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4 医食同源
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私は直ぐに両親と料理長に許可を取りに行った。
事情を話すも、貴族令嬢の私が料理など出来る訳が無いと思っている大人達は、「危ないから!」と、必死で止めた。
だが、私があまりに熱心に説得する物だから、料理長の監督の元、取り敢えず作らせてみようと言う話になった。
記念すべき一食目は、プレーンオムレツと、ミネストローネ。
シンプル過ぎるけど、私のレパートリーは然程多く無いので、こんなもんでしょ。
高熱出てる時に、ステーキとポテト食わせるよりはマシだと思うの。
多分。
テオはかなり回復してきたとは言え、まだ少し熱っポイのだ。
なので、オムレツは生クリームの代わりに牛乳を使って、バターの代わりに少量のオリーブオイルを使う。
その方がサッパリして消化に良さそうだから。
ミネストローネは、微塵切りにした野菜をたっぷり入れて、少しでも栄養が摂れるようにした。
食べるスープって感じ。
問題は、この世界にはコンソメとかの便利な調味料が無いって事だ。
なので、ちょっとだけズルをして、料理人が作ったスープストックを少々拝借した。
このくらいは許して欲しい。
私はまだ身長が低く、調理台が使いにくいので、踏み台を用意してもらった。
なんか、色々ご迷惑を掛けて済みません・・・(汗)
料理長は私が包丁を手に取ると、オロオロと不安そうな様子を見せていたが、手際良く野菜の皮を剥いて微塵切りにすると、感心したようにホゥっと息を吐いた。
「お嬢様にこんな才能があったとは・・・。
貴族令嬢にしておくのは勿体無いくらいです」
「ふふっ。有難う」
そこまで褒められるほどの腕前では無いが、初めて包丁を持ったはずの子供がここまで出来たら、驚かれるのも当たり前かも。
前世では、料理は別に上手くなかったけど、包丁捌きだけは上手いと言われていた。
リンゴの皮を剥くのとか得意だったのだ。
料理長のほめ殺しにあいながら調理を進めて、なんとか良い感じに完成した。
褒められて伸びるタイプなのだ。
うん、オムレツも焦げずに美しく焼けている。
一緒に食べようと二人前を用意して、自らテオの部屋へと運ぶ。
「お待たせしました」
「・・・・・・コレ、本当に作ったの?」
「そうですよ」
「本当に?」
「クドいですね。
そんなに疑うなら、早く元気になって、私が作る様子を見学して下さい」
私はベッドに半身を起こしたテオの膝に、一人分の料理が乗ったトレーを置くと、そこからスープとオムレツを小皿に一口分取り分けて、パクリと食べてみせた。
「うん。
毒も入って無いし、味も大丈夫です。
テオも召し上がって下さい」
ニコリと微笑んだ私を、テオはあんぐりと口を開けて見ていた。
「貴族令嬢が、料理して、毒見までするなんて・・・」
「私が作ったのですから、毒など絶対に入ってませんけど、目の前で食べて見せた方が安心かと思いまして。
さあ、冷めない内に、どうぞ」
「・・・頂きます」
エルザに生まれてから、料理を作るのは初めてだ。
テオがフォークを手に取って、オムレツを口に運ぶのを見ていると、俄かに緊張して来た。
「・・・美味しい」
「良かったです」
ホッとした私は、サイドテーブルで自分も食事をし始めた。
「誰かと一緒に食事をするのも久し振りだし、こんなに温かい料理を食べるのは初めてだ」
そうか、高貴な身分の方達は、普段温かい料理を食べる事なんて出来ないんだ。
毒見の回数を増やしたって言ってたしね。
せっかく王宮の素晴らしい料理人が作った料理でも、冷めてしまったら味気ない物なのかもしれないな。
「スープは熱いと思うので、気を付けて下さいね」
「うん・・・熱っっ!!」
「今、気を付けてって言いましたよね!?」
「ふふっ・・・」
