愛していると言ってくれ

ロッソ

きらきらと店の照明が、蒼の髪を染める。
金髪の巻き毛に、ライトグリーンの瞳。
人はよく俺の容姿を褒める。
初体験は早かった。
そこで女という不思議な生き物を体感することとなった。
優しく微笑んだと思ったら牙を剥く。
「貴方自分が綺麗だから、自分しか愛せないんでしょ？」
散々機嫌をとったのに、この決まり文句。
淡く開いた桜色の唇で、すっとタバコを加える。
パチンと、ZIPPOをあけ火をつけた。
ZIPPOの扱いが荒いやつにろくな奴はいない。
細巻きのメンソールは甘い香りがするが、舌は苦い。
「あんたホントに黙ってると可愛い。」
ママがそういった。
ママと言ってもフツーのオッサンである。
彼はゲイだ。
なんどか、スポーツセックスもした。
ママといると楽だ。
中年太りの体で、じっくりねちっこいセックスをするくせに、キスはしてくれない。
俺は拗ねて何度もキスをせがんだ。
「ねぇママ、なんで俺にはキスしないの？」
「初めて奪った私も悪いんだけど、だって、赤ん坊みたいなんだもん。」
にっとママは悪戯っぽく笑った。
「赤ん坊ねぇ。」
自分にも自覚はある。
ママは好きだが、愛しているとかそういった感情はない。
ただ、甘やかして欲しい。
でろでろに優しく。
相手は誰でもよかった。
「今日、作家さんが取材に来るわよ。アンタいちおーナンバーワンなんだから、気張りなさいね！！」
ばんっと背中を叩かれて、俺は更にむくれて、生返事をした。