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24 義弟が夫になるらしい(最終話)

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───恋愛なんて、遠い世界にしか存在しない、私とは無関係の感情なんだと思おうとしていたの。


六歳の時に、クリストファー殿下との婚約が決まった。
初めの内は殿下も凄く優しくて、上手くやっていけると・・・激しい恋では無くても、穏やかな愛情と信頼を築いて行けると思っていた。

でも、一年も経たずに私達の関係は悪化してしまった。
少しづつ冷たい態度になっていく殿下に、けれど、私も、頑張って振り向いて欲しいとまでは思えなくて・・・。
気が付けば二人の間の溝は、取り返しがつかないくらいに深くなっていた。

それでも、私達は将来結婚をするしかない。
だから、間違っても、他の男性に心を寄せるような事があってはならない。

私は無意識に自分の世界の中から、『恋愛』を排除していた。




「愛しています。
結婚してください」

自分には一生向けられる事が無いと思っていた台詞を、レイモンドから告げられて、私は動揺した。

「貴方が私の事を、姉として愛してくれているのは嬉しいわ。
でも、いくら私が婚約破棄で傷物になったからって、貴方が犠牲になる事は無いのよ?
こんな私でも、婚約の打診をしてくれる方は居るのだし、心配しないで?」

「僕は貴女を、姉としてでは無く、女性として愛しています。
貴女だって、本当は気付いていたのではないですか?
姉弟だからとか、そんな風に誤魔化さないで、無理ならちゃんと振って下さい。
僕ではダメですか?
貴女は僕が嫌いですか?」

懇願するように、私に詰め寄るレイは苦しそうで、胸が痛んだ。

そうだ。私は気付いていた。
レイの私に対する距離感が、姉弟のそれでは無いと言う事を。
その視線に滲む甘さの意味を。
だけど、気付かない振りをして逃げた。
それは、長年染み付いた癖の様な物だった。

ずっと恋愛から目を背けていた私が、レイに同じ想いを返せるのかは分からない。
だけど、『嫌いですか?』と問われてしまえば、その答えはとてもシンプルで・・・・・・。

「・・・・・・私がレイを嫌いになる訳ないじゃない」

「それは良かった。
では、考えてみて貰えませんか。
弟では無い僕と、共に人生を歩む事を」

弟では無いレイと、人生を共に歩む・・・。
寄り添って、二人で生きて行く。
想像したらなんだか照れ臭くて、でも、不思議と嫌では無かった。
それは、自分の中の欠けていた部分が満たされるような、そんな感覚。

仕事に出かける彼に、いってらっしゃいのキスをしたりして。
レイに似た、可愛い子供を授かったりして。
レイとの幸せな結婚生活を思い浮かべた私の頬に、いつの間にかジワジワと熱が上がってくる。

「今の貴女の表情が答えだと思っても良いですか?」

期待が籠った瞳で見つめられ、私は小さく頷いた。





レイに手を握られて、両親に、彼のプロポーズを受けた事を報告しに行くと、満面の笑みで祝福された。
既に根回しは済んでいた様で、私達の婚約はあっという間に結ばれた。



あれから、レイは今まで以上に私にべったりで、口に大きな砂糖の塊を突っ込まれたみたいに激甘だ。


「姉上の好きなケーキを買って来たので、お茶にしましょう」

リビングのソファーで、当たり前のように私の隣にピッタリと寄り添って座るレイは、とても幸せそうだ。

「ところで、いつまで私の事を姉上って呼ぶつもりなの?」

「じゃあ・・・・・・キャサリン様にしますか?」

レイに避けられていた頃の事が、頭をよぎる。
その件に関しては、あんな態度を取った理由について説明され、丁寧な謝罪も受けたので、わだかまりは無いけれど。

「やめてよ。
その呼び方、ちょっとトラウマだわ」

「済みません。
じゃあ、キャシーと呼びましょう」

「・・・はい」

レイに愛称で呼ばれるのは初めてだ。
一気に親密度が増した気がして、少し照れる。

「キャシー、可愛い」

「・・・・・・」

フニャッと目尻を下げて笑ったレイには、子供の頃の面影が残っていて・・・・・・
そのレイに『可愛い』と言われるなんて、なんとも複雑な気持ちだ。

「大好きだよ、キャシー。
僕の可愛いキャシー」

頬に口付けをされ、耳元で囁かれると、ソワソワした落ち着かない気持ちになる。

「ちょ・・・、ちょっと、待って。
もっと、ゆっくり・・・」

「ゆっくり?」

「そう。
ずっと義姉弟だったのに、そんなに急激に恋人同士みたいな距離になられても、戸惑うから」

「恋人・・・」

熱に浮かされたように、ボンヤリと呟いた彼は、嬉しそうに目元を緩ませる。

私の話、聞いてる!?