なんだか可笑しくなって来て、二人でちょっと笑った。
この日テオは、私の作った料理を完食した。
事情を話すも、貴族令嬢の私が料理など出来る訳が無いと思っている大人達は、「危ないから!」と、必死で止めた。
だが、私があまりに熱心に説得する物だから、料理長の監督の元、取り敢えず作らせてみようと言う話になった。
記念すべき一食目は、プレーンオムレツと、ミネストローネ。
シンプル過ぎるけど、私のレパートリーは然程多く無いので、こんなもんでしょ。
高熱出てる時に、ステーキとポテト食わせるよりはマシだと思うの。
多分。
テオはかなり回復してきたとは言え、まだ少し熱っポイのだ。
なので、オムレツは生クリームの代わりに牛乳を使って、バターの代わりに少量のオリーブオイルを使う。
その方がサッパリして消化に良さそうだから。
ミネストローネは、微塵切りにした野菜をたっぷり入れて、少しでも栄養が摂れるようにした。
食べるスープって感じ。
問題は、この世界にはコンソメとかの便利な調味料が無いって事だ。
なので、ちょっとだけズルをして、料理人が作ったスープストックを少々拝借した。
このくらいは許して欲しい。
私はまだ身長が低く、調理台が使いにくいので、踏み台を用意してもらった。
なんか、色々ご迷惑を掛けて済みません・・・(汗)
料理長は私が包丁を手に取ると、オロオロと不安そうな様子を見せていたが、手際良く野菜の皮を剥いて微塵切りにすると、感心したようにホゥっと息を吐いた。
「お嬢様にこんな才能があったとは・・・。
貴族令嬢にしておくのは勿体無いくらいです」
「ふふっ。有難う」
そこまで褒められるほどの腕前では無いが、初めて包丁を持ったはずの子供がここまで出来たら、驚かれるのも当たり前かも。
前世では、料理は別に上手くなかったけど、包丁捌きだけは上手いと言われていた。
リンゴの皮を剥くのとか得意だったのだ。
料理長のほめ殺しにあいながら調理を進めて、なんとか良い感じに完成した。
褒められて伸びるタイプなのだ。
うん、オムレツも焦げずに美しく焼けている。
一緒に食べようと二人前を用意して、自らテオの部屋へと運ぶ。
「お待たせしました」
「・・・・・・コレ、本当に作ったの?」
「そうですよ」
「本当に?」
「クドいですね。
そんなに疑うなら、早く元気になって、私が作る様子を見学して下さい」
私はベッドに半身を起こしたテオの膝に、一人分の料理が乗ったトレーを置くと、そこからスープとオムレツを小皿に一口分取り分けて、パクリと食べてみせた。
「うん。
毒も入って無いし、味も大丈夫です。
テオも召し上がって下さい」
ニコリと微笑んだ私を、テオはあんぐりと口を開けて見ていた。
「貴族令嬢が、料理して、毒見までするなんて・・・」
「私が作ったのですから、毒など絶対に入ってませんけど、目の前で食べて見せた方が安心かと思いまして。
さあ、冷めない内に、どうぞ」
「・・・頂きます」
エルザに生まれてから、料理を作るのは初めてだ。
テオがフォークを手に取って、オムレツを口に運ぶのを見ていると、俄かに緊張して来た。
「・・・美味しい」
「良かったです」
ホッとした私は、サイドテーブルで自分も食事をし始めた。
「誰かと一緒に食事をするのも久し振りだし、こんなに温かい料理を食べるのは初めてだ」
そうか、高貴な身分の方達は、普段温かい料理を食べる事なんて出来ないんだ。
毒見の回数を増やしたって言ってたしね。
せっかく王宮の素晴らしい料理人が作った料理でも、冷めてしまったら味気ない物なのかもしれないな。
「スープは熱いと思うので、気を付けて下さいね」
「うん・・・熱っっ!!」
「今、気を付けてって言いましたよね!?」
「ふふっ・・・」
なんだか可笑しくなって来て、二人でちょっと笑った。
この日テオは、私の作った料理を完食した。
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