愛していると言ってくれ

天使

睫毛が涙でぬれた蒼の寝顔。
随分と楽そうにはなっていた。
「俺の天使。」
ぼそっと、黒木はいった。
「あらら。だめだこりゃ。」 
黒木は、弁護士の友人である瀬野に、電話をかけた。
「元気にしゆう？」
「ぼちぼちやで。どういたこんな時間に。」
蒼のことを説明すると、瀬野は、キッパリといった。
「お前が頑張らんでどーするん？あと、蒼くんが思い出したくないことは、思い出さすな、どあほう。レイプ犯が憎くて、訴えても傷は残る。その傷をどうするがが問題やろ。いい心療内科あるき、教えるわ。薬よりも、愛情やで。…お前なら大丈夫やき。」
ばんっと背中を押された気がした。
「俺なら大丈夫！！」
黒木は小さく言うと、朝食を作り始めた。
梅ちゃんが蒼をぺろぺろ舐める。
「黒木さん、」
「それ、梅ちゃん。」
蒼が真っ赤になっている。
「昨日は、」
口ごもる蒼を眺める。
「大丈夫。人間な、ベットの上でぐらい正直でいいんだよ。」
「黒木さん。」
「雅文、まさ、昨日はあんなに呼んでくれたのにな。」
「まさ、」
蒼がゆっくり破顔した。
まるで桜が咲くように。