「だから、もっと段階を踏んで・・・ね?」

「無理」

爽やかな笑顔でキッパリと断られてしまった。

「え?」

「嫌だ。
僕が、今迄何年キャシーに近付くのを我慢してたと思ってるの?
今度は、キャシーが譲歩する番だと思わない?」

「・・・・・・」

えぇーー?
そう言われてしまうと、拒否しにくいのだけれど、最近のレイは押しが強過ぎて、このままでは心臓が持たない。

「フフッ。
そんなに警戒しないで。
キャシーが本当に嫌がる事は、絶対にしないから」

「本当?」

「勿論。
でも、この程度の触れ合いは序の口じゃないかな?
結婚式まであまり時間が無いのだから、キャシーも早く慣れてね」

欲を含んだ瞳で微笑まれて、なんだかクラクラする。

「結婚したら、もう手加減してあげられないかもしれないから」

そう言ったレイは強烈な色気を放っていて、私の心臓が大きく跳ねた。


『本当に嫌がる事はしない』

レイはそう言ったけど、困った事に、レイには何をされてもそこまで嫌では無いのだ。
戸惑ったり、ドキドキしたり、羞恥に身悶えたりして、居た堪れない気持ちになるが、『本当に嫌だ』とは思えない。

だから、きっとこれからも、私はレイに振り回され続けるのだろう。

そんな幸せな日々を想像して、ちょっとだけワクワクしている事は、まだ彼には秘密にしておこう。



【終】

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みんなの感想(12件)

BLACK無糖
2024.08.30 BLACK無糖

ゲスクズ役者も因果応報をくらってると良いが。
似たような事をあちこちでやらかしてたのがバレて逮捕と犯罪奴隷堕ちで。

miniko
2024.08.30 miniko

コメントありがとうございます!

確かに、役者が一番の最低野郎かもしれないですね(^_^;)
何処かでざまぁを喰らってる事を祈りましょう。

解除
NOGAMI
2022.08.13 NOGAMI

とりあえず、完結おめでとうございます🎉お疲れ様でした。

レイの想いが伝わって良かったです!
甘々な夫婦になるんでしょうね〜。

一時期バレンタインのチョコを同居していた友人と毎年作ってました…。
友チョコと義理チョコの値段に換算すると作った方が安かったのでww
しかし、4キロの製菓用チョコを刻むのは大変でした(/TДT)/・・・・。
4年くらい頑張りましたが、1週間位チョコの匂いが取れず…晩御飯食べてもチョコの匂いしか感じないので、諦めてやっすいチョコを本当にお世話になった方だけに渡すコトにしました。
確かに興奮作用があり、バレンタインの時期は二人してハイテンションだったコトを覚えてます…。
何事も程々が一番です(ー'`ー;)

miniko
2022.08.13 miniko

コメント有難うございます(*´꒳`*)
最後までお読み頂けて、とても嬉しいです!

4キロのチョコレートは凄い量ですねΣ(゚д゚lll)
もうショコラティエみたい!
チョコレート大好きですが、そこまで匂いを嗅ぎ続けると、食べたくなくなりそうです💦
やっぱり興奮作用あるんですね。

解除
キノコ♪
2022.08.10 キノコ♪

レイは、こんなに姉上の為に頑張っているのだから、想いを遂げてあげたいですね。間違っても腹黒いデズモンドに負ける事のないようにしてあげたい💓

miniko
2022.08.10 miniko

コメント有難うございます✨
一途に義姉を想ってきたレイは幸せになれるのか?
完結まであと少し。
是非、最後まで見守ってあげて下さい!

解除

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