが鳴り響き、国王陛下と王妃殿下に続いて私達も入場した。
「皆の者、よく集まってくれた。
今宵は皆に重大な発表がある。
テオフィル、前へ」
「はい、陛下」
「ここに居る私の息子のテオフィルを、正式に王太子に指名する。
そして、グルーバー辺境伯家のエルザとテオフィルの婚約が成立した事も、合わせて発表する。
未来のこの国を担う二人に盛大な拍手を」
大きな歓声と拍手が沸き起こった。
不満の声が殆ど聞こえて来ない事に、ホッと胸を撫で下ろす。
乾杯用のドリンクが、会場中に配られる。
王族の飲み物は事前に好みを聞かれていて、注文通りの物が手渡されて行く。
テオは、白ワイン。
私は果実水。
陛下と王妃殿下は赤ワインで、側妃とオリヴァーはスパークリングワインだ。
チラリと側妃の様子を窺うと、テオが白ワインを手にした瞬間、ニヤリと口角が上がった気がした。
それは、立太子の儀の時なのではないかと思っているのだが・・・・・・。
私という異分子が存在しているせいで、シナリオが大きく変わっており、
いつそれが起こるのか、もしくはそのフラグは既に消えているのか、定かでは無いのだ。
ゲームの中では、ユリアとテオが両思いとなり、悪役令嬢を失脚させる事が出来ると、二人は正式に婚約を結ぶ。
その、婚約のお披露目の夜会で、最後の事件は起こる。
乾杯の際のテオのワインに、毒が混入されるのだ。
その黒幕は側妃であり、王宮内に複数の協力者が居る。
しかし、魔獣討伐の時と違って、実行犯の姿はゲームに出てこない為、誰が側妃の協力者なのか私には分からない。
だが現実には、ユリアでは無く私が婚約者になった。
しかも、私は長く唯一の婚約者候補として貴族達に周知されていたので、今更改めて婚約発表の夜会を開く予定は無い。
立太子の儀も近いので、その時が実質的には披露目となるのだろう。
と、言う事は、やはり側妃がテオの毒殺を目論んでいるのならば、立太子の儀の夜会が一番怪しい。
一応、テオと兄様には警戒を呼び掛けたのだが───。
「その件に関しては対策をしてあるから、エルザは心配しなくて良いよ」
と、言われた。
対策とは何なのだろう?
本当に、心配する必要は無いのだろうか?
テオと兄様が、私を危険に晒したく無いと考えているせいなのか、具体的な事は誰も教えてはくれない。
不安は残るが、必ず事件が起こるとも言い切れない。
なんとかテオがワインを飲む事を阻止したいが、強引な手段を使えば、私が不敬罪に問われる可能性もある。
ぐるぐると考えを巡らせるものの、何も名案は浮かばぬまま。
とうとう立太子の儀当日がやって来てしまった。
式典は昼間に国の重鎮だけが出席して、滞りなく行われた。
そして問題の夜会は、ほぼ全ての国内貴族と隣国からの要人も招待して、盛大に開催される予定である。
昼の式典にも参加していた私は、そのまま王宮の一室と侍女を数名お借りして、夜会用のドレスに着替える。
いつもテオとのお茶の時間にも給仕をしてくれる馴染みの侍女達は、私が王太子妃になった暁には専属として仕えてくれる予定だ。
テオと兄様が厳選した人材なので、信用出来る。
「エルザ様、思いっきりお腹を凹ませて下さい!
せ~のぉ、フンッッ!!」
彼女達は私のコルセットをギリギリと締め付ける。
内臓が口から飛び出しそうだ。
何か恨みでも買ったのかな?
私が王太子妃になったら、コルセットの要らないユルッとしたドレスを社交界で流行らせよう!
絶対に!!
「はぁ、苦しい。もう限界だわ」
「はい、このくらいで良いでしょう」
侍女達が額の汗を拭いながら満足気に頷いてくれて、ホッと安堵の息を吐いた。
「では、ドレスを着付けましょうね」
今日のドレスはテオからのプレゼント。
胸元の水色から、スカートの裾に向かって深い青色になるグラデーションの生地は、上品な光沢を放っている。
金糸を使った刺繍も贅沢に施された美しいドレスに、侍女達が溜息をついた。
「素敵ですねぇ。
エルザ様にとってもお似合いです」
「そう?ドレスに負けてないかしら?」
「とんでもない!!
女神様のようにお美しいですわ」
「ふふっ。
もし、そうだとしたら、貴女達のお化粧の腕が素晴らしいからよ。
綺麗にしてくれてありがとう」
お礼を言うと、彼女達は嬉しそうに微笑んだ。
「支度が出来たって聞いたんだけど」
身支度が済み、そのままお部屋で紅茶を頂いていると、テオが迎えに来た。
「はい。とても素敵なドレスをありがとうございます」
「うん、思った以上に似合ってるよ。
永遠に眺めていたいくらいだ」
ほんのりと頬を染めたテオに褒められて、私の頬も熱くなる。
「テオも正装していると、いつも以上に素敵ですね。
ご令嬢達に益々人気が出てしまいそうで、ちょっと心配です」
「僕はエルザしか見えないから大丈夫だよ」
そっと差し出された腕に手を絡めて、王族の入場口へと案内される。
今迄は候補でしか無かったので、夜会の時は入場だけ兄様にエスコートをして貰って、途中からテオがエスコートを交代していた。
王族の皆様と共に入場するのは初めての経験だ。
無意識の内に深く息を吐くと、隣でテオがクスッと笑った。
「エルザでも緊張する事があるんだね」
「私を何だと思ってるんですか?
緊張くらい、普通にしますよ」
拗ねる私の頭を、テオが笑いながら撫でた。
その時、王族入場の合図のファンファーレが鳴り響き、国王陛下と王妃殿下に続いて私達も入場した。
「皆の者、よく集まってくれた。
今宵は皆に重大な発表がある。
テオフィル、前へ」
「はい、陛下」
「ここに居る私の息子のテオフィルを、正式に王太子に指名する。
そして、グルーバー辺境伯家のエルザとテオフィルの婚約が成立した事も、合わせて発表する。
未来のこの国を担う二人に盛大な拍手を」
大きな歓声と拍手が沸き起こった。
不満の声が殆ど聞こえて来ない事に、ホッと胸を撫で下ろす。
乾杯用のドリンクが、会場中に配られる。
王族の飲み物は事前に好みを聞かれていて、注文通りの物が手渡されて行く。
テオは、白ワイン。
私は果実水。
陛下と王妃殿下は赤ワインで、側妃とオリヴァーはスパークリングワインだ。
チラリと側妃の様子を窺うと、テオが白ワインを手にした瞬間、ニヤリと口角が上がった気がした。
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