上 下
13 / 13

13 これから(最終話)

しおりを挟む
帰国した私達は、学院に復帰した。
休学期間が半年以内であれば、特別試験にパスすれば、今まで通りの学年で復学出来るらしい。
私もフェリクス兄様も、成績はかなり良い方なので、問題なく復学出来た。


この騒動で、ライナルト殿下がアルベルト殿下にしてきた仕打ちが陛下の耳に入り、ライナルト殿下は謹慎処分を受けたらしい。

今回の件ではライナルト殿下も、公爵令嬢で弟の婚約者の私には、簡単に手を出せるとは思っていなかったようだ。
ただ、少しアルベルト殿下を揺さぶる事で、怯えさせたり、私達の仲をギクシャクさせられればと言う、軽い嫌がらせ程度のつもりだったらしい。
こんなに大袈裟な事態になって、本人が一番驚いているだろう。
流石にもう同じ過ちは犯さないと信じたいが、アルベルト殿下は引き続きライナルト殿下の動向を探っていくとの事。



「殿下との仲も元通りになって、良かったじゃないか。
犬も喰わないってヤツだな。
まあ、俺は最初から、そんな事じゃないかと思ってたけど」

放課後の図書室で、フェリクス兄様が、呆れた様にそう言った。

「えぇっ?
だったら何故、教えてくれなかったのですか!?」

「確証はなかったし、余計な事を言ってもしも間違ってたら、リリがもっと傷付くかもしれないだろ。
しかも、リリはあの時かなり精神状態が限界みたいだったし、リリん家の親父さんは詳細聞いて殿下に怒り心頭だし、暫く距離を置いて様子を見た方が良さそうだなって。
それに俺も、殿下には少しばかり腹が立ってたから、ちょっとぐらい困れば良いと思った」

「まあ・・・そう、ですね」

「二人の王子の仲があまり良くないのは、リリだって知っていただろう?
だから、アルベルト殿下がライナルト殿下に、わざわざ本音を話す訳が無いんじゃないかって思ったんだ。
それに、どう見てもアルベルト殿下は、リリを溺愛してる様にしか見えな・・・」

「リリ!お待たせ!」

フェリクス兄様の話を、私を迎えに来たアルベルト殿下が遮る。

「さあ、帰ろう。僕のリリ」

「おーい、無視すんな」

「ああ、フェリクス殿、居たのか」

「殿下、俺の扱い雑すぎませんか?
そんなに邪険にしなくても、俺とリリの間には家族愛しかありませんよ。
俺には愛しいシルヴィーが居ますから」

「リリの近くに男がいるだけで嫌だ。
リリの視界に入るだけで嫌だ。
同じ空気を吸っているだけで嫌だ。
肉親でも嫌だ」

「心が狭い!」

なんだかこの二人、いつの間にか仲良くなってない?



因みに、ミランダ王女は、私達が休学している間に居なくなっていた。

刺繍のハンカチの件で、益々冷たい態度になったアルベルト殿下に焦った王女は、かなり際どいアプローチを繰り返したみたいで「婚約者がいる王子に強引に迫り、迷惑をかけた」として、強制的に帰国させたんだとか。
こちらの国の方が国力が強いのもあり、問題を起こした時点で、簡単に追い返せたらしい。
国に帰ってからも、かなり叱責されたとか。

王女がいなくなったので、私は当初の予定通り、アルベルト殿下と通学をし始めた。

あれから殿下は以前にも増して、私と過ごす時間を沢山作ってくれようとしているみたい。
お互いになんでも話し合える関係を構築しようと模索中だ。



「次のデートはどこに行こうか?
あ、そう言えば、今年もそろそろ、あの湖畔の青紫の野花が咲く季節だね」

「ええ。
満開になったら、また二人でピクニックに行きましょうか」

木漏れ日の中で、のんびり過ごそう。

あの時のように手を繋いで。
サンドイッチのボックスを持って。
マカロンも忘れずに。

野菜のサンドイッチは、私が殿下に食べさせてあげよう。


そして彼はきっとまた、青紫の美しい花冠を作って、私に愛を囁く。



すれ違った日々は苦しかったけれど、多分、無駄じゃなかった。

これからも、様々な問題が起こると思うが、二人で協力して乗り越えていかなければいけないだろう。
その練習が結婚前に出来た事は、きっと意味があったのだと思う。



それに、彼と二人で生きて行く平穏な日々が幸せなのだと、今迄よりも強く感じている。



【終】
しおりを挟む
感想 119

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(119件)

あましょく
2022.09.15 あましょく

婚約者の罵倒はたぶんワケありなんだろうなぁと思いつつ、どうかな?と思っていたら、女主人公でよくある主人公のモノを奪うきょうだいの問題パターンでしたか。
無事ハピエンだし、モラハラ兄の所業は父王に知られて良かった良かった。

モラハラ兄には年上でサドっ気たっぷりのお嬢様を当てがって一生可愛がられてほしいですね。
案外、この手のは立場逆転するとネコチャンになるらしいので。

miniko
2022.09.15 miniko

ご感想ありがとうございます!

従順なネコチャンになった兄もちょっと見てみたいですね(笑)

解除
兎子
2022.09.09 兎子

一気読みしました!
面白かったです!
心というのは1度離れてしまうと別の何か強いきっかけでも無いとまた惹きつけられないと思うので、離れる前に戻って良かったです。
お幸せに!😊

miniko
2022.09.09 miniko

ご感想ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡

面白かったと言って貰えて、とても嬉しいです!
やっぱり、完全に心が離れてしまうと、復縁は難しいですよね。
今回はギリギリセーフ💦
もうちょっと遅ければ、危なかったです・・・。

解除
ゆらぽって
2022.07.24 ゆらぽって

何度も読んでいますが、ちょっとした試練みたいな感じで読みやすいです。
ドロドロしたお話になりがちなのに、そうはしなかった作者さんの優しさが伝わってくる様です。

主人公の2人が可愛かったからか、ストレスなく読めました。
また何度も読み返すと思います。

素敵なお話をありがとうございました😊

miniko
2022.07.24 miniko

感想有難うございます!

読み返して下さってるなんて、嬉し過ぎます😊
書いてて良かった。
ゆらぽって様のコメントを励みに、今後も頑張って書いていこうと思います。

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

殿下が私を愛していないことは知っていますから。

木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。 しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。 夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。 危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。 「……いつも会いに来られなくてすまないな」 そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。 彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。 「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」 そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。 すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。 その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